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第3章 異世界で溺愛剣士の婚約者!?

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「丸く収まりかけていた流れをぶっ壊すな!」
「……だが、このままでは俺の欲情の収まりがつかない」
「知るか! そんなこと!」

 自分の性欲くらい自分でどうにかしろ!
 
「……だってあんなに可愛くソウシに好きだと言われたんだ。そう簡単に収まるわけがない。正直なところ、寝室まで理性が持つかどうかも怪しいくらいだ」
「え!? 今、そんなに激しく性欲と理性が拮抗している状況!?」

 その性欲を向けられている俺としては、ある意味デッドオアアライブな状況だ。
 
「……もうだめだ。一刻の猶予もない」

 ドゥーガルドが辛そうに顔を歪める。
 顔が整っているため、とてもその苦悶の表情が性欲と理性の葛藤によるものには見えないのがまた腹立たしい。
 
「……このままではここでソウシを襲いそうだ……っ」
「いやいやいや! なに言ってんだ! 実家といえどここ廊下だからな!」
「……大丈夫だ、みんな俺とソウシのことを祝福してくれている」
「全然大丈夫じゃねぇ!」

 よくそんなふわふわした根拠で大丈夫とか言えるな!?
 
「と、とにかく落ち着け! 理性、がんばれ! 負けるな! 俺は理性的なドゥーガルドの方が好きだぞ!」
「……だめだ。今の好きで完全に性欲が勝利した」
「理性弱すぎんだろぉぉぉ!」

 逆に今まで性欲と拮抗できていたのが不思議なくらいだ。
 
「ドゥーガルド様、落ち着いてください」

 完全に性欲の獣と化した主に、さすがのエリンさんも待ったをかける。

「ソウシ様を今すぐにでも抱きたい気持ちは分かりますが、今はご辛抱ください」
「……大丈夫だ、挿入剤については問題ない。匂いなど気にならないくらいに快感に溺れさせればいいだけだ」
「問題しかないですけど!?」

 というか、さっきからお前の大丈夫が微塵も大丈夫な要素を含んでいないんだけど!?

「いえ、問題は挿入剤だけではありません。――ソウシ様の表情です」
「……! エリンさん……っ!」

 エリンさんの言葉に俺は感激した。
 顔面蒼白な俺を庇ってくれているのだ。
 今まで主至上主義的な面が多々見られたが、やっぱり根は真面目でいい人なんだとエリンさんの評価を見直した。
 
 ごめん、エリンさん……! 
 さっきまで、ズレた真面目さでドゥーガルドとは違う意味で厄介だとか思ってしまって……!
 
「……どういう意味だ?」

 ドゥーガルドが訝しげに目を細める。

「言葉の通りでございます。もしお噂通り、ソウシ様の事後の表情が『劣情の底を霞ませるほどに扇情的』であるのであれば、その表情のまま晩餐会にお連れするのは危険です」
「…………え?」

 とんでもない言葉が聞こえて俺はしばし固まった。
 
 え? 今、なんかすごく不名誉なこと言われたような……。
 
「……確かに危険だな。情事のソウシの表情はあまりに劣情を煽り立てる。信用できる者たちばかりとはいえ、あの表情を前にしたら間違いを起こす者もいるかもし――」
「ちょっと待ったぁぁぁぁ! なに変な風に俺のこと触れ回ってんだよ! 『劣情の底を霞ませるほどに扇情的』って、どこの三流官能小説の引用だぁぁぁぁ!」

 胸ぐらを掴んでブンブンと荒く揺するが、ドゥーガルドは全く動じない。
 
「……すまない、確かにそんな陳腐な言い回しではソウシの魅力を百分の一も表せていないな」
「いや、言い方の問題でなく内容! デタラメにもほどがあるだろ!」
「……デタラメではない。本当のことだ。今だってあの時の顔が見たくて激しい衝動に駆られている」
「よし、ぶった切ろう。そんな危険な衝動を持ったブツは俺の明るい未来のためにも今すぐぶった切ろう」
「ソウシ様、落ち着いてくださいっ。ドゥーガルド様のものを切ってしまっては大好きな中出しをしてもらえませんよっ」

 エリンさんが慌てた様子で割って入り、俺への説得にかかる。とんでもない言葉でもって……。

 大好きな中出し――。
 
 その言葉に俺の中で何かがプツンと切れた。
 
「……ッ、ドゥーガルドぉぉぉぉぉ! テメェこの野郎ぉぉぉぉ! なにとんでもないデマを流してんだぁぁぁぁ!」
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