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第3章 異世界で溺愛剣士の婚約者!?

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 だからこいつは何でこうも人を煽る言い方ばかりするんだ……。
 
 俺は呆れて溜め息を吐いた。
 恐らくあの性悪のことだ、趣味かライフワークなのだろう。

「ははっ、王様を守るくらいしか能のない騎士が百戦錬磨の勇者様に挑むっていうのかよ」
「黙れ! お前のような者、勇者でも何でもない!」
「そうだよなぁ、俺もそう思うぜ。でもこの『聖なる剣』が俺を勇者として選んだんだから仕方ねぇだろ?」

 アーロンは挑発的に口の端を持ち上げてそう言うと、鞘から剣を取り出した。
 男が一瞬怯むように息を呑んだが、すぐに目尻をキッと吊り上げた。

「貴様のような無礼者、たとえ聖なる剣が勇者に選んでも、私は絶対に認めない……っ!」

 そう言って、男がアーロンの方へ向かおうと足を一歩踏み出した瞬間、ドン……! と凄まじく重い音が辺りに響いた。
 その音はさっき、城に入る前に聞いた音だった。
 殺気立っていた男はその音に足を止めた。
 いや、音に驚いたからではなく、剣の先の目標が潰れたカエルのように床にうつ伏せに倒れてしまったからだ。

「ッ、ぐ……! おいっ、チェルノなにすんだっ!」

 魔法で上から重力がかけられているのか、アーロンは表情を歪めながら顔だけでチェルノの方を振り仰いだ。
 どうやら、アーシャとジェラルドのケンカを止める時に使った魔法を、アーロンにも使っているようだ。

 チェルノは涼しい顔でアーロンの抗議を無視して、王様の方へ居直った。

「申し訳ございません。魔王を倒した際に頭に強い衝撃を受けたせいで少々礼儀がかけてしまったようです。彼には療養が必要ですので、今日はこの辺でよろしいでしょうか? 邪神の討伐についてはまた別の日にお時間を作って頂けましたら幸いです」
「そ、そうであったか。ならば、そのことについては後日、話すとしよう」

 とても人を魔法で床に押しつぶしている人物とは思えないほどの物腰柔らかな物言いのチェルノに若干怯みつつも、その方が面倒な騒ぎにならないと思ったのだろう、王様は何とか威厳を取り繕ってぎこちなく頷いた。

「ご配慮くださり誠にありがとうございます。それでは失礼致します」

 チェルノは最後に深く頭を下げると、アーロンの片方の足首だけを握ってそのままズルズルと引きずりながら謁見の間から出て行った。

「ははは、チェルノに運んでもらえるなんていいなぁ」

 呑気に言いながらその後をジェラルドが追い、ドゥーガルドは無言で王様へ頭を下げて立ち去った。

 四人がいなくなると、ざわめきが一気に広がった。
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