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第3章 異世界で溺愛剣士の婚約者!?
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俺の不躾な要求に顔色ひとつ変えずに笑顔で「いいよ~、じゃあ応接間に案内するね」と言ってくれたアーシャは本当に内面も天使な美少女だ。
これでチェルノの関連での暴走がなければ完璧だっただろうに……とひとりの男として非常に残念に思う。
玉に瑕というよりむしろ玉に穴というくらい大きく、塞ぎようのない欠点だ。
「はい、よかったら紅茶どうぞ」
俺を応接間に通してから一旦席を外したアーシャは、ティーセットを携えて戻ってきた。
「いい薬草を使ってるら疲れも和らぐと思うよ~」
にこやかに言いながら俺の前に静かに紅茶を置くアーシャに玉に穴なんて思ってごめん……! と頭の中で土下座する一方、やっぱりチェルノ関連の暴走癖が悔やまれてならない。
「あ、ありがとうな、アーシャ」
「いえいえ~。クロろんには、はい、これ」
そう言ってソファの足元にミルクが入った皿を置いた。俺の膝の上に座るクロは思わず顔を顰めた。
「おい、私をそこらの犬猫と一緒の扱いをするなっ」
どうやらプライドを傷つけられたらしく、ぷんぷんと憤慨するクロ。
「えぇ~、でもカップじゃ飲みにくいでしょ?」
「……仕方ない。ミルクに罪はない。残してはこの乳の家畜が可愛そうだ。飲んでやろう」
ずいぶんと尊大な言い訳を並べると、クロは俺の膝からぴょんと飛び降りてミルクをぺろぺろと舐め始めた。
結構な勢いで舐めているところから、どうやら相当に喉が渇いていたようだ。
こうして見ると本当に可愛いただの子犬なのになぁと無意識に手を伸ばしてその頭を撫でる。
触られたのが嬉しかったのか目を細めて俺の掌に自分の頭をすりつけてくるのがまた可愛く、もうずっとこのまま子犬バージョンでいいんじゃね? と思ったほどだ。
もちろん大型のモフモフも捨てがたいところではあるが、手は出さないと約束はしていても未だに番だ何だと言ってくるのだ、万が一の可能性を考えれば自分より小さい方がいいに決まっている。
「ふふふ、ほんと二人ってばラブラブだね~」
向かいに座ったアーシャが膝に肘をついて微笑ましそうな視線を向けてくる。
「は、ははは……」
こちらが誘導した誤解とはいえ、ラブラブなどという事実と大きく異なる言葉に頬が引きつる。
一方のクロは上機嫌でふふん、と胸を張っている。
現在進行形でクロの勘違いを取り返しのつかないところまで深めているような気がするが、というか確実にそうだろうが、アーシャの美少女スマイルが剥がれる方が恐ろしいので気づかないフリをする。
「そ、そういえばさ、さっきチェルノと同僚って言ってたけど何の同僚?」
これ以上自分たちの話をされてしまってはクロの願望的妄想をさらに拗らせてしまうので話を逸らした。
するとアーシャは少し目を丸くしたがすぐに「ああ、そういえばこの国に来て日が浅いって言ってたっけ」とチェルノの言葉を思い出したようで納得した。
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