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第3章 異世界で溺愛剣士の婚約者!?

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『エグバードの腕の中は私の定位置よ! この城で働くならそのことは肝に銘じておきなさい』
「は、はい、承知しましたっ」
『分かればいいわ。以後気をつけるように』

 俺が従順な返事をして気が晴れたのか、いくらかこちらにむけるダイナの視線から鋭さが引いた。
 
「ふはは、ダイナは相変わらずヤキモチ焼きだな。でもどうして降りてくれる気になってくれたんだ?」
『それは……』

 エグバードの質問にダイナがちらりと俺の方を見た。
 
「それは?」
『……あの子の鳴き声が私の生き別れた弟によく似ていたからよ』

 今までのツンケンしたした態度が嘘のようにしおらしくダイナが呟いた。
 これには飼い主のエグバードも眉を上げた。
 
「ほぉ、ダイナに弟がいたとは初耳だ」
『小さいときに数ヶ月生活を一緒にしただけだから。でもあの子は私と全く似てなくて、いくら梳かしてもボサボサの黒い毛並みに、可愛げのない鋭い目……、もらい手がついたか今でも時々心配になるわ』

 ふぅ、と憂いを帯びた溜め息を吐く。
 
『鳴き声も惨めなほど不細工でね、とても愛玩動物のそれではなかったわ。……そう、ちょうどあの子がさっき発した鳴き声と同じような声だったわ』

 そう言うと、ダイナは哀れみのこもった柔らかな眼差しを俺の方に向けた。
 
『あの不細工な鳴き声を聞いていると胸が締め付けられて……、だから降りることにしたの』
「そうか……、そんな過去があったのか。それは胸が痛くなるな」

 しんみりと言いながらエグバードがダイナの背をそっと慰めるように撫でる。
 
 ……うん、確かに生き別れの弟の思い出は胸が苦しくなるのは分かる。
 でも、俺も胸が痛いから! 恥を忍んでやった猫の鳴き真似が、惨めだとか不細工だとか言われてすごく傷ついたんですけど!
 
 悪気がないのがまたたちが悪い。
 
「そうだ! いいことを思いついたぞ!」

 突然、エグバードが声を上げた。
 その自分の閃きが絶対に正しく素晴らしいものだと信じて疑わないキラキラした表情に、なぜか俺は嫌な予感がした。
 そしてその予感は見事的中した。
 
「ソウシをダイナの世話係に任命しよう!」
「えぇっ!?」

 突拍子のない提案に俺は目を瞠った。
 
「ふふ、我ながらいいアイディアだ。それなら私のアトリエにも頻繁にこれるし一石二鳥だ」
 
 うんうん、と満足そうに頷くエグバード。彼の中では世話係任命はほぼ確定しているようだ。
 
 こ、これはやばい……!
 
 俺は慌てて口を挟んだ。
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