246 / 266
第3章 異世界で溺愛剣士の婚約者!?
71
しおりを挟む
答えになっているようでなっていない、また新たなる疑心を呼ぶその返答に俺は眉根をさらに寄せた。
「我が主って……、というか、変な薬を使っているあたり全然安全じゃないと思いますけど!」
確かに傷一つ負わされていないが、それでも薬で眠らせて拉致っていうのは安全の範疇には絶対入らない。
ずいぶん手荒なご招待をされることで、と嫌みを言ってやろうとした時、美女が深く頭を下げた。
「誠に申し訳ございません。仰るとおりでございます。いくら任務とは言えソウシ様を不快な気持ちにさせたこと、深くお詫びいたします」
思いもよらず本気の謝罪をされてしまい、俺の方が慌ててしまった。
「あ、いや、まぁでも、あなたも仕事だったことですし……」
かわいそうになってフォローするが、彼女は固く首を横に振った。
「いえ、しかしソウシ様を不愉快な気持ちにさせたことは確かです。ですので、よかったらこれを……」
そう言って自分の腰から剣を取り外し、俺に差し出した。
これはもしかして自分の武器を渡すことで敵意がないことを示しているのだろうか……?
俺はとりあえずそれを受け取った。
すると彼女は居住まいを正して俺に向き直った。
「どうぞソウシ様の気が済むまでそれで存分に私をお殴りください」
「へ!?」
とんでもない美女の申し出に俺は目を白黒させた。
「いやいやいや! できませんよ! そんなこと!」
「遠慮はいりません。それでソウシ様の気分が晴れるなら安いものです」
「いやっ、晴れないから! むしろ胸が辛くなる!」
美女を甚振るのが性癖な奴もいるだろうが、俺にそんな趣味はない。
どっちかというと、美人なお姉さんには優しくリードされながら甘々セックスの方が……と途中まで考えて俺は頭をブンブンと振った。
いやいや! 何考えてんだ俺は!
「と、とにかく、そんなことできません! これはお返ししますっ」
俺は押しつけるようにして彼女に剣を返した。
すると彼女はしばらく黙って剣を見つめた後に「……分かりました」と呟いた。
「考えてみれば当然のことですね。私の罰のためにソウシ様のお手を煩わせるなど、配慮に欠けた申し出でした。申し訳ございません」
深く頭を下げる。
彼女の謝罪は微妙にズレているものの、とりあえずとち狂った自罰的行為を思いとどまってくれたようでホッと胸をなで下ろす。
とりあえず俺の気持ちが分かってもらえたようでよかった……。
しかしその言葉にホッとした束の間、次に彼女はまたとんでもないことを言い出した。
「では、頬、腕、腹、脚などお好きな部位を言ってください」
「え?」
好きな部位?
唐突に意味不明な質問を寄越されて困惑しつつ、反射的にチラリと胸を見てしまい慌てて首を横に振った。
「いやいやっ、好きな部位ってどういうことですか」
「そこを私が自ら殴ります」
「全然分かってなかった!」
むしろ悪化してる!
しかも恐れもない覚悟を決めた真顔なのがたちが悪い。
「なんで自分を痛めつける方向にいくんですか!」
「我が主の婚約者に不快な思いをさせたのです。当然のことです」
「当然のことって……ん? いや、ちょっと待って!」
「どうされましたか? 殴る場所が決まりましたか」
「そうじゃなくて! い、今、我が主の婚約者とか言ったけどまさかそれって俺のこと……?」
「はい、もちろんでございます」
嘘や冗談の類いを微塵も感じさせない真顔で答える彼女に、嫌な予感がした。
いや、予感どころか俺の中ではほぼ確信に変わっていた。
身に覚えのない婚約者。そんな奴は俺の知る中で一人しかいない……。
「我が主って……、というか、変な薬を使っているあたり全然安全じゃないと思いますけど!」
確かに傷一つ負わされていないが、それでも薬で眠らせて拉致っていうのは安全の範疇には絶対入らない。
ずいぶん手荒なご招待をされることで、と嫌みを言ってやろうとした時、美女が深く頭を下げた。
「誠に申し訳ございません。仰るとおりでございます。いくら任務とは言えソウシ様を不快な気持ちにさせたこと、深くお詫びいたします」
思いもよらず本気の謝罪をされてしまい、俺の方が慌ててしまった。
「あ、いや、まぁでも、あなたも仕事だったことですし……」
かわいそうになってフォローするが、彼女は固く首を横に振った。
「いえ、しかしソウシ様を不愉快な気持ちにさせたことは確かです。ですので、よかったらこれを……」
そう言って自分の腰から剣を取り外し、俺に差し出した。
これはもしかして自分の武器を渡すことで敵意がないことを示しているのだろうか……?
俺はとりあえずそれを受け取った。
すると彼女は居住まいを正して俺に向き直った。
「どうぞソウシ様の気が済むまでそれで存分に私をお殴りください」
「へ!?」
とんでもない美女の申し出に俺は目を白黒させた。
「いやいやいや! できませんよ! そんなこと!」
「遠慮はいりません。それでソウシ様の気分が晴れるなら安いものです」
「いやっ、晴れないから! むしろ胸が辛くなる!」
美女を甚振るのが性癖な奴もいるだろうが、俺にそんな趣味はない。
どっちかというと、美人なお姉さんには優しくリードされながら甘々セックスの方が……と途中まで考えて俺は頭をブンブンと振った。
いやいや! 何考えてんだ俺は!
「と、とにかく、そんなことできません! これはお返ししますっ」
俺は押しつけるようにして彼女に剣を返した。
すると彼女はしばらく黙って剣を見つめた後に「……分かりました」と呟いた。
「考えてみれば当然のことですね。私の罰のためにソウシ様のお手を煩わせるなど、配慮に欠けた申し出でした。申し訳ございません」
深く頭を下げる。
彼女の謝罪は微妙にズレているものの、とりあえずとち狂った自罰的行為を思いとどまってくれたようでホッと胸をなで下ろす。
とりあえず俺の気持ちが分かってもらえたようでよかった……。
しかしその言葉にホッとした束の間、次に彼女はまたとんでもないことを言い出した。
「では、頬、腕、腹、脚などお好きな部位を言ってください」
「え?」
好きな部位?
唐突に意味不明な質問を寄越されて困惑しつつ、反射的にチラリと胸を見てしまい慌てて首を横に振った。
「いやいやっ、好きな部位ってどういうことですか」
「そこを私が自ら殴ります」
「全然分かってなかった!」
むしろ悪化してる!
しかも恐れもない覚悟を決めた真顔なのがたちが悪い。
「なんで自分を痛めつける方向にいくんですか!」
「我が主の婚約者に不快な思いをさせたのです。当然のことです」
「当然のことって……ん? いや、ちょっと待って!」
「どうされましたか? 殴る場所が決まりましたか」
「そうじゃなくて! い、今、我が主の婚約者とか言ったけどまさかそれって俺のこと……?」
「はい、もちろんでございます」
嘘や冗談の類いを微塵も感じさせない真顔で答える彼女に、嫌な予感がした。
いや、予感どころか俺の中ではほぼ確信に変わっていた。
身に覚えのない婚約者。そんな奴は俺の知る中で一人しかいない……。
51
お気に入りに追加
2,815
あなたにおすすめの小説
身体検査
RIKUTO
BL
次世代優生保護法。この世界の日本は、最適な遺伝子を残し、日本民族の優秀さを維持するとの目的で、
選ばれた青少年たちの体を徹底的に検査する。厳正な検査だというが、異常なほどに性器と排泄器の検査をするのである。それに選ばれたとある少年の全記録。
性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました
まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。
性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。
(ムーンライトノベルにも掲載しています)
普通の男の子がヤンデレや変態に愛されるだけの短編集、はじめました。
山田ハメ太郎
BL
タイトル通りです。
お話ごとに章分けしており、ひとつの章が大体1万文字以下のショート詰め合わせです。
サクッと読めますので、お好きなお話からどうぞ。
王道学園の冷徹生徒会長、裏の顔がバレて総受けルート突入しちゃいました!え?逃げ場無しですか?
名無しのナナ氏
BL
王道学園に入学して1ヶ月でトップに君臨した冷徹生徒会長、有栖川 誠(ありすがわ まこと)。常に冷静で無表情、そして無言の誠を生徒達からは尊敬の眼差しで見られていた。
そんな彼のもう1つの姿は… どの企業にも属さないにも関わらず、VTuber界で人気を博した個人VTuber〈〈 アイリス 〉〉!? 本性は寂しがり屋の泣き虫。色々あって周りから誤解されまくってしまった結果アイリスとして素を出していた。そんなある日、生徒会の仕事を1人で黙々とやっている内に疲れてしまい__________
※
・非王道気味
・固定カプ予定は無い
・悲しい過去🐜
・不定期
35歳からの楽しいホストクラブ
綺沙きさき(きさきさき)
BL
『35歳、職業ホスト。指名はまだ、ありません――』
35歳で会社を辞めさせられた青葉幸助は、学生時代の後輩の紹介でホストクラブで働くことになったが……――。
慣れないホスト業界や若者たちに戸惑いつつも、35歳のおじさんが新米ホストとして奮闘する物語。
・売れっ子ホスト(22)×リストラされた元リーマン(35)
・のんびり平凡総受け
・攻めは俺様ホストやエリート親友、変人コック、オタク王子、溺愛兄など
※本編では性描写はありません。
(総受けのため、番外編のパラレル設定で性描写ありの小話をのせる予定です)
変なαとΩに両脇を包囲されたβが、色々奪われながら頑張る話
ベポ田
BL
ヒトの性別が、雄と雌、さらにα、β、Ωの三種類のバース性に分類される世界。総人口の僅か5%しか存在しないαとΩは、フェロモンの分泌器官・受容体の発達度合いで、さらにI型、II型、Ⅲ型に分類される。
βである主人公・九条博人の通う私立帝高校高校は、αやΩ、さらにI型、II型が多く所属する伝統ある名門校だった。
そんな魔境のなかで、変なI型αとII型Ωに理不尽に執着されては、色々な物を奪われ、手に入れながら頑張る不憫なβの話。
イベントにて頒布予定の合同誌サンプルです。
3部構成のうち、1部まで公開予定です。
イラストは、漫画・イラスト担当のいぽいぽさんが描いたものです。
最新はTwitterに掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる