256 / 266
第3章 異世界で溺愛剣士の婚約者!?
81
しおりを挟む
「あ、いや、待て、絶対そんなことな――」
「……もちろん照れ隠しだということは分かってはいたが、実際に目に見えて証明されると嬉しいものだな」
「ちっ、違う! 絶対そんなことはない!」
嬉しそうに頷きながら誤解を深めていくドゥーガルドに慌てて否定するが、呪いの影響を何も受けていないこの状況では説得力がない。
そしてそのことに俺自身も困惑していた。
いや、確かに呪いが解けて嬉しいしホッとしたけど、でもそれだと俺がドゥーガルドのことを好きってことになってしまう……!
そんなことはあり得ない。太陽が西から昇るくらいにあり得ない話だ。
なのに愛する者とのキスで解ける呪いが、ドゥーガルドとのキスで解けてしまった。
俺は頭を抱えた。
もしかすると最後の悪あがきで、ドゥーガルドを好きだと一心不乱に自己暗示したのが功を奏したのかもしれないが、何にせよ、ドゥーガルドの妄想を確固たるものにしてしまった事には違いない。
それは俺にとって非常によろしくない展開だ。
「……さて」
ドゥーガルドは仕切り直すように俺を抱え直した。
そして腕の中の俺に、にこりと微笑みかける。
「……行こうか。二人っきりになれる場所へ」
もう両思いだと信じて疑わないドゥーガルドの表情は自信に満ちあふれていた。
こうなったら絶対に止まらない。
今のこの状況は、ブレーキのないレーシングカーに障害がひとつもない直線道路を与えてしまったようなものだ。
崖へと突き進むレーシングカーに括り付けられているような心地に、全身から血の気が引く。
「いやいやいや! 待て待て! と、とにかく落ち着け! あの、これは何というか、たぶんあの呪いに誤作動があってだな……」
「……ふふ、もう照れ隠しをしても無駄だ。全部分かっている」
「全然分かってねぇよ! こんな真っ青な顔で照れ隠しする奴いないから!」
もちろん自分の顔は見えないが、それでも顔面蒼白になっていることは嫌でも分かる。
「……ソウシは顔を青くしても赤くしても可愛い。だが、今は顔を赤らめたソウシが見たい」
「なんでそうなる!? というかお前の希望は聞いてねぇ!」
顎をクイッと掴んで無理矢理自分の方へ向けさせるな!
少女漫画に出てくるイケメンのようないけ好かない動作に苛立ち倍増だ。
「……ここにいてはソウシがいつまでも素直になれない。だから早く二人きりになれるところに行こう」
「絶対にいやだ!」
「……なぜだ?」
「だってお前、絶対二人っきりになったら押し倒す気満々だろ!」
「……? 新婚の夫婦が二人きりになったら当然のことだろう」
「当然のことじゃねぇぇぇぇ! というかそのキョトンとした顔やめろ! すげぇ腹立つ!」
スケベなことする気満々なくせによくそんな純粋無垢な瞳ができるな! 逆にすごいわ!
何としても二人っきりになりたいドゥーガルドと、何としてもそれを避けたい俺。
当然そんな二人が言葉を交わしても話は平行線のままだ。
だがこのままでは、話が平行線だろうと体勢的に否応なく寝室に連れ込まれてしまいそうだ。
完全に俺、不利じゃん!
「……もちろん照れ隠しだということは分かってはいたが、実際に目に見えて証明されると嬉しいものだな」
「ちっ、違う! 絶対そんなことはない!」
嬉しそうに頷きながら誤解を深めていくドゥーガルドに慌てて否定するが、呪いの影響を何も受けていないこの状況では説得力がない。
そしてそのことに俺自身も困惑していた。
いや、確かに呪いが解けて嬉しいしホッとしたけど、でもそれだと俺がドゥーガルドのことを好きってことになってしまう……!
そんなことはあり得ない。太陽が西から昇るくらいにあり得ない話だ。
なのに愛する者とのキスで解ける呪いが、ドゥーガルドとのキスで解けてしまった。
俺は頭を抱えた。
もしかすると最後の悪あがきで、ドゥーガルドを好きだと一心不乱に自己暗示したのが功を奏したのかもしれないが、何にせよ、ドゥーガルドの妄想を確固たるものにしてしまった事には違いない。
それは俺にとって非常によろしくない展開だ。
「……さて」
ドゥーガルドは仕切り直すように俺を抱え直した。
そして腕の中の俺に、にこりと微笑みかける。
「……行こうか。二人っきりになれる場所へ」
もう両思いだと信じて疑わないドゥーガルドの表情は自信に満ちあふれていた。
こうなったら絶対に止まらない。
今のこの状況は、ブレーキのないレーシングカーに障害がひとつもない直線道路を与えてしまったようなものだ。
崖へと突き進むレーシングカーに括り付けられているような心地に、全身から血の気が引く。
「いやいやいや! 待て待て! と、とにかく落ち着け! あの、これは何というか、たぶんあの呪いに誤作動があってだな……」
「……ふふ、もう照れ隠しをしても無駄だ。全部分かっている」
「全然分かってねぇよ! こんな真っ青な顔で照れ隠しする奴いないから!」
もちろん自分の顔は見えないが、それでも顔面蒼白になっていることは嫌でも分かる。
「……ソウシは顔を青くしても赤くしても可愛い。だが、今は顔を赤らめたソウシが見たい」
「なんでそうなる!? というかお前の希望は聞いてねぇ!」
顎をクイッと掴んで無理矢理自分の方へ向けさせるな!
少女漫画に出てくるイケメンのようないけ好かない動作に苛立ち倍増だ。
「……ここにいてはソウシがいつまでも素直になれない。だから早く二人きりになれるところに行こう」
「絶対にいやだ!」
「……なぜだ?」
「だってお前、絶対二人っきりになったら押し倒す気満々だろ!」
「……? 新婚の夫婦が二人きりになったら当然のことだろう」
「当然のことじゃねぇぇぇぇ! というかそのキョトンとした顔やめろ! すげぇ腹立つ!」
スケベなことする気満々なくせによくそんな純粋無垢な瞳ができるな! 逆にすごいわ!
何としても二人っきりになりたいドゥーガルドと、何としてもそれを避けたい俺。
当然そんな二人が言葉を交わしても話は平行線のままだ。
だがこのままでは、話が平行線だろうと体勢的に否応なく寝室に連れ込まれてしまいそうだ。
完全に俺、不利じゃん!
51
お気に入りに追加
2,824
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…
しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。
高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。
数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。
そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…
転生したけど赤ちゃんの頃から運命に囲われてて鬱陶しい
翡翠飾
BL
普通に高校生として学校に通っていたはずだが、気が付いたら雨の中道端で動けなくなっていた。寒くて死にかけていたら、通りかかった馬車から降りてきた12歳くらいの美少年に拾われ、何やら大きい屋敷に連れていかれる。
それから温かいご飯食べさせてもらったり、お風呂に入れてもらったり、柔らかいベッドで寝かせてもらったり、撫でてもらったり、ボールとかもらったり、それを投げてもらったり───ん?
「え、俺何か、犬になってない?」
豹獣人の番大好き大公子(12)×ポメラニアン獣人転生者(1)の話。
※どんどん年齢は上がっていきます。
※設定が多く感じたのでオメガバースを無くしました。

言い逃げしたら5年後捕まった件について。
なるせ
BL
「ずっと、好きだよ。」
…長年ずっと一緒にいた幼馴染に告白をした。
もちろん、アイツがオレをそういう目で見てないのは百も承知だし、返事なんて求めてない。
ただ、これからはもう一緒にいないから…想いを伝えるぐらい、許してくれ。
そう思って告白したのが高校三年生の最後の登校日。……あれから5年経ったんだけど…
なんでアイツに馬乗りにされてるわけ!?
ーーーーー
美形×平凡っていいですよね、、、、

変なαとΩに両脇を包囲されたβが、色々奪われながら頑張る話
ベポ田
BL
ヒトの性別が、雄と雌、さらにα、β、Ωの三種類のバース性に分類される世界。総人口の僅か5%しか存在しないαとΩは、フェロモンの分泌器官・受容体の発達度合いで、さらにI型、II型、Ⅲ型に分類される。
βである主人公・九条博人の通う私立帝高校高校は、αやΩ、さらにI型、II型が多く所属する伝統ある名門校だった。
そんな魔境のなかで、変なI型αとII型Ωに理不尽に執着されては、色々な物を奪われ、手に入れながら頑張る不憫なβの話。
イベントにて頒布予定の合同誌サンプルです。
3部構成のうち、1部まで公開予定です。
イラストは、漫画・イラスト担当のいぽいぽさんが描いたものです。
最新はTwitterに掲載しています。


性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました
まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。
性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。
(ムーンライトノベルにも掲載しています)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる