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第3章 異世界で溺愛剣士の婚約者!?
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「やだっ、ごめんなさい。私ったら勘違いしちゃってた」
胸ぐらからパッと手を離すと、その手をすぐさま自分の胸の前で合わせて頭を下げてきた。
「ごめんね、ソウちゃん。私ちぇるるんのことになると我を忘れちゃうところがあって……、許してくれる?」
眉をハの字にして、首をこてんと横に倒しこちらの反応を伺うアーシャ。
う……っ、可愛い……!
こんな可憐な美少女に、上目遣いでうるうるとした瞳を向けて謝られて、許さないと言える男などこの世にいないだろう。女子慣れしていない童貞ならばなおさらだ。
「い、いいよいいよ! 誤解も解けたみたいでよかった。うん、よかった」
俺とクロが番であるという誤解については解けていないままだが、またドゥーガルドの時みたいに豹変しかねない。
しばらくは、少なくとも俺の身の安全が保障されるまでは誤解してもらっていた方がよさそうだ。
「ほんと? よかったぁ。ソウちゃんとは仲良しでいたかったから、アーシャ嬉しい!」
ぎゅっと右手を華奢な手で包まれて、反射的に疚しく鼓動が跳ね上がる。
仲良しというほんわか癒しワードと、さっきの胸ぐらを掴んで締め上げるというやくざまがいの行為が全くもって結びつかず、その凄まじい矛盾に警鐘が鳴り響かないわけではないが、キラキラ美少女スマイルにときめく胸の鼓動に呆気なく打ち消されてしまう。
「それじゃあ城内を案内するね!」
俺の手を引いて城の中へとアーシャが促す。
悲しいことに女の子と手を繋いで歩くなんて小学校の遠足以来だ。胸が高鳴らないはずがない。
にやけを抑えられずにいると、不意に胸元をカリカリと引っ掻かれた。もちろんアーシャにではない。
胸元を見下ろせば、腕に抱いたクロがキラキラと目を輝かせていこちらを見上げていた。
これが純粋無垢な動物であればその愛らしさに心を和ませ頭を撫でるところだが、相手はいくら小型化して可愛いの権化ともいえる姿になっていても、あのクロなのだ。
背中に嫌な予感という名の悪寒が反射的にぞわぞわと走る。
「ソウシ……っ、ついに私と番という事実を否定しなくなったな……! 私は嬉しいぞ」
感極まった様子で言ってクロが俺の胸に顔をすりつける。
アーシャの暴走を防ぐために話を合わせているとは微塵も思っていないようだ。驚異的、そして狂気的ポジティブシンキングである。
もはや習慣となっている妄言に対する訂正をすぐさま入れてやりたいところだが、すぐ傍にはアーシャがいる。恐怖且つ厄介なふりだしに戻るのはごめんだ。
俺は何とか言葉を飲み込んだ。それに気を良くしたクロは上機嫌で婚姻の儀や子供の数、さらには老後についてまで語り出す始末で全く手に負えない。
語っている間ずっと、ぱたぱたと横に揺れる尻尾が俺の腕を何度も撫でた。
普段なら突っ込みの嵐となっているところだが、もちろん我慢だ。口の先まで出かかっているそれらの言葉を堰き止めているせいで、俺は窒息寸前だった。
おかげで、ルンルンとご機嫌な様子で城内を案内してくれるアーシャの言葉はまるで脳まで届かず、耳に入ったそばから反対の耳から流れ出てしまう。
「……アーシャ」
「ん? どうしたの?」
振り返って笑んだまま、こてん、と首を傾げる。その美少女的仕草にときめく余裕がないほど俺は疲れ切っていた。もちろん百パーセント精神的なものだ。
「疲れたから、ちょっと一休みしたいんだけど……」
城の中に入って十分も経たずして、俺は休憩を求めた。
胸ぐらからパッと手を離すと、その手をすぐさま自分の胸の前で合わせて頭を下げてきた。
「ごめんね、ソウちゃん。私ちぇるるんのことになると我を忘れちゃうところがあって……、許してくれる?」
眉をハの字にして、首をこてんと横に倒しこちらの反応を伺うアーシャ。
う……っ、可愛い……!
こんな可憐な美少女に、上目遣いでうるうるとした瞳を向けて謝られて、許さないと言える男などこの世にいないだろう。女子慣れしていない童貞ならばなおさらだ。
「い、いいよいいよ! 誤解も解けたみたいでよかった。うん、よかった」
俺とクロが番であるという誤解については解けていないままだが、またドゥーガルドの時みたいに豹変しかねない。
しばらくは、少なくとも俺の身の安全が保障されるまでは誤解してもらっていた方がよさそうだ。
「ほんと? よかったぁ。ソウちゃんとは仲良しでいたかったから、アーシャ嬉しい!」
ぎゅっと右手を華奢な手で包まれて、反射的に疚しく鼓動が跳ね上がる。
仲良しというほんわか癒しワードと、さっきの胸ぐらを掴んで締め上げるというやくざまがいの行為が全くもって結びつかず、その凄まじい矛盾に警鐘が鳴り響かないわけではないが、キラキラ美少女スマイルにときめく胸の鼓動に呆気なく打ち消されてしまう。
「それじゃあ城内を案内するね!」
俺の手を引いて城の中へとアーシャが促す。
悲しいことに女の子と手を繋いで歩くなんて小学校の遠足以来だ。胸が高鳴らないはずがない。
にやけを抑えられずにいると、不意に胸元をカリカリと引っ掻かれた。もちろんアーシャにではない。
胸元を見下ろせば、腕に抱いたクロがキラキラと目を輝かせていこちらを見上げていた。
これが純粋無垢な動物であればその愛らしさに心を和ませ頭を撫でるところだが、相手はいくら小型化して可愛いの権化ともいえる姿になっていても、あのクロなのだ。
背中に嫌な予感という名の悪寒が反射的にぞわぞわと走る。
「ソウシ……っ、ついに私と番という事実を否定しなくなったな……! 私は嬉しいぞ」
感極まった様子で言ってクロが俺の胸に顔をすりつける。
アーシャの暴走を防ぐために話を合わせているとは微塵も思っていないようだ。驚異的、そして狂気的ポジティブシンキングである。
もはや習慣となっている妄言に対する訂正をすぐさま入れてやりたいところだが、すぐ傍にはアーシャがいる。恐怖且つ厄介なふりだしに戻るのはごめんだ。
俺は何とか言葉を飲み込んだ。それに気を良くしたクロは上機嫌で婚姻の儀や子供の数、さらには老後についてまで語り出す始末で全く手に負えない。
語っている間ずっと、ぱたぱたと横に揺れる尻尾が俺の腕を何度も撫でた。
普段なら突っ込みの嵐となっているところだが、もちろん我慢だ。口の先まで出かかっているそれらの言葉を堰き止めているせいで、俺は窒息寸前だった。
おかげで、ルンルンとご機嫌な様子で城内を案内してくれるアーシャの言葉はまるで脳まで届かず、耳に入ったそばから反対の耳から流れ出てしまう。
「……アーシャ」
「ん? どうしたの?」
振り返って笑んだまま、こてん、と首を傾げる。その美少女的仕草にときめく余裕がないほど俺は疲れ切っていた。もちろん百パーセント精神的なものだ。
「疲れたから、ちょっと一休みしたいんだけど……」
城の中に入って十分も経たずして、俺は休憩を求めた。
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