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第3章 異世界で溺愛剣士の婚約者!?

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 というか、こんなにぐるぐる動き回って大丈夫か?
 
 王子が迷子になったとなれば付き人たちも今頃血眼になって探しているに違いない。
 早く見つけてもらうにはじっと同じ場所で待っておくのが一番だろうが、迷子の自覚のない王子様の最優先事項はダイナを見つけることで、じっとなどしていられない様子だ。
 俺としては早く付き人たちに王子のお守りと猫探しをバトンタッチしたいが、まだまだ時間がかかりそうだ。
 俺はエグバードに聞こえないようこっそり溜め息を吐いた。
 
「エグバード様」
「ん? なんだ?」
「とりあえず、ちょっとそこのベンチで休みませんか。私をずっと抱いているのでお疲れでしょう」

 そう言って俺はベンチを指さした。

「何を言う。ダイナが見つからないのに悠長に休んでなどいられるか」

 俺の提案にエグバードが眉間に皺を寄せる。
 もちろん予想の範囲内だ。俺は準備していた言葉を続けた。
 
「ただ休むわけではありません。ダイナもエグバード様の声が聞こえてこちらに向かっているかもしれません。なのに、こちらがうろうろ動き回ってダイナも困っているかもしれませんよ」

 もっともらしく言うが、本心は次期国王に抱きかかえられているという無礼千万な姿を見られたくないのと、じっと座っていた方が付き人さんたちに見つけてもらいやすいだろうという、全くもって自分本位なものだった。
 だが、俺の言葉に一理あると思ったのかエグバードは真面目な顔で「それもそうだな」と頷いた。
 
「ダイナは賢いからな。私の声が聞こえればすぐ駆けつけるはずだ」
「そ、そうですよ! 賢いダイナならきっとエグバード様のところまでやってくるはずです! ダイナのためにも少し待ってあげましょう」
「そうだな、では少し待つとしよう」

 おだてるように言ったのがよかったのか、エグバードは機嫌良くベンチまで向かい、俺をその上にスッと降ろした。
 そして自分も俺の横に腰掛け、ふぅと小さく溜め息を吐いた。
 
「…………」
「…………」

 腰を下ろしてから一分くらい沈黙が続いて気づいた。
 
 会話のネタがねぇ……!
 
 俺は心の中で頭を抱えた。
 今までは「ダイナー!」とひたすら呼び続ければ間が持っていたが、休憩もかねて座っている今はそうもいかない。
 まさかずっと黙っているわけにもいかないだろう。
 かといって、女装やノーパン、職業詐称といった、不本意ながらもヤバい秘密を持っているので話題を振るのも慎重にならざるを得なかった。
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