222 / 266
第3章 異世界で溺愛剣士の婚約者!?
47
しおりを挟む
「は、はいっ、なんでしょうか?」
「お前……靴はどうした?」
「あ……」
エグバードの指摘に自分が裸足だということを思い出す。
さっきのアーロンとの一件で逃げるように飛び出した俺に靴を履く余裕などなく、裸足のままここまで走ってきたのだ。
ノーパンに比べれば裸足なんて何てことないが、他の人間からしたら確かに不思議だろう。
とりあえずノーパンや女装について気づかれたわけではないようだ。
ホッと胸をなで下ろす。
「じ、実は靴を濡らしてしまいまして……。今、靴を干しているところなんです」
苦しい嘘だが、エグバードは「そうか」とすんなり納得してくれた。
「しかし大丈夫なのか。今からダイナを探すのだぞ? 裸足で城内を歩き回るのは大変だろう」
「……!」
気遣うように言ったエグバードの言葉にチャンスを見出した俺は、目を輝かせた。
この流れだと猫探しは中止になるかも……!
自分から大丈夫かと切り出しておいてまさか裸足のまま連れ回しはしないだろう。
常識が通用しないお坊ちゃんだと思っていたが、意外にも気遣いできるじゃないか。
エグバードをちょっと見直した。
でもここで「大丈夫です」なんて儀礼的な遠慮を見せれば「そうか、なら行こう」などと言われかねない。
この悪意なきピュア自己中お坊ちゃんに「大丈夫です」の向こう側にある本心を察してもらうなんてことは無理な話だ。
ここは遠回しにエグバードの機嫌を損ねない程度に歩けないアピールをしなければ……!
俺は控えめな雰囲気を作りながら伏し目がちに頷いた。
「そ、そうですね。確かに裸足で動き回るのは足に負担が大きいですね。さっき小石で足の裏を少し切ってしまいましたし……」
「そうか、それならあまり歩き回るのはよくないな。……仕方ない」
ふぅ、とエグバードが小さく溜め息を吐く。
よっしゃ……! これは猫探し中止のパターンだ!
俺は胸の中でガッツポーズした。
ダイナには悪いが、しかし迷子二人が捜索に出たところで見つけ出せる可能性はかなり低いだろう。
それよりはここで、恐らくエグバードを血眼で探しているだろう付き人さんを大人しく待った方が得策だ。
ダイナを探すのはその後、城内を知り尽くしている付き人さんにしてもらった方がすぐに見つかるに違いない。急がば回れだ。
――と、俺の頭の中では完全に猫探しはなしの方向で確定していたのだが、エグバードの方は違ったようだ。
「おわっ!」
気づけば視界が高くなり、十二歳とはとても思えない大人びた端整な顔が目の前にあった。
突然抱きかかえられ、思わず地の声が出てしまった俺は、慌てて口を塞いだ。
だが、エグバードは全く気にした様子はなかった。
そのことにホッとしつつも、エグバードの行動の意図が掴めず、俺は困惑した。
「え、ちょ、ちょっと、急にどうしたんですか?」
再び声を作って訊くと、エグバードはフッと柔らかく鼻で笑った。
「次期王の私が、レディを裸足で歩かせるわけがないだろう。そんなことしては王族として恥だ」
高貴な笑みで得意げに言い放つエグバードは、少女漫画や乙女ゲームだったら間違いなくヒロインのハートをぶち抜いていたかもしれないが、あいにく俺は男だ。
同じ男に、しかも俺より年下の子どもにお姫様抱っこされるなど屈辱の極みでしかない。
さらに体を密着していることでノーパンと女装がバレやしないか冷や汗ものだ。
胸をときめかせるヒロインとは別の意味で心臓のドキドキが止まらない。
「お前……靴はどうした?」
「あ……」
エグバードの指摘に自分が裸足だということを思い出す。
さっきのアーロンとの一件で逃げるように飛び出した俺に靴を履く余裕などなく、裸足のままここまで走ってきたのだ。
ノーパンに比べれば裸足なんて何てことないが、他の人間からしたら確かに不思議だろう。
とりあえずノーパンや女装について気づかれたわけではないようだ。
ホッと胸をなで下ろす。
「じ、実は靴を濡らしてしまいまして……。今、靴を干しているところなんです」
苦しい嘘だが、エグバードは「そうか」とすんなり納得してくれた。
「しかし大丈夫なのか。今からダイナを探すのだぞ? 裸足で城内を歩き回るのは大変だろう」
「……!」
気遣うように言ったエグバードの言葉にチャンスを見出した俺は、目を輝かせた。
この流れだと猫探しは中止になるかも……!
自分から大丈夫かと切り出しておいてまさか裸足のまま連れ回しはしないだろう。
常識が通用しないお坊ちゃんだと思っていたが、意外にも気遣いできるじゃないか。
エグバードをちょっと見直した。
でもここで「大丈夫です」なんて儀礼的な遠慮を見せれば「そうか、なら行こう」などと言われかねない。
この悪意なきピュア自己中お坊ちゃんに「大丈夫です」の向こう側にある本心を察してもらうなんてことは無理な話だ。
ここは遠回しにエグバードの機嫌を損ねない程度に歩けないアピールをしなければ……!
俺は控えめな雰囲気を作りながら伏し目がちに頷いた。
「そ、そうですね。確かに裸足で動き回るのは足に負担が大きいですね。さっき小石で足の裏を少し切ってしまいましたし……」
「そうか、それならあまり歩き回るのはよくないな。……仕方ない」
ふぅ、とエグバードが小さく溜め息を吐く。
よっしゃ……! これは猫探し中止のパターンだ!
俺は胸の中でガッツポーズした。
ダイナには悪いが、しかし迷子二人が捜索に出たところで見つけ出せる可能性はかなり低いだろう。
それよりはここで、恐らくエグバードを血眼で探しているだろう付き人さんを大人しく待った方が得策だ。
ダイナを探すのはその後、城内を知り尽くしている付き人さんにしてもらった方がすぐに見つかるに違いない。急がば回れだ。
――と、俺の頭の中では完全に猫探しはなしの方向で確定していたのだが、エグバードの方は違ったようだ。
「おわっ!」
気づけば視界が高くなり、十二歳とはとても思えない大人びた端整な顔が目の前にあった。
突然抱きかかえられ、思わず地の声が出てしまった俺は、慌てて口を塞いだ。
だが、エグバードは全く気にした様子はなかった。
そのことにホッとしつつも、エグバードの行動の意図が掴めず、俺は困惑した。
「え、ちょ、ちょっと、急にどうしたんですか?」
再び声を作って訊くと、エグバードはフッと柔らかく鼻で笑った。
「次期王の私が、レディを裸足で歩かせるわけがないだろう。そんなことしては王族として恥だ」
高貴な笑みで得意げに言い放つエグバードは、少女漫画や乙女ゲームだったら間違いなくヒロインのハートをぶち抜いていたかもしれないが、あいにく俺は男だ。
同じ男に、しかも俺より年下の子どもにお姫様抱っこされるなど屈辱の極みでしかない。
さらに体を密着していることでノーパンと女装がバレやしないか冷や汗ものだ。
胸をときめかせるヒロインとは別の意味で心臓のドキドキが止まらない。
51
お気に入りに追加
2,826
あなたにおすすめの小説



別れようと彼氏に言ったら泣いて懇願された挙げ句めっちゃ尽くされた
翡翠飾
BL
「い、いやだ、いや……。捨てないでっ、お願いぃ……。な、何でも!何でもするっ!金なら出すしっ、えっと、あ、ぱ、パシリになるから!」
そう言って涙を流しながら足元にすがり付くαである彼氏、霜月慧弥。ノリで告白されノリで了承したこの付き合いに、βである榊原伊織は頃合いかと別れを切り出したが、慧弥は何故か未練があるらしい。
チャライケメンα(尽くし体質)×物静かβ(尽くされ体質)の話。

言い逃げしたら5年後捕まった件について。
なるせ
BL
「ずっと、好きだよ。」
…長年ずっと一緒にいた幼馴染に告白をした。
もちろん、アイツがオレをそういう目で見てないのは百も承知だし、返事なんて求めてない。
ただ、これからはもう一緒にいないから…想いを伝えるぐらい、許してくれ。
そう思って告白したのが高校三年生の最後の登校日。……あれから5年経ったんだけど…
なんでアイツに馬乗りにされてるわけ!?
ーーーーー
美形×平凡っていいですよね、、、、

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…
しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。
高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。
数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。
そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…


性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました
まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。
性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。
(ムーンライトノベルにも掲載しています)

兄たちが弟を可愛がりすぎです
クロユキ
BL
俺が風邪で寝ていた目が覚めたら異世界!?
メイド、王子って、俺も王子!?
おっと、俺の自己紹介忘れてた!俺の、名前は坂田春人高校二年、別世界にウィル王子の身体に入っていたんだ!兄王子に振り回されて、俺大丈夫か?!
涙脆く可愛い系に弱い春人の兄王子達に振り回され護衛騎士に迫って慌てていっもハラハラドキドキたまにはバカな事を言ったりとしている主人公春人の話を楽しんでくれたら嬉しいです。
1日の話しが長い物語です。
誤字脱字には気をつけてはいますが、余り気にしないよ~と言う方がいましたら嬉しいです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる