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第3章 異世界で溺愛剣士の婚約者!?
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「え? いや、見苦しいって……」
「だってそうでしょう……? 自分の命が危なくなったから本当のことを明かして助かろうとするなんて……、見苦しさの極みではありませんか……」
蔑みをたっぷり込めた冷たい目で俺を見て、リリアはさらに続けた。
「残念ながらこの呪いの解除は愛する者とのキス以外にありませんわ……。――お兄様をたぶらかし、我がベレスフォード家を愚弄した罪、その身で償ってもらいましょう……」
唇の端を不気味に吊り上げて言ったリリアの言葉は、俺にとっては死の宣告だった。
全身から一気に血の気が引く。
「い、いやっ、ちょっと待て! だから俺は元々婚約者じゃないし、それにドゥーガルドをたぶらかしてなんかない!」
「……そうだ、ソウシはたぶらかしてなんかいない。そのままの自然体で俺の心を魅了したのだ」
「お前はちょっと黙ってろ!」
俺を擁護しているようで全く擁護になっていない、無自覚に火に油を注ぐドゥーガルドをキッと睨んで黙らせる。
その様子を見てクツクツ……と喉を震わせてリリアが笑う。
「ふふふ……、随分とお兄様を懐柔されているようですわね……。でもあと数分でそれもおしまい……。呪いによって朽ちるなたを見てお兄様も目を覚ますことでしょう……」
「ぎゃー! 待て待て待て! 俺は無実だって! 無実どころか被害者だから!」
「罪人は決まって処刑台で自分の無実を訴えるものですわ……」
どんなに無実を主張しても、全く聞く耳を持たず。
さすがはドゥーガルドの妹というべきか、人の話を全然聞かないし、なにより強い思い込みによる言動がひどい。
どんなに言葉を尽くしてもその妄想めいた思い込みを否定できないのは、彼女の兄と過ごしてきた日々で嫌というほど実感している。
もうそれ本当に嫌というほど……。
ど、どうしよう……!
このままじゃ本当に呪いで死んでしまう……!
絶望的な状況に俺は頭を抱えた。
くそ……っ! なんで俺がこんな目にあわなきゃいけねぇんだよ……!
俺はドゥーガルドの妄想に巻き込まれた純然たる被害者なのだ。
なのにこんな仕打ちを受けるなんてあんまりだ。
こんな理不尽な死があってたまるか……っ!
だが、理不尽だろうと何だろうと、時間は残酷にも刻々と過ぎていく。
心臓の手前まで呪いの気配がじわじわと迫り来ているような感じに、ぶるりと体が震える。
「ど、どうしよう……、愛する者とキスとかそんなの……」
「……大丈夫だ、ソウシ」
力強く言って俺の肩をぽんと優しく叩いたのは、言うまでもない。
俺は事の元凶、諸悪の根源ともいえる人物を睨み付けるようにして振り返った。
「だってそうでしょう……? 自分の命が危なくなったから本当のことを明かして助かろうとするなんて……、見苦しさの極みではありませんか……」
蔑みをたっぷり込めた冷たい目で俺を見て、リリアはさらに続けた。
「残念ながらこの呪いの解除は愛する者とのキス以外にありませんわ……。――お兄様をたぶらかし、我がベレスフォード家を愚弄した罪、その身で償ってもらいましょう……」
唇の端を不気味に吊り上げて言ったリリアの言葉は、俺にとっては死の宣告だった。
全身から一気に血の気が引く。
「い、いやっ、ちょっと待て! だから俺は元々婚約者じゃないし、それにドゥーガルドをたぶらかしてなんかない!」
「……そうだ、ソウシはたぶらかしてなんかいない。そのままの自然体で俺の心を魅了したのだ」
「お前はちょっと黙ってろ!」
俺を擁護しているようで全く擁護になっていない、無自覚に火に油を注ぐドゥーガルドをキッと睨んで黙らせる。
その様子を見てクツクツ……と喉を震わせてリリアが笑う。
「ふふふ……、随分とお兄様を懐柔されているようですわね……。でもあと数分でそれもおしまい……。呪いによって朽ちるなたを見てお兄様も目を覚ますことでしょう……」
「ぎゃー! 待て待て待て! 俺は無実だって! 無実どころか被害者だから!」
「罪人は決まって処刑台で自分の無実を訴えるものですわ……」
どんなに無実を主張しても、全く聞く耳を持たず。
さすがはドゥーガルドの妹というべきか、人の話を全然聞かないし、なにより強い思い込みによる言動がひどい。
どんなに言葉を尽くしてもその妄想めいた思い込みを否定できないのは、彼女の兄と過ごしてきた日々で嫌というほど実感している。
もうそれ本当に嫌というほど……。
ど、どうしよう……!
このままじゃ本当に呪いで死んでしまう……!
絶望的な状況に俺は頭を抱えた。
くそ……っ! なんで俺がこんな目にあわなきゃいけねぇんだよ……!
俺はドゥーガルドの妄想に巻き込まれた純然たる被害者なのだ。
なのにこんな仕打ちを受けるなんてあんまりだ。
こんな理不尽な死があってたまるか……っ!
だが、理不尽だろうと何だろうと、時間は残酷にも刻々と過ぎていく。
心臓の手前まで呪いの気配がじわじわと迫り来ているような感じに、ぶるりと体が震える。
「ど、どうしよう……、愛する者とキスとかそんなの……」
「……大丈夫だ、ソウシ」
力強く言って俺の肩をぽんと優しく叩いたのは、言うまでもない。
俺は事の元凶、諸悪の根源ともいえる人物を睨み付けるようにして振り返った。
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