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第3章 異世界で溺愛剣士の婚約者!?
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「ちょっ、ドゥーガルドっ、苦しい……ッ!」
ギブアップを宣言するプロレス選手のような必死さでドゥーガルドの背中をバンバンと叩くと、ようやくドゥーガルドは体を離してくれた。
「……すまない。ずっと会っていなかったからつい力が入ってしまった」
「まだ別れて一日も経ってないと思うけど!?」
あれは十年以上ぶりの再会じゃないと許されないレベルの抱擁だ。
「ドゥーガルド様があんなにも喜んでいらっしゃるなんて……!」
一方、傍らに立つエリンさんたちは、口元に手を当て、感極まった様子で俺たちを見ていた。
た、頼むから、その目はやめてくれ……!
ドゥーガルドの妄言や奇行にツッコミを入れにくい……!
「……やはり、この本に書いていたのは本当のことだな」
「この本?」
俺が眉を顰めて聞き返すと、ドゥーガルドは「ああ、この本だ」と言って上着の内ポケットから一冊の本を取り出した。
それは表紙の文字が読めないほど古びたもので、禍々しい雰囲気すら纏っていた。
俺はその本を見てハッとした。
ま、まさか、その本は魔導書で、ここまでの展開はすべて魔法によるものだったとか……!?
知らず知らずのうちに魔法を掛けられていたのかとぞっとしていると、ドゥーガルドはパラリとページをめくった。
思わず俺は身構えたが、ドゥーガルドはそんなこと気にせず紙面に視線を落としたまま口を開いた。
「……この二百三十八ページ目に書いている。『愛しい者と会えない時間は、確かに私たちの心に容赦なく襲い掛かってくる。しかし同時に、この会えない時間は恋人たちの愛を育み、確固たるものにする』」
「…………へ?」
てっきり怪しげな呪文でも唱えてくるんじゃないかと構えていた俺は、突然の意味不明な朗読に唖然とした。
「え? 今の、何?」
「……百人の女を愛し愛されたと言われる男が書いた恋愛指南書だ」
「紛らわしい!」
なんだよ、その無駄に禍々しい魔道書っぽい雰囲気は!
というか、この世界にもそんな本あるんだな……。
「……父が昔よく読んでいたものらしく、古いが内容は素晴らしいものだ」
「まさかのお父さんの元愛読書!?」
どういうお父様だよ!?
「……あ、もしかして百人の女を愛した男というところが引っ掛かっているのか。大丈夫だ。俺はソウシ一筋だ」
「全然そんなところは引っ掛かってない!」
なに得意げな笑みで的外れなことを言ってんだ!
柔らかい魚の小骨の方がまだ引っ掛かるってくらい、その点に関しては一切引っ掛からなかった。
というか、ヤキモチを妬いた恋人を愛しそうになだめるその顔やめろ!
「……ソウシに会えない時間は心が引きちぎられそうだったが、そのおかげでソウシへの愛がさらに育ったことを実感した」
「いや、もうそれ以上育てるな! 今すぐ成長を止めろ!」
いっそ捨てて次の恋の肥やしにしてくれ!
ぎゅっと大事そうにその本を奪い取って、ビリビリに破りたい衝動に駆られた。
「お噂通り、照れ屋なお方ですな」
「ええ、そうなのです。私も馬車の中でそう感じられる面を何度も見てきました」
「照れとかそんなんじゃなくて、純粋な拒絶です!」
微笑ましそうに俺たちの方を見守りながら、誤解を深めていくエリンさんたちに俺は思わず声を上げた。
だが、それさえも照れ隠しだと解釈されて温かい眼差しを向けられてしまう。
う……っ、優しい人たちによる孤立無援状態がまたきつい……!
ギブアップを宣言するプロレス選手のような必死さでドゥーガルドの背中をバンバンと叩くと、ようやくドゥーガルドは体を離してくれた。
「……すまない。ずっと会っていなかったからつい力が入ってしまった」
「まだ別れて一日も経ってないと思うけど!?」
あれは十年以上ぶりの再会じゃないと許されないレベルの抱擁だ。
「ドゥーガルド様があんなにも喜んでいらっしゃるなんて……!」
一方、傍らに立つエリンさんたちは、口元に手を当て、感極まった様子で俺たちを見ていた。
た、頼むから、その目はやめてくれ……!
ドゥーガルドの妄言や奇行にツッコミを入れにくい……!
「……やはり、この本に書いていたのは本当のことだな」
「この本?」
俺が眉を顰めて聞き返すと、ドゥーガルドは「ああ、この本だ」と言って上着の内ポケットから一冊の本を取り出した。
それは表紙の文字が読めないほど古びたもので、禍々しい雰囲気すら纏っていた。
俺はその本を見てハッとした。
ま、まさか、その本は魔導書で、ここまでの展開はすべて魔法によるものだったとか……!?
知らず知らずのうちに魔法を掛けられていたのかとぞっとしていると、ドゥーガルドはパラリとページをめくった。
思わず俺は身構えたが、ドゥーガルドはそんなこと気にせず紙面に視線を落としたまま口を開いた。
「……この二百三十八ページ目に書いている。『愛しい者と会えない時間は、確かに私たちの心に容赦なく襲い掛かってくる。しかし同時に、この会えない時間は恋人たちの愛を育み、確固たるものにする』」
「…………へ?」
てっきり怪しげな呪文でも唱えてくるんじゃないかと構えていた俺は、突然の意味不明な朗読に唖然とした。
「え? 今の、何?」
「……百人の女を愛し愛されたと言われる男が書いた恋愛指南書だ」
「紛らわしい!」
なんだよ、その無駄に禍々しい魔道書っぽい雰囲気は!
というか、この世界にもそんな本あるんだな……。
「……父が昔よく読んでいたものらしく、古いが内容は素晴らしいものだ」
「まさかのお父さんの元愛読書!?」
どういうお父様だよ!?
「……あ、もしかして百人の女を愛した男というところが引っ掛かっているのか。大丈夫だ。俺はソウシ一筋だ」
「全然そんなところは引っ掛かってない!」
なに得意げな笑みで的外れなことを言ってんだ!
柔らかい魚の小骨の方がまだ引っ掛かるってくらい、その点に関しては一切引っ掛からなかった。
というか、ヤキモチを妬いた恋人を愛しそうになだめるその顔やめろ!
「……ソウシに会えない時間は心が引きちぎられそうだったが、そのおかげでソウシへの愛がさらに育ったことを実感した」
「いや、もうそれ以上育てるな! 今すぐ成長を止めろ!」
いっそ捨てて次の恋の肥やしにしてくれ!
ぎゅっと大事そうにその本を奪い取って、ビリビリに破りたい衝動に駆られた。
「お噂通り、照れ屋なお方ですな」
「ええ、そうなのです。私も馬車の中でそう感じられる面を何度も見てきました」
「照れとかそんなんじゃなくて、純粋な拒絶です!」
微笑ましそうに俺たちの方を見守りながら、誤解を深めていくエリンさんたちに俺は思わず声を上げた。
だが、それさえも照れ隠しだと解釈されて温かい眼差しを向けられてしまう。
う……っ、優しい人たちによる孤立無援状態がまたきつい……!
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