228 / 266
第3章 異世界で溺愛剣士の婚約者!?
53
しおりを挟む
「ほら、猫は涙の匂いに敏感っていうじゃないですか。私の国では猫を探す時は飼い主の涙を皿に入れて家の前に置いとくんです」
もちろん俺の作り話だ。
だが、今は嘘か本当かは問題じゃない。プライドの高いエグバードが安心して泣ける理由になれるならそれでいい。
「だからエグバード様はあえて涙を流してるんですよね?」
俺の言葉にしばらく目を瞠っていたエグバードだが、しばらくすると鼻をすすってフンと胸を張った。
「そ、その通りだ。よくその知識を知っていたな。さすがは王に選ばれし白銀の翼だ」
「ははは~……、お褒めにあずかり光栄です~……」
「だが、女の前で泣くなんて紳士失格だ」
「あ、じゃあ、しばらくの間、ここから離れて庭園の中を探してきま――」
この緊張状態から少しの時間でも抜け出すチャンスだと立ち上がろうとした俺の腕を、エグバードがガシッと掴んだ。
「え、えっと、エグバード様?」
意図が分からず、中腰のまま掴まれた腕とエグバードの顔を交互に見る。
エグバードは俺の目をじっと見つめた。
「……だめだ。行くな」
「え?」
「だから、行くなと言っておる。ソウシは今、私の護衛だろう。だから離れてはだめだ」
「そ、そうは言われましても……」
断固とした声と表情で引き留められ、俺は戸惑った。
正直なところ、俺に護衛能力はゼロなので近くにいてもたいして役に立たないと思うのだが……。
というか、泣き顔を見られたくないって言ったのはお前の方だろ……!
全くもって身勝手な言い分だが、でも同じ男として女の前で泣き顔をさらしたくないという気持ちはよく分かる。
仕方ねぇな……。
俺は小さく溜め息を吐いた。
「分かりました。では目をつむっておきますね」
「いや、その必要はない。こうすればよい」
そう言うと、掴んだ俺の腕をそのまま自分の方にグイッと引き寄せた。
「うわっ!」
急に腕を引かれたせいでバランスを崩し胸に倒れ込んできた俺を、エグバードはぎゅっと抱き留めた。
「ちょ、な、なんのつもりですか!」
「目隠しだ。こうしていれば私の顔は見えないだろう」
「こんなことしなくても、目をつむりますけど……」
「それだと目を薄く開ける可能性があるだろう」
「いや、そんなことしませんよ……」
美少女ならいざ知らず、誰が好き好んで男の泣き顔なんてみるものか。
どうにかしてこの体勢から抜け出そうとするが、体格の差が物を言いビクともしない。
そんな俺にエグバードが溜め息を吐く。
「いいから、しばらくこうさせておけ。……たまには私だって甘えたいのだ。言わせるな」
少し拗ねたように言って、さらにぎゅっと腕に力を込められる。
……これはもう何を言っても無駄だな。
変に拒んで機嫌が悪くなっても面倒だ。
俺は腕の中で小さく溜め息を吐いて、仕方なくエグバードの抱き枕に甘んじた。
もちろん俺の作り話だ。
だが、今は嘘か本当かは問題じゃない。プライドの高いエグバードが安心して泣ける理由になれるならそれでいい。
「だからエグバード様はあえて涙を流してるんですよね?」
俺の言葉にしばらく目を瞠っていたエグバードだが、しばらくすると鼻をすすってフンと胸を張った。
「そ、その通りだ。よくその知識を知っていたな。さすがは王に選ばれし白銀の翼だ」
「ははは~……、お褒めにあずかり光栄です~……」
「だが、女の前で泣くなんて紳士失格だ」
「あ、じゃあ、しばらくの間、ここから離れて庭園の中を探してきま――」
この緊張状態から少しの時間でも抜け出すチャンスだと立ち上がろうとした俺の腕を、エグバードがガシッと掴んだ。
「え、えっと、エグバード様?」
意図が分からず、中腰のまま掴まれた腕とエグバードの顔を交互に見る。
エグバードは俺の目をじっと見つめた。
「……だめだ。行くな」
「え?」
「だから、行くなと言っておる。ソウシは今、私の護衛だろう。だから離れてはだめだ」
「そ、そうは言われましても……」
断固とした声と表情で引き留められ、俺は戸惑った。
正直なところ、俺に護衛能力はゼロなので近くにいてもたいして役に立たないと思うのだが……。
というか、泣き顔を見られたくないって言ったのはお前の方だろ……!
全くもって身勝手な言い分だが、でも同じ男として女の前で泣き顔をさらしたくないという気持ちはよく分かる。
仕方ねぇな……。
俺は小さく溜め息を吐いた。
「分かりました。では目をつむっておきますね」
「いや、その必要はない。こうすればよい」
そう言うと、掴んだ俺の腕をそのまま自分の方にグイッと引き寄せた。
「うわっ!」
急に腕を引かれたせいでバランスを崩し胸に倒れ込んできた俺を、エグバードはぎゅっと抱き留めた。
「ちょ、な、なんのつもりですか!」
「目隠しだ。こうしていれば私の顔は見えないだろう」
「こんなことしなくても、目をつむりますけど……」
「それだと目を薄く開ける可能性があるだろう」
「いや、そんなことしませんよ……」
美少女ならいざ知らず、誰が好き好んで男の泣き顔なんてみるものか。
どうにかしてこの体勢から抜け出そうとするが、体格の差が物を言いビクともしない。
そんな俺にエグバードが溜め息を吐く。
「いいから、しばらくこうさせておけ。……たまには私だって甘えたいのだ。言わせるな」
少し拗ねたように言って、さらにぎゅっと腕に力を込められる。
……これはもう何を言っても無駄だな。
変に拒んで機嫌が悪くなっても面倒だ。
俺は腕の中で小さく溜め息を吐いて、仕方なくエグバードの抱き枕に甘んじた。
51
お気に入りに追加
2,796
あなたにおすすめの小説
僕が玩具になった理由
Me-ya
BL
🈲R指定🈯
「俺のペットにしてやるよ」
眞司は僕を見下ろしながらそう言った。
🈲R指定🔞
※この作品はフィクションです。
実在の人物、団体等とは一切関係ありません。
※この小説は他の場所で書いていましたが、携帯が壊れてスマホに替えた時、小説を書いていた場所が分からなくなってしまいました😨
ので、ここで新しく書き直します…。
(他の場所でも、1カ所書いていますが…)
親友だと思ってた完璧幼馴染に執着されて監禁される平凡男子俺
toki
BL
エリート執着美形×平凡リーマン(幼馴染)
※監禁、無理矢理の要素があります。また、軽度ですが性的描写があります。
pixivでも同タイトルで投稿しています。
https://www.pixiv.net/users/3179376
もしよろしければ感想などいただけましたら大変励みになります✿
感想(匿名)➡ https://odaibako.net/u/toki_doki_
Twitter➡ https://twitter.com/toki_doki109
素敵な表紙お借りしました!
https://www.pixiv.net/artworks/98346398
3人の弟に逆らえない
ポメ
BL
優秀な3つ子に調教される兄の話です。
主人公:高校2年生の瑠璃
長男の嵐は活発な性格で運動神経抜群のワイルド男子。
次男の健二は大人しい性格で勉学が得意の清楚系王子。
三男の翔斗は無口だが機械に強く、研究オタクっぽい。黒髪で少し地味だがメガネを取ると意外とかっこいい?
3人とも高身長でルックスが良いと学校ではモテまくっている。
しかし、同時に超がつくブラコンとも言われているとか?
そんな3つ子に溺愛される瑠璃の話。
調教・お仕置き・近親相姦が苦手な方はご注意くださいm(_ _)m
ヤンデレ化していた幼稚園ぶりの友人に食べられました
ミルク珈琲
BL
幼稚園の頃ずっと後ろを着いてきて、泣き虫だった男の子がいた。
「優ちゃんは絶対に僕のものにする♡」
ストーリーを分かりやすくするために少しだけ変更させて頂きましたm(_ _)m
・洸sideも投稿させて頂く予定です
【R18】元騎士団長(32)、弟子として育てていた第三王子(20)をヤンデレにしてしまう
夏琳トウ(明石唯加)
BL
かつて第三王子ヴィクトールの剣術の師をしていたラードルフはヴィクトールの20歳を祝うパーティーに招待された。
訳あって王都から足を遠ざけていたラードルフは知らない。
この日がヴィクトールの花嫁を選ぶ日であるということを。ヴィクトールが自身に重すぎる恋慕を向けているということを――。
ヤンデレ王子(20)×訳あり元騎士団長(32)の歪んだ師弟ラブ。
■掲載先→アルファポリス、ムーンライトノベルズ
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる