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第3章 異世界で溺愛剣士の婚約者!?

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「あ、いや、待て、絶対そんなことな――」
「……もちろん照れ隠しだということは分かってはいたが、実際に目に見えて証明されると嬉しいものだな」
「ちっ、違う! 絶対そんなことはない!」

 嬉しそうに頷きながら誤解を深めていくドゥーガルドに慌てて否定するが、呪いの影響を何も受けていないこの状況では説得力がない。
 そしてそのことに俺自身も困惑していた。

 いや、確かに呪いが解けて嬉しいしホッとしたけど、でもそれだと俺がドゥーガルドのことを好きってことになってしまう……!
 
 そんなことはあり得ない。太陽が西から昇るくらいにあり得ない話だ。
 なのに愛する者とのキスで解ける呪いが、ドゥーガルドとのキスで解けてしまった。
 俺は頭を抱えた。
 もしかすると最後の悪あがきで、ドゥーガルドを好きだと一心不乱に自己暗示したのが功を奏したのかもしれないが、何にせよ、ドゥーガルドの妄想を確固たるものにしてしまった事には違いない。
 それは俺にとって非常によろしくない展開だ。
 
「……さて」

 ドゥーガルドは仕切り直すように俺を抱え直した。
 そして腕の中の俺に、にこりと微笑みかける。
 
「……行こうか。二人っきりになれる場所へ」

 もう両思いだと信じて疑わないドゥーガルドの表情は自信に満ちあふれていた。
 こうなったら絶対に止まらない。
 今のこの状況は、ブレーキのないレーシングカーに障害がひとつもない直線道路を与えてしまったようなものだ。
 崖へと突き進むレーシングカーに括り付けられているような心地に、全身から血の気が引く。
 
「いやいやいや! 待て待て! と、とにかく落ち着け! あの、これは何というか、たぶんあの呪いに誤作動があってだな……」
「……ふふ、もう照れ隠しをしても無駄だ。全部分かっている」
「全然分かってねぇよ! こんな真っ青な顔で照れ隠しする奴いないから!」

 もちろん自分の顔は見えないが、それでも顔面蒼白になっていることは嫌でも分かる。

「……ソウシは顔を青くしても赤くしても可愛い。だが、今は顔を赤らめたソウシが見たい」
「なんでそうなる!? というかお前の希望は聞いてねぇ!」

 顎をクイッと掴んで無理矢理自分の方へ向けさせるな!

 少女漫画に出てくるイケメンのようないけ好かない動作に苛立ち倍増だ。
 
「……ここにいてはソウシがいつまでも素直になれない。だから早く二人きりになれるところに行こう」
「絶対にいやだ!」
「……なぜだ?」
「だってお前、絶対二人っきりになったら押し倒す気満々だろ!」
「……? 新婚の夫婦が二人きりになったら当然のことだろう」
「当然のことじゃねぇぇぇぇ! というかそのキョトンとした顔やめろ! すげぇ腹立つ!」

 スケベなことする気満々なくせによくそんな純粋無垢な瞳ができるな! 逆にすごいわ!

 何としても二人っきりになりたいドゥーガルドと、何としてもそれを避けたい俺。
 当然そんな二人が言葉を交わしても話は平行線のままだ。
 だがこのままでは、話が平行線だろうと体勢的に否応なく寝室に連れ込まれてしまいそうだ。
 
 完全に俺、不利じゃん!
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