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第3章 異世界で溺愛剣士の婚約者!?

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 答えになっているようでなっていない、また新たなる疑心を呼ぶその返答に俺は眉根をさらに寄せた。
 
「我が主って……、というか、変な薬を使っているあたり全然安全じゃないと思いますけど!」

 確かに傷一つ負わされていないが、それでも薬で眠らせて拉致っていうのは安全の範疇には絶対入らない。
 ずいぶん手荒なご招待をされることで、と嫌みを言ってやろうとした時、美女が深く頭を下げた。
 
「誠に申し訳ございません。仰るとおりでございます。いくら任務とは言えソウシ様を不快な気持ちにさせたこと、深くお詫びいたします」

 思いもよらず本気の謝罪をされてしまい、俺の方が慌ててしまった。
 
「あ、いや、まぁでも、あなたも仕事だったことですし……」

 かわいそうになってフォローするが、彼女は固く首を横に振った。

「いえ、しかしソウシ様を不愉快な気持ちにさせたことは確かです。ですので、よかったらこれを……」

 そう言って自分の腰から剣を取り外し、俺に差し出した。
 
 これはもしかして自分の武器を渡すことで敵意がないことを示しているのだろうか……?
 
 俺はとりあえずそれを受け取った。
 すると彼女は居住まいを正して俺に向き直った。
 
「どうぞソウシ様の気が済むまでそれで存分に私をお殴りください」
「へ!?」

 とんでもない美女の申し出に俺は目を白黒させた。
 
「いやいやいや! できませんよ! そんなこと!」
「遠慮はいりません。それでソウシ様の気分が晴れるなら安いものです」
「いやっ、晴れないから! むしろ胸が辛くなる!」

 美女を甚振るのが性癖な奴もいるだろうが、俺にそんな趣味はない。
 どっちかというと、美人なお姉さんには優しくリードされながら甘々セックスの方が……と途中まで考えて俺は頭をブンブンと振った。
 
 いやいや! 何考えてんだ俺は!
 
「と、とにかく、そんなことできません! これはお返ししますっ」

 俺は押しつけるようにして彼女に剣を返した。
 すると彼女はしばらく黙って剣を見つめた後に「……分かりました」と呟いた。

「考えてみれば当然のことですね。私の罰のためにソウシ様のお手を煩わせるなど、配慮に欠けた申し出でした。申し訳ございません」

 深く頭を下げる。
 彼女の謝罪は微妙にズレているものの、とりあえずとち狂った自罰的行為を思いとどまってくれたようでホッと胸をなで下ろす。

 とりあえず俺の気持ちが分かってもらえたようでよかった……。
 
 しかしその言葉にホッとした束の間、次に彼女はまたとんでもないことを言い出した。
 
「では、頬、腕、腹、脚などお好きな部位を言ってください」
「え?」

 好きな部位?
 
 唐突に意味不明な質問を寄越されて困惑しつつ、反射的にチラリと胸を見てしまい慌てて首を横に振った。
 
「いやいやっ、好きな部位ってどういうことですか」
「そこを私が自ら殴ります」
「全然分かってなかった!」

 むしろ悪化してる!
 
 しかも恐れもない覚悟を決めた真顔なのがたちが悪い。
 
「なんで自分を痛めつける方向にいくんですか!」
「我が主の婚約者に不快な思いをさせたのです。当然のことです」
「当然のことって……ん? いや、ちょっと待って!」
「どうされましたか? 殴る場所が決まりましたか」
「そうじゃなくて! い、今、我が主の婚約者とか言ったけどまさかそれって俺のこと……?」
「はい、もちろんでございます」

 嘘や冗談の類いを微塵も感じさせない真顔で答える彼女に、嫌な予感がした。
 いや、予感どころか俺の中ではほぼ確信に変わっていた。
 身に覚えのない婚約者。そんな奴は俺の知る中で一人しかいない……。
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