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第3章 異世界で溺愛剣士の婚約者!?
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「よかった……、無事何事もなく終わった……」
謁見の間を出て、俺は大きく溜め息を吐いた。
「ほらね、私の言った通りでしょ? 大きなヘマをしなければ絶対にバレないって」
「それはそれで男としてのプライドが傷つくけどな……」
本気で筋トレを始めようかと考えたほどだ。
「まぁまぁ、いいじゃない。おかげでホワイトちぇるるんを見ることができたし」
「別に俺は見れなくてもよかったけど!?」
女装の対価がチェルノの正装姿というのはあまりに割に合わなさすぎる。
そんな風に話しながら、クロと俺の服が待つ応接間に向かっていると、
「おーい、アーシャ!」
背後から声がして振り返ると、長い廊下の端の方から白銀の翼の制服を着たメガネの男が手を振ってこちらに向かってきていた。
「げっ」
アーシャが露骨に顔を顰めた。
この表情を見れば相手が厄介な人間だということは一目瞭然だ。
男が誰なのか聞くより早く、アーシャが素早く俺の体をぐるりと前に向かせた。
そして小声でこそこそと口早に言った。
「ソウちゃん、悪いけど先に戻ってて」
「え!?」
一度きた道とはいえ初めての場所で、しかも女装姿だ。心細いことこの上ない。
思わず縋るように見詰めると、アーシャが溜め息を吐いた。
「あいつ、私のいとこなんだけど、捕まると面倒なのよ。きっと私の友達だと思ってソウちゃんに色々と質問責めしてくると思うの。ソウちゃんが男、しかも女装している男だと知ったら大騒ぎになるわ」
「それはかなり面倒だな」
騒ぎを聞きつけた衛兵たちに女装姿のまま連行される自分を想像して少しゾッとした。
「でしょ? だから悪いけど、先に戻ってて。この廊下の突き当たりを左に行った後、真っ赤な花の絵の向かいを右に曲がって左側の三番目の部屋。そこがさっきの応接間だから」
早口でそう説明すると、聞き返す間も与えず、俺の背中を前に押した。
「うぉ……っ」
勢いで前につんのめったがなんとか体勢を持ち直して、アーシャを振り返る。
事情はよく分かったが、やっぱり一人では不安だ。
せめて道順をもう一度聞こうと思ったが、アーシャのいとこがすぐ近くまで迫っていたので、俺は急いで前に向き直って、逃げるように長い廊下を駆けて行った。
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