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第3章 異世界で溺愛剣士の婚約者!?
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「は、はいっ、なんでしょうか?」
「お前……靴はどうした?」
「あ……」
エグバードの指摘に自分が裸足だということを思い出す。
さっきのアーロンとの一件で逃げるように飛び出した俺に靴を履く余裕などなく、裸足のままここまで走ってきたのだ。
ノーパンに比べれば裸足なんて何てことないが、他の人間からしたら確かに不思議だろう。
とりあえずノーパンや女装について気づかれたわけではないようだ。
ホッと胸をなで下ろす。
「じ、実は靴を濡らしてしまいまして……。今、靴を干しているところなんです」
苦しい嘘だが、エグバードは「そうか」とすんなり納得してくれた。
「しかし大丈夫なのか。今からダイナを探すのだぞ? 裸足で城内を歩き回るのは大変だろう」
「……!」
気遣うように言ったエグバードの言葉にチャンスを見出した俺は、目を輝かせた。
この流れだと猫探しは中止になるかも……!
自分から大丈夫かと切り出しておいてまさか裸足のまま連れ回しはしないだろう。
常識が通用しないお坊ちゃんだと思っていたが、意外にも気遣いできるじゃないか。
エグバードをちょっと見直した。
でもここで「大丈夫です」なんて儀礼的な遠慮を見せれば「そうか、なら行こう」などと言われかねない。
この悪意なきピュア自己中お坊ちゃんに「大丈夫です」の向こう側にある本心を察してもらうなんてことは無理な話だ。
ここは遠回しにエグバードの機嫌を損ねない程度に歩けないアピールをしなければ……!
俺は控えめな雰囲気を作りながら伏し目がちに頷いた。
「そ、そうですね。確かに裸足で動き回るのは足に負担が大きいですね。さっき小石で足の裏を少し切ってしまいましたし……」
「そうか、それならあまり歩き回るのはよくないな。……仕方ない」
ふぅ、とエグバードが小さく溜め息を吐く。
よっしゃ……! これは猫探し中止のパターンだ!
俺は胸の中でガッツポーズした。
ダイナには悪いが、しかし迷子二人が捜索に出たところで見つけ出せる可能性はかなり低いだろう。
それよりはここで、恐らくエグバードを血眼で探しているだろう付き人さんを大人しく待った方が得策だ。
ダイナを探すのはその後、城内を知り尽くしている付き人さんにしてもらった方がすぐに見つかるに違いない。急がば回れだ。
――と、俺の頭の中では完全に猫探しはなしの方向で確定していたのだが、エグバードの方は違ったようだ。
「おわっ!」
気づけば視界が高くなり、十二歳とはとても思えない大人びた端整な顔が目の前にあった。
突然抱きかかえられ、思わず地の声が出てしまった俺は、慌てて口を塞いだ。
だが、エグバードは全く気にした様子はなかった。
そのことにホッとしつつも、エグバードの行動の意図が掴めず、俺は困惑した。
「え、ちょ、ちょっと、急にどうしたんですか?」
再び声を作って訊くと、エグバードはフッと柔らかく鼻で笑った。
「次期王の私が、レディを裸足で歩かせるわけがないだろう。そんなことしては王族として恥だ」
高貴な笑みで得意げに言い放つエグバードは、少女漫画や乙女ゲームだったら間違いなくヒロインのハートをぶち抜いていたかもしれないが、あいにく俺は男だ。
同じ男に、しかも俺より年下の子どもにお姫様抱っこされるなど屈辱の極みでしかない。
さらに体を密着していることでノーパンと女装がバレやしないか冷や汗ものだ。
胸をときめかせるヒロインとは別の意味で心臓のドキドキが止まらない。
「お前……靴はどうした?」
「あ……」
エグバードの指摘に自分が裸足だということを思い出す。
さっきのアーロンとの一件で逃げるように飛び出した俺に靴を履く余裕などなく、裸足のままここまで走ってきたのだ。
ノーパンに比べれば裸足なんて何てことないが、他の人間からしたら確かに不思議だろう。
とりあえずノーパンや女装について気づかれたわけではないようだ。
ホッと胸をなで下ろす。
「じ、実は靴を濡らしてしまいまして……。今、靴を干しているところなんです」
苦しい嘘だが、エグバードは「そうか」とすんなり納得してくれた。
「しかし大丈夫なのか。今からダイナを探すのだぞ? 裸足で城内を歩き回るのは大変だろう」
「……!」
気遣うように言ったエグバードの言葉にチャンスを見出した俺は、目を輝かせた。
この流れだと猫探しは中止になるかも……!
自分から大丈夫かと切り出しておいてまさか裸足のまま連れ回しはしないだろう。
常識が通用しないお坊ちゃんだと思っていたが、意外にも気遣いできるじゃないか。
エグバードをちょっと見直した。
でもここで「大丈夫です」なんて儀礼的な遠慮を見せれば「そうか、なら行こう」などと言われかねない。
この悪意なきピュア自己中お坊ちゃんに「大丈夫です」の向こう側にある本心を察してもらうなんてことは無理な話だ。
ここは遠回しにエグバードの機嫌を損ねない程度に歩けないアピールをしなければ……!
俺は控えめな雰囲気を作りながら伏し目がちに頷いた。
「そ、そうですね。確かに裸足で動き回るのは足に負担が大きいですね。さっき小石で足の裏を少し切ってしまいましたし……」
「そうか、それならあまり歩き回るのはよくないな。……仕方ない」
ふぅ、とエグバードが小さく溜め息を吐く。
よっしゃ……! これは猫探し中止のパターンだ!
俺は胸の中でガッツポーズした。
ダイナには悪いが、しかし迷子二人が捜索に出たところで見つけ出せる可能性はかなり低いだろう。
それよりはここで、恐らくエグバードを血眼で探しているだろう付き人さんを大人しく待った方が得策だ。
ダイナを探すのはその後、城内を知り尽くしている付き人さんにしてもらった方がすぐに見つかるに違いない。急がば回れだ。
――と、俺の頭の中では完全に猫探しはなしの方向で確定していたのだが、エグバードの方は違ったようだ。
「おわっ!」
気づけば視界が高くなり、十二歳とはとても思えない大人びた端整な顔が目の前にあった。
突然抱きかかえられ、思わず地の声が出てしまった俺は、慌てて口を塞いだ。
だが、エグバードは全く気にした様子はなかった。
そのことにホッとしつつも、エグバードの行動の意図が掴めず、俺は困惑した。
「え、ちょ、ちょっと、急にどうしたんですか?」
再び声を作って訊くと、エグバードはフッと柔らかく鼻で笑った。
「次期王の私が、レディを裸足で歩かせるわけがないだろう。そんなことしては王族として恥だ」
高貴な笑みで得意げに言い放つエグバードは、少女漫画や乙女ゲームだったら間違いなくヒロインのハートをぶち抜いていたかもしれないが、あいにく俺は男だ。
同じ男に、しかも俺より年下の子どもにお姫様抱っこされるなど屈辱の極みでしかない。
さらに体を密着していることでノーパンと女装がバレやしないか冷や汗ものだ。
胸をときめかせるヒロインとは別の意味で心臓のドキドキが止まらない。
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