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第3章 異世界で溺愛剣士の婚約者!?
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「も、申し訳ございません。実はお……いや、私、本日こちらに配属されたばかりでまだ城内の構造に詳しくないもので、私自身道に迷っているのであります。本当に申し訳ございません……っ」
俺は深く頭を下げた。
かなり苦しい弁解だが、一か八かだ。この設定で押し通すしかない。
この粗の目立つ設定に男がもっともな突っ込みを入れやしないか内心ひやひやしたが、俺の緊張に反して、男はあっさりとした様子で溜め息を吐いただけだった。
「なんだお前も迷子か」
「え? お前もってことはあなたもですか?」
反射的に聞き返すと、男は眉根を寄せてこちらをギロリと睨んだ。
「失敬な。この私が迷子になるわけがなかろう」
「し、失礼しましたっ」
「私が迷子になったのではない。あいつらが私からはぐれて迷子になったのだ」
「……へ?」
その傲慢不遜でありながらどこか無垢さを感じさせる物言いに、俺は目を丸くした。
なんかこういうキャラ、漫画とかラノベで見たことあるような……。
「ちなみにあいつらと言うのは……?」
「私の付き人たちだ。私が目を離したすきにいなくなりおって、全く困った奴らよ」
男が肩で溜め息を吐く。自分に非があるとは微塵も思っていないその様子に、俺は確信した。
出たー! 絶対これ面倒な奴!
悪気なく世界の中心は自分だと思い込んでいるピュア自己中貴族だ、これ!
花よ蝶よと育てられた世間知らずの金持ちとか貴族の子供によくあるパターンだ。
まぁ相手は俺より背も高い成人男性だが、誰にも指摘されずそのまま大人になってしまったというのもよくあることだ。
そしてこういう奴らは、大概において常識というものが崩壊していて、相手の話を聞き入れない。
たとえ自分以外の人間が白と言っても、自分が黒と思えば黒であり、そして自身の持つ財力や権力で白も黒に変える、そんな奴らだ。
いや、まぁ後半は俺の偏見だが、当たらずといえども遠からずだろう。
これは厄介かつ面倒な奴に出会ってしまった……!
俺は心の中で頭を抱えた。
とにかく波風を立てずスマートにこの場を立ち去らなくては……、と笑みを繕って男に向き直った。
「そ、それは大変ですね。でも、きっと迷子になってるお付きの人たちもあなたを探しているでしょうからそのうち会えますよ。相手が見つけやすいようここでじっとしておいた方がいいかもしれませんね。それじゃあ私はこれで――」
適当にそれっぽい無難な言葉を並べてスッとフェイドアウトしようとした瞬間、がっと手首を掴まれた。
「待て、どこに行く?」
「え、いや、な、仲間のところに……」
「私を置いて行くつもりか」
高貴な人間の生まれ持った高圧的な瞳で、どこか非難がましく言われたじろいでしまう。
「い、いや、でも、私がいたところで何かできるわけではないですし……」
面倒なことになる前にさっさとこの場を去りたいというのが本心だが、もちろん言えるわけがない。
ごにょごにょと言い訳っぽく答えると、男はフンと鼻で息を吐いた。
「何もできなくてもよい。心細いのだ。……傍にいろ」
言い方は傲慢不遜だが、掴んだ手をぎゅっと握りしめてくるその力は、まるで迷子の子どもそのものだった。
これが普通に子どもなら少しかわいそうになって傍にいるかもしれないが、相手は俺より優に二十センチは背の高い男だ。
かわいそうと思うより呆れてしまう。
「いや、でも、私も用がありますので……」
控えめに断ると、男はムッと眉間に皺を寄せた。
「なんだ、いたいけな子どもを置いて行くというのか? それでもお前、王に選ばれし白銀の翼か」
「ん? んん?」
いたいけな、子ども?
どこをどう見てもこの場に子どもなどいない。
まさか……と思いながら、男に訊く。
俺は深く頭を下げた。
かなり苦しい弁解だが、一か八かだ。この設定で押し通すしかない。
この粗の目立つ設定に男がもっともな突っ込みを入れやしないか内心ひやひやしたが、俺の緊張に反して、男はあっさりとした様子で溜め息を吐いただけだった。
「なんだお前も迷子か」
「え? お前もってことはあなたもですか?」
反射的に聞き返すと、男は眉根を寄せてこちらをギロリと睨んだ。
「失敬な。この私が迷子になるわけがなかろう」
「し、失礼しましたっ」
「私が迷子になったのではない。あいつらが私からはぐれて迷子になったのだ」
「……へ?」
その傲慢不遜でありながらどこか無垢さを感じさせる物言いに、俺は目を丸くした。
なんかこういうキャラ、漫画とかラノベで見たことあるような……。
「ちなみにあいつらと言うのは……?」
「私の付き人たちだ。私が目を離したすきにいなくなりおって、全く困った奴らよ」
男が肩で溜め息を吐く。自分に非があるとは微塵も思っていないその様子に、俺は確信した。
出たー! 絶対これ面倒な奴!
悪気なく世界の中心は自分だと思い込んでいるピュア自己中貴族だ、これ!
花よ蝶よと育てられた世間知らずの金持ちとか貴族の子供によくあるパターンだ。
まぁ相手は俺より背も高い成人男性だが、誰にも指摘されずそのまま大人になってしまったというのもよくあることだ。
そしてこういう奴らは、大概において常識というものが崩壊していて、相手の話を聞き入れない。
たとえ自分以外の人間が白と言っても、自分が黒と思えば黒であり、そして自身の持つ財力や権力で白も黒に変える、そんな奴らだ。
いや、まぁ後半は俺の偏見だが、当たらずといえども遠からずだろう。
これは厄介かつ面倒な奴に出会ってしまった……!
俺は心の中で頭を抱えた。
とにかく波風を立てずスマートにこの場を立ち去らなくては……、と笑みを繕って男に向き直った。
「そ、それは大変ですね。でも、きっと迷子になってるお付きの人たちもあなたを探しているでしょうからそのうち会えますよ。相手が見つけやすいようここでじっとしておいた方がいいかもしれませんね。それじゃあ私はこれで――」
適当にそれっぽい無難な言葉を並べてスッとフェイドアウトしようとした瞬間、がっと手首を掴まれた。
「待て、どこに行く?」
「え、いや、な、仲間のところに……」
「私を置いて行くつもりか」
高貴な人間の生まれ持った高圧的な瞳で、どこか非難がましく言われたじろいでしまう。
「い、いや、でも、私がいたところで何かできるわけではないですし……」
面倒なことになる前にさっさとこの場を去りたいというのが本心だが、もちろん言えるわけがない。
ごにょごにょと言い訳っぽく答えると、男はフンと鼻で息を吐いた。
「何もできなくてもよい。心細いのだ。……傍にいろ」
言い方は傲慢不遜だが、掴んだ手をぎゅっと握りしめてくるその力は、まるで迷子の子どもそのものだった。
これが普通に子どもなら少しかわいそうになって傍にいるかもしれないが、相手は俺より優に二十センチは背の高い男だ。
かわいそうと思うより呆れてしまう。
「いや、でも、私も用がありますので……」
控えめに断ると、男はムッと眉間に皺を寄せた。
「なんだ、いたいけな子どもを置いて行くというのか? それでもお前、王に選ばれし白銀の翼か」
「ん? んん?」
いたいけな、子ども?
どこをどう見てもこの場に子どもなどいない。
まさか……と思いながら、男に訊く。
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