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第3章 異世界で溺愛剣士の婚約者!?
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俺が振り向くより早く、押し倒されそうなくらいの勢いでその声の主に抱きしめられた。
「……ッ。無事でよかった……っ」
まるで戦場で生き別れた友との再会かのようにおおげさに言ってドゥーガルドはさらに腕に力を込めた。
「ちょっ、ちょっと! く、苦しいっ」
「……ふふ、見ない間にずいぶん可愛い姿になって驚いた。純白の花嫁かと思ったぞ」
「今そういう寒い台詞いいから! ケツを撫でるな! というかマジで苦しい! クロが潰れる!」
俺とドゥーガルドの間に挟まれて押し潰されているクロがさすがにかわいそうで抗議の声を上げる。
「……ああ、すまない。いたのか。ソウシしか見えなかった」
「絶対見えるだろ! どんだけ視野が狭くなってんだよ! とりあえず離れろ!」
そう言うと、ドゥーガルドは渋々といった感じではあったが、俺を腕の中から解放した。
少しの間とはいえ生死にも関わる押し潰され方をされたクロはカンカンだった。
「き、貴様! 私を殺す気か!」
「……確かにいつか殺す気ではあるが、今のは単なる事故だ。すまなかった」
「すまなかったですむか!」
「……安心しろ、その姿ではあまりに罪悪感が残る。次の満月の時、本来の姿に戻った際には勝負を決める」
「ふははは、世迷い言を抜かすな。その前に貴様など私が噛み殺してやる」
グルル……ッ、と鋭い牙を見せて威嚇するクロと、冷たい無表情でそれを見下ろすドゥーガルド。
なんでこいつら、似たもの同士なのにこんなに仲が悪いんだ……。
同族嫌悪というやつだろうか。いずれにせよ、頭痛の種は増える一方だ。
俺はハァ、と大きく溜め息を吐いた。
「お前ら、いい加減に――」
「ソウシ」
無駄で面倒な争いが始まる前に二人を止めようとした時、くいくい、と服の裾をエグバードに引かれ言葉を飲み込んだ。
し、しまった……! ついいつもの調子に戻って地声で話してしまった!
今までの裏声もはっきりいって女のものとは思えなかったが、この地声は完全にアウトだ。
その証拠に、怪訝そうにエグバードの眉間に皺が寄っている。
「あ、いや、これは、なんというか、その……」
慌てて弁解しようとするが意味のない言葉が出てくるばかりだ。
しかしエグバードの眉間の皺は俺の声のせいではなかった。
「あの男はなんだ? ……少しソウシに馴れ馴れしくはないか」
「……はい?」
エグバードからの思いも寄らない言葉に目をパチパチと瞬かせる。
恐らくドゥーガルドのことを言っているのだろうが、なぜか不機嫌になっているエグバードに俺は戸惑った。
「え、えっと、馴れ馴れしいとは……?」
「だって、そうであろう。まるで恋人かのような抱擁をして……、ソウシが嫌がっているというのに馴れ馴れしいではないか」
そう言ってエグバードはむくれたまま、俺の腕にぎゅっと抱きついてきた。
実際の年齢を知っている俺からすれば、拗ねた子どもにしか見えないのだが、実年齢を知らない上に俺へ偏執的恋愛感情を抱くドゥーガルドにはそうは見えなかったようだ。
「……お前こそ馴れ馴れしい、今すぐソウシから離れろ」
ス……ッ、と剣を抜いてその切っ先をエグバードに向けた。
これには俺も慌てた。
「……ッ。無事でよかった……っ」
まるで戦場で生き別れた友との再会かのようにおおげさに言ってドゥーガルドはさらに腕に力を込めた。
「ちょっ、ちょっと! く、苦しいっ」
「……ふふ、見ない間にずいぶん可愛い姿になって驚いた。純白の花嫁かと思ったぞ」
「今そういう寒い台詞いいから! ケツを撫でるな! というかマジで苦しい! クロが潰れる!」
俺とドゥーガルドの間に挟まれて押し潰されているクロがさすがにかわいそうで抗議の声を上げる。
「……ああ、すまない。いたのか。ソウシしか見えなかった」
「絶対見えるだろ! どんだけ視野が狭くなってんだよ! とりあえず離れろ!」
そう言うと、ドゥーガルドは渋々といった感じではあったが、俺を腕の中から解放した。
少しの間とはいえ生死にも関わる押し潰され方をされたクロはカンカンだった。
「き、貴様! 私を殺す気か!」
「……確かにいつか殺す気ではあるが、今のは単なる事故だ。すまなかった」
「すまなかったですむか!」
「……安心しろ、その姿ではあまりに罪悪感が残る。次の満月の時、本来の姿に戻った際には勝負を決める」
「ふははは、世迷い言を抜かすな。その前に貴様など私が噛み殺してやる」
グルル……ッ、と鋭い牙を見せて威嚇するクロと、冷たい無表情でそれを見下ろすドゥーガルド。
なんでこいつら、似たもの同士なのにこんなに仲が悪いんだ……。
同族嫌悪というやつだろうか。いずれにせよ、頭痛の種は増える一方だ。
俺はハァ、と大きく溜め息を吐いた。
「お前ら、いい加減に――」
「ソウシ」
無駄で面倒な争いが始まる前に二人を止めようとした時、くいくい、と服の裾をエグバードに引かれ言葉を飲み込んだ。
し、しまった……! ついいつもの調子に戻って地声で話してしまった!
今までの裏声もはっきりいって女のものとは思えなかったが、この地声は完全にアウトだ。
その証拠に、怪訝そうにエグバードの眉間に皺が寄っている。
「あ、いや、これは、なんというか、その……」
慌てて弁解しようとするが意味のない言葉が出てくるばかりだ。
しかしエグバードの眉間の皺は俺の声のせいではなかった。
「あの男はなんだ? ……少しソウシに馴れ馴れしくはないか」
「……はい?」
エグバードからの思いも寄らない言葉に目をパチパチと瞬かせる。
恐らくドゥーガルドのことを言っているのだろうが、なぜか不機嫌になっているエグバードに俺は戸惑った。
「え、えっと、馴れ馴れしいとは……?」
「だって、そうであろう。まるで恋人かのような抱擁をして……、ソウシが嫌がっているというのに馴れ馴れしいではないか」
そう言ってエグバードはむくれたまま、俺の腕にぎゅっと抱きついてきた。
実際の年齢を知っている俺からすれば、拗ねた子どもにしか見えないのだが、実年齢を知らない上に俺へ偏執的恋愛感情を抱くドゥーガルドにはそうは見えなかったようだ。
「……お前こそ馴れ馴れしい、今すぐソウシから離れろ」
ス……ッ、と剣を抜いてその切っ先をエグバードに向けた。
これには俺も慌てた。
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