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第3章 異世界で溺愛剣士の婚約者!?
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「どうやったら解けるんだ!?」
「ふふふ……、簡単なことです……。十分以内に本当に心から愛する者と口づけをすればすぐに解けます……」
「……え?」
愛する者と、口づけ……?
「えぇぇぇぇ!?」
俺は思わず絶叫した。
愛する者と口づけとか……、彼女いない歴と年齢がイコールの奴には無理難題ですけど!?
しかも時間制限まであるときたら絶望的だ。
「あらあら、どうしたのです……? そんなに慌てなくとも愛する婚約者が後ろにいるじゃありませんか……?」
「あ……」
挑発的な笑みを含んで言うリリアの言葉に、俺は反射的に後ろを振り向いた。
だが、後ろには自称婚約者しかおらず、この呪いを解ける人間はいない。
慌てふためく俺に、リリアはフッ……と勝ち誇った冷たい笑みを漏らした。
「どうやらすぐにキスをしないところを見ると、あなたの愛は偽物のようですわね……」
いや、偽物どころか、存在すらしませんが!?
思わずツッコミそうになった言葉を何とか寸前で飲み込む。
ここで声を荒らげて否定すれば、俺に対する印象はますます悪くなるだろう。
冷静に、冷静に……。
自分に言い聞かせながら俺はゆっくり口を開いた。
「あ、いや、そうじゃなくって。実は……」
「ふふふ……、言い訳は結構ですわ……。私には分かっています……、あなたが我がベレスフォード家の財産を狙う卑しい人間だとい言うことを……」
「はぁ!?」
鋭い眼光と共に寄こされたとんでもない誤解に俺は目を剥いた。
「いやいや! 俺、全然そんなんじゃないんで!」
こればかりは声を荒げて否定してしまった。
だってあまりにも理不尽すぎる。
ドゥーガルドの勝手な妄想で婚約者とされている上に、財産目当てなどという事実無根の不名誉な誤解をされては叫びたくもなる。
だが、リリアの瞳に宿った蔑みと疑心は確固たるもので少しも揺らがない。
「ふふふ……、お兄様の目はごまかせても私の目はごまかせませんよ……」
「いや、誤魔化されてるから!」
俺じゃなくて、愛しのお兄様に!
とりあえず、まずは遺産目当て云々ではなく、根本的な部分の誤解から解かなくては……。
「えっと、リリアちゃんは大きな誤解をしている! まず、俺はドゥーガルドの婚約者じゃない!」
本当はドゥーガルドの妄想を信じ切ってなおかつ心から祝福している善良なエリンさんたちに申し訳ないので、真実は公言せずにこっそりこの館を去ろうと思っていたのだが、この状況ではそう悠長なことも言ってられない。
正直に暴露すると、リリアは訝しげに片眼を細めた。
「婚約者ではない……?」
「そう! 俺とこいつは婚約どころか付き合ってもいない! 婚約云々っていうのは全部こいつの妄想なんだよ」
必死に事実を言い立てる俺の言葉を吟味するように、リリアは無表情でこちらを見つめる。
「つまりあなたはお兄様の婚約者ではないと……?」
「そうそう!」
「だからこの呪いを解いて欲しいわけですね……?」
「そうそう!」
俺はブンブンと勢いよく縦に首を振った。
誤解をすぐに理解してくれた上にこちらが言わずとも呪いの件を察してくれたリリアは、兄とは違って話の分かる人間のようだ。
よかった……! ドゥーガルドみたいに思い込みが強いタイプじゃなくて……!
俺が心の底からホッとしていると、リリアがにこり……と微笑みかけてきた。
「ふふふ……、見苦しいこと……」
「え?」
思いもよらず悪意に満ちた言葉が返ってきて、俺は目を丸くした。
「ふふふ……、簡単なことです……。十分以内に本当に心から愛する者と口づけをすればすぐに解けます……」
「……え?」
愛する者と、口づけ……?
「えぇぇぇぇ!?」
俺は思わず絶叫した。
愛する者と口づけとか……、彼女いない歴と年齢がイコールの奴には無理難題ですけど!?
しかも時間制限まであるときたら絶望的だ。
「あらあら、どうしたのです……? そんなに慌てなくとも愛する婚約者が後ろにいるじゃありませんか……?」
「あ……」
挑発的な笑みを含んで言うリリアの言葉に、俺は反射的に後ろを振り向いた。
だが、後ろには自称婚約者しかおらず、この呪いを解ける人間はいない。
慌てふためく俺に、リリアはフッ……と勝ち誇った冷たい笑みを漏らした。
「どうやらすぐにキスをしないところを見ると、あなたの愛は偽物のようですわね……」
いや、偽物どころか、存在すらしませんが!?
思わずツッコミそうになった言葉を何とか寸前で飲み込む。
ここで声を荒らげて否定すれば、俺に対する印象はますます悪くなるだろう。
冷静に、冷静に……。
自分に言い聞かせながら俺はゆっくり口を開いた。
「あ、いや、そうじゃなくって。実は……」
「ふふふ……、言い訳は結構ですわ……。私には分かっています……、あなたが我がベレスフォード家の財産を狙う卑しい人間だとい言うことを……」
「はぁ!?」
鋭い眼光と共に寄こされたとんでもない誤解に俺は目を剥いた。
「いやいや! 俺、全然そんなんじゃないんで!」
こればかりは声を荒げて否定してしまった。
だってあまりにも理不尽すぎる。
ドゥーガルドの勝手な妄想で婚約者とされている上に、財産目当てなどという事実無根の不名誉な誤解をされては叫びたくもなる。
だが、リリアの瞳に宿った蔑みと疑心は確固たるもので少しも揺らがない。
「ふふふ……、お兄様の目はごまかせても私の目はごまかせませんよ……」
「いや、誤魔化されてるから!」
俺じゃなくて、愛しのお兄様に!
とりあえず、まずは遺産目当て云々ではなく、根本的な部分の誤解から解かなくては……。
「えっと、リリアちゃんは大きな誤解をしている! まず、俺はドゥーガルドの婚約者じゃない!」
本当はドゥーガルドの妄想を信じ切ってなおかつ心から祝福している善良なエリンさんたちに申し訳ないので、真実は公言せずにこっそりこの館を去ろうと思っていたのだが、この状況ではそう悠長なことも言ってられない。
正直に暴露すると、リリアは訝しげに片眼を細めた。
「婚約者ではない……?」
「そう! 俺とこいつは婚約どころか付き合ってもいない! 婚約云々っていうのは全部こいつの妄想なんだよ」
必死に事実を言い立てる俺の言葉を吟味するように、リリアは無表情でこちらを見つめる。
「つまりあなたはお兄様の婚約者ではないと……?」
「そうそう!」
「だからこの呪いを解いて欲しいわけですね……?」
「そうそう!」
俺はブンブンと勢いよく縦に首を振った。
誤解をすぐに理解してくれた上にこちらが言わずとも呪いの件を察してくれたリリアは、兄とは違って話の分かる人間のようだ。
よかった……! ドゥーガルドみたいに思い込みが強いタイプじゃなくて……!
俺が心の底からホッとしていると、リリアがにこり……と微笑みかけてきた。
「ふふふ……、見苦しいこと……」
「え?」
思いもよらず悪意に満ちた言葉が返ってきて、俺は目を丸くした。
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