260 / 266
第3章 異世界で溺愛剣士の婚約者!?
85
しおりを挟む
どうして俺がこんなにも怒っているのか心底分からず戸惑うドゥーガルドのふざけた顔に拳を打ち込もうとしたが、エリンさんに寸前で止められた。
「ソウシ様、落ち着いてください!」
「落ち着いてられるかぁぁぁ! こちとら中出し大好きとか言いふらされてんだぞ! 一発殴らせろぉぉぉ!」
「……ソウシ、そんなに顔を赤くして……。大丈夫だ、何ら恥じることはない。むしろ情事のあの可愛さは誇るべきだ」
「なにキリッとした顔で見当違いなこと言ってんだぁぁぁ! というかこの顔の赤さは羞恥じゃなくて、紛うことなき怒りだから!」
「……ふふふ、怒った顔も可愛いな」
「ふざけてんのか、この野郎ぉぉぉぉ!!」
「ソウシ様! お気をたしかにっ」
その後もしばらく、俺の怒りの咆哮は止むことはなかった……――。
****
俺がぶち切れた騒動から十分後、俺たちはドゥーガルドのご両親が待つという部屋へ向かっていた。
「……ソウシ、まだ怒っているのか?」
顔をのぞき込んで聞いてくるドゥーガルドを、俺はギロリと睨み付けた。
「あんな不名誉な噂を流されてそう簡単に怒りが収まるわけがねぇだろっ」
むしろ隣を歩いていることが奇跡だと思って欲しいくらいだ。
俺の睨みにドゥーガルドは飼い主に散々叱られた犬のようにしょんぼりとした顔をしてうつむいた。
「……すまない、ソウシという可愛い恋人ができたことが嬉しくてつい舞い上がっていた。――そうだな、ベッドでのことは二人だけの秘密にしておくべきだった」
「反省点はそこじゃねぇ!」
こめかみがピキピキと引き攣る。
ズレた反省に再び怒りのスイッチが入りそうになったが、俺は何とか自分を抑えた。
だめだ、せっかくここまで我慢したんだ。ここで怒ったらさっきの交渉がパァになる……!
自分にそう言い聞かせ口の先まで出掛かった言葉をグッと飲み込む。
『さっきの交渉』というのは、あまりにも不名誉極まりないデマに怒り狂っていた俺をなだめるドゥーガルドと取り交わした約束のことだ。
「到着致しました」
先を進むエリンさんがひときわ大きな扉の前で足を止めて振り返った。
「こちらでドゥーガルド様の父君と母君がお待ちです」
この部屋にドゥーガルドのお父さんとお母さんがいるのか……。
部屋の中にいる人物がいかに高貴な人間であるかを示すような、重厚な雰囲気が漂う扉に、少し緊張する。
するとその緊張を察したように、ドゥーガルドが俺の肩に優しく手を置いてにこりと微笑みかけた。
「……大丈夫だ。父さんも母さんも婚約について大賛成で、ソウシが来るのをすごく楽しみにしている」
「お前、もしかしてわざとなのか? さっきから見当違いな大丈夫を連発してるのはわざとなのか?」
わざとでないとしたら、相手の気持ちを察する能力が恐ろしいくらい欠如している。
自他共に認めるコミュ障の俺が恐れるくらいだ。
「というか、さっきの約束、忘れてないだろうな?」
俺は肩に置かれたドゥーガルドの手を払いのけて、じろりと睨み付けた。
「ソウシ様、落ち着いてください!」
「落ち着いてられるかぁぁぁ! こちとら中出し大好きとか言いふらされてんだぞ! 一発殴らせろぉぉぉ!」
「……ソウシ、そんなに顔を赤くして……。大丈夫だ、何ら恥じることはない。むしろ情事のあの可愛さは誇るべきだ」
「なにキリッとした顔で見当違いなこと言ってんだぁぁぁ! というかこの顔の赤さは羞恥じゃなくて、紛うことなき怒りだから!」
「……ふふふ、怒った顔も可愛いな」
「ふざけてんのか、この野郎ぉぉぉぉ!!」
「ソウシ様! お気をたしかにっ」
その後もしばらく、俺の怒りの咆哮は止むことはなかった……――。
****
俺がぶち切れた騒動から十分後、俺たちはドゥーガルドのご両親が待つという部屋へ向かっていた。
「……ソウシ、まだ怒っているのか?」
顔をのぞき込んで聞いてくるドゥーガルドを、俺はギロリと睨み付けた。
「あんな不名誉な噂を流されてそう簡単に怒りが収まるわけがねぇだろっ」
むしろ隣を歩いていることが奇跡だと思って欲しいくらいだ。
俺の睨みにドゥーガルドは飼い主に散々叱られた犬のようにしょんぼりとした顔をしてうつむいた。
「……すまない、ソウシという可愛い恋人ができたことが嬉しくてつい舞い上がっていた。――そうだな、ベッドでのことは二人だけの秘密にしておくべきだった」
「反省点はそこじゃねぇ!」
こめかみがピキピキと引き攣る。
ズレた反省に再び怒りのスイッチが入りそうになったが、俺は何とか自分を抑えた。
だめだ、せっかくここまで我慢したんだ。ここで怒ったらさっきの交渉がパァになる……!
自分にそう言い聞かせ口の先まで出掛かった言葉をグッと飲み込む。
『さっきの交渉』というのは、あまりにも不名誉極まりないデマに怒り狂っていた俺をなだめるドゥーガルドと取り交わした約束のことだ。
「到着致しました」
先を進むエリンさんがひときわ大きな扉の前で足を止めて振り返った。
「こちらでドゥーガルド様の父君と母君がお待ちです」
この部屋にドゥーガルドのお父さんとお母さんがいるのか……。
部屋の中にいる人物がいかに高貴な人間であるかを示すような、重厚な雰囲気が漂う扉に、少し緊張する。
するとその緊張を察したように、ドゥーガルドが俺の肩に優しく手を置いてにこりと微笑みかけた。
「……大丈夫だ。父さんも母さんも婚約について大賛成で、ソウシが来るのをすごく楽しみにしている」
「お前、もしかしてわざとなのか? さっきから見当違いな大丈夫を連発してるのはわざとなのか?」
わざとでないとしたら、相手の気持ちを察する能力が恐ろしいくらい欠如している。
自他共に認めるコミュ障の俺が恐れるくらいだ。
「というか、さっきの約束、忘れてないだろうな?」
俺は肩に置かれたドゥーガルドの手を払いのけて、じろりと睨み付けた。
42
お気に入りに追加
2,826
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

美貌の騎士候補生は、愛する人を快楽漬けにして飼い慣らす〜僕から逃げないで愛させて〜
飛鷹
BL
騎士養成学校に在席しているパスティには秘密がある。
でも、それを誰かに言うつもりはなく、目的を達成したら静かに自国に戻るつもりだった。
しかし美貌の騎士候補生に捕まり、快楽漬けにされ、甘く喘がされてしまう。
秘密を抱えたまま、パスティは幸せになれるのか。
美貌の騎士候補生のカーディアスは何を考えてパスティに付きまとうのか……。
秘密を抱えた二人が幸せになるまでのお話。
悪役令息の七日間
リラックス@ピロー
BL
唐突に前世を思い出した俺、ユリシーズ=アディンソンは自分がスマホ配信アプリ"王宮の花〜神子は7色のバラに抱かれる〜"に登場する悪役だと気付く。しかし思い出すのが遅過ぎて、断罪イベントまで7日間しか残っていない。
気づいた時にはもう遅い、それでも足掻く悪役令息の話。【お知らせ:2024年1月18日書籍発売!】

言い逃げしたら5年後捕まった件について。
なるせ
BL
「ずっと、好きだよ。」
…長年ずっと一緒にいた幼馴染に告白をした。
もちろん、アイツがオレをそういう目で見てないのは百も承知だし、返事なんて求めてない。
ただ、これからはもう一緒にいないから…想いを伝えるぐらい、許してくれ。
そう思って告白したのが高校三年生の最後の登校日。……あれから5年経ったんだけど…
なんでアイツに馬乗りにされてるわけ!?
ーーーーー
美形×平凡っていいですよね、、、、
【BL】どうやら精霊術師として召喚されたようですが5分でクビになりましたので、最高級クラスの精霊獣と駆け落ちしようと思います。
riy
BL
風呂でまったりしている時に突如異世界へ召喚された千颯(ちはや)。
召喚されたのはいいが、本物の聖女が現れたからもう必要ないと5分も経たない内にお役御免になってしまう。
しかも元の世界へも帰れず、あろう事か風呂のお湯で流されてしまった魔法陣を描ける人物を探して直せと無茶振りされる始末。
別邸へと通されたのはいいが、いかにも出そうな趣のありすぎる館であまりの待遇の悪さに愕然とする。
そんな時に一匹のホワイトタイガーが現れ?
最高級クラスの精霊獣(人型にもなれる)×精霊術師(本人は凡人だと思ってる)
※コメディよりのラブコメ。時にシリアス。

兄たちが弟を可愛がりすぎです
クロユキ
BL
俺が風邪で寝ていた目が覚めたら異世界!?
メイド、王子って、俺も王子!?
おっと、俺の自己紹介忘れてた!俺の、名前は坂田春人高校二年、別世界にウィル王子の身体に入っていたんだ!兄王子に振り回されて、俺大丈夫か?!
涙脆く可愛い系に弱い春人の兄王子達に振り回され護衛騎士に迫って慌てていっもハラハラドキドキたまにはバカな事を言ったりとしている主人公春人の話を楽しんでくれたら嬉しいです。
1日の話しが長い物語です。
誤字脱字には気をつけてはいますが、余り気にしないよ~と言う方がいましたら嬉しいです。


王道学園の冷徹生徒会長、裏の顔がバレて総受けルート突入しちゃいました!え?逃げ場無しですか?
名無しのナナ氏
BL
王道学園に入学して1ヶ月でトップに君臨した冷徹生徒会長、有栖川 誠(ありすがわ まこと)。常に冷静で無表情、そして無言の誠を生徒達からは尊敬の眼差しで見られていた。
そんな彼のもう1つの姿は… どの企業にも属さないにも関わらず、VTuber界で人気を博した個人VTuber〈〈 アイリス 〉〉!? 本性は寂しがり屋の泣き虫。色々あって周りから誤解されまくってしまった結果アイリスとして素を出していた。そんなある日、生徒会の仕事を1人で黙々とやっている内に疲れてしまい__________
※
・非王道気味
・固定カプ予定は無い
・悲しい過去🐜のたまにシリアス
・話の流れが遅い
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる