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第3章 異世界で溺愛剣士の婚約者!?

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「な、なんと……っ」

 今まで泰然とした態度を崩さなかった王様が、顔をこわばらせて言葉を失った。
 同時に、どよめきが周囲に走った。

「そ、そんなっ、邪神が召喚されたなんて……」
「これでは千二百年前と一緒じゃないか……っ」

 そのどよめきは、事情を知らない俺でも、人々の絶望的な心境がひしひしと伝わるものだった。

「な、なぁ、アーシャ。邪神ってそんなにやばいの?」

 小声で尋ねると、アーシャは神妙な表情でこくりと頷いた。

「うん……、はっきり言って、すごくやばい」

 深刻な声で断言するアーシャの言葉に、嫌な汗が背中に滲む。
 どうやら、元の世界でもやばい慶介だったが、こっちの世界でも相当にやばい存在のようだ。
 そんな奴に目をつけられているのだ。肝が冷えないはずがない。

「で、でも、見た感じ、普通の人間ぽかったけどなー……」

 まさかこんなにも恐れられている邪神と知り合いなどと言えるはずなく、他人の振りを決め込む。

「見た目はどうであれ、邪神は禁忌の魔術で異世界から召喚された存在よ。その魔力は、この世界の常識からは考えられないほど強大で底が知れないの。千二百年前にも魔王が召喚したけど、最終的に魔王さえ邪神に取り込まれてしまって、人間も魔族も関係なく甚大な被害が出たと文献に残っているわ。結局、勇者と相討ちで何とか倒せたとされてるけど、邪神については謎が多いの。以来、魔族すら手を出すことのなかった魔術、それが邪神召喚」

 アーシャの言葉に俺はごくりと唾を飲み込んだ。

 マジで邪神ってやばい存在じゃん……。

 ──お前……っ、覚えておけよっ! そっちに行ったこと、次会った時に死ぬほど後悔させてやる! 上も下もぐちゃぐちゃに泣かせてやるからな!

 去り際に言い放った、捨て台詞というにはあまりにおどろおどろしく凄みの強い慶介の言葉を思い出して全身が粟立った。

「静粛に。まだ王への報告の途中であるぞ。私語は慎むように」

 初老の男が重く厳しい声で言うと、人々のざわめきは不安と不満の気配を残しつつ消えていった。

「では、チェルノ。報告を続けよ」
「はい。では、続けさせて頂きます。魔王を倒した際、邪神もそのダメージを受けており、モンスターに両脇を支えられ立っている状態でした」
「ならばなぜその時にとどめを刺さなかった?」

 露骨に非難がましく王様が言った。
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