189 / 266
第3章 異世界で溺愛剣士の婚約者!?
14
しおりを挟む
「了解、任せておいて!」
快く快諾の返事をすると、俺の前までやってきて手を差し出した。
「私、アーシャ。ちぇるるんの同僚兼、未来のお嫁さん。よろしくね」
美少女の笑みをこんな間近で見れる日がまさか来ようとは……!
未来のお嫁さん発言に、頭の中で危険人物警報が反応しないわけでもないが、美少女の笑みの前では些細なことだ。
「あ、お、俺はソウシ! よろしく!」
差し出された手を握ると、柔らかで繊細な感触でぎゅっと握り返され、鼓動が甘く跳ね上がった。
「じゃあソウちゃんだね! よろしく、ソウちゃん」
ソ、ソウちゃん……!
可憐な声で可愛らしいあだ名で呼ばれて鼓膜から脳天にかけて恍惚が駆け巡る。
母さんにソウちゃんと呼ばれることはあるものの、そこに含まれる甘い響きには雲泥の差があった。
俺の異世界トリップもようやくここに来て春到来かもしれない……!
そんな甘い妄想を巡らせる俺に、腕の中と背後からじとりと何か言いたげな視線が向けられたが、もちろん無視だ。
****
「それじゃあまたあとでね~!」
城内に入っていくチェルノたちをブンブンと手を強く横に振りながら姿が見えなくなるまで見送るアーシャ。
チェルノに対する好意は些かいきすぎている気がしないでもないが、ある意味一途で健気とも言い換えられる。
というかそうポジティブ変換したくなるほどに彼女は完璧な美少女だった。
チェルノの姿が見えなくなったところでようやくアーシャは俺の方を振り返った。
「それにしてもドゥーガルるんってよっぽどソウちゃんのことが好きなのね~」
呆れた風に肩を竦めるアーシャに、俺は苦笑するしかなかった。
最後まで俺から離れなかったドゥーガルドは、チェルノに杖で後頭部を殴られ、気絶したところをそのまま担がれて城内に入って行ったのだ。
ちなみに気絶したのは何かしらの魔法なのか、それとも物理的衝撃なのかは謎のままだ。
世の中には謎の方がいいことがたくさんあるが、これもそのひとつだろうともちろん追及はしなかった。
「全く、子供でもあるまいし困ったものだ」
「ふふ、クロろん、可愛い姿して意外と毒舌なのね~」
クスクスと笑いながらアーシャがクロの頭を撫でるが、俺以外の人間に気を許していないクロは顔を顰めて、アーシャの手から逃れた。
「気安く触るな。私に触れていいのはソウシだけだ」
「ふふ、嫌われちゃった~。というかドゥーガルるんにクロろんと本当に人気者ね~」
「いや、全然そういうんじゃないから……」
こんなにも嬉しくない人気者の称号がこの世にあるなんて思いもしなかった。
「でもドゥーガルるんの婚約者なんでしょ?」
「ちっ、違う! 全然違うから!」
思いがけない誤解に俺は全力で首を横に振った。
「え~、違うの~?」
目を丸くしてきょとんとするアーシャに、今度は全力で頷く。
「違う! 本当に違うから! あれはあいつの妄想の話であって俺は全然好きとかそういうんじゃないからっ」
むしろ今日出会ったばかりのアーシャの方がよっぽど好みどストライクで、バリバリの恋愛対象だから!
もちろん、チキンなのでそんな下心丸出しの好意は口にできないが。
だが、これの百分の一くらいの薄さで冗談まじりにどうにかさりげなく好意を伝えられないかと考えていると、
「……ふぅん、そうなんだ。ドゥーガルるんの婚約者じゃないんだ」
ぼそりと彼女が呟いた。
その声は、唇が赤い花に見えてくるほどに可憐な今までの声とは打って変わって、広大な花畑すら一瞬にして凍てつかせるような冷たいものだった。
快く快諾の返事をすると、俺の前までやってきて手を差し出した。
「私、アーシャ。ちぇるるんの同僚兼、未来のお嫁さん。よろしくね」
美少女の笑みをこんな間近で見れる日がまさか来ようとは……!
未来のお嫁さん発言に、頭の中で危険人物警報が反応しないわけでもないが、美少女の笑みの前では些細なことだ。
「あ、お、俺はソウシ! よろしく!」
差し出された手を握ると、柔らかで繊細な感触でぎゅっと握り返され、鼓動が甘く跳ね上がった。
「じゃあソウちゃんだね! よろしく、ソウちゃん」
ソ、ソウちゃん……!
可憐な声で可愛らしいあだ名で呼ばれて鼓膜から脳天にかけて恍惚が駆け巡る。
母さんにソウちゃんと呼ばれることはあるものの、そこに含まれる甘い響きには雲泥の差があった。
俺の異世界トリップもようやくここに来て春到来かもしれない……!
そんな甘い妄想を巡らせる俺に、腕の中と背後からじとりと何か言いたげな視線が向けられたが、もちろん無視だ。
****
「それじゃあまたあとでね~!」
城内に入っていくチェルノたちをブンブンと手を強く横に振りながら姿が見えなくなるまで見送るアーシャ。
チェルノに対する好意は些かいきすぎている気がしないでもないが、ある意味一途で健気とも言い換えられる。
というかそうポジティブ変換したくなるほどに彼女は完璧な美少女だった。
チェルノの姿が見えなくなったところでようやくアーシャは俺の方を振り返った。
「それにしてもドゥーガルるんってよっぽどソウちゃんのことが好きなのね~」
呆れた風に肩を竦めるアーシャに、俺は苦笑するしかなかった。
最後まで俺から離れなかったドゥーガルドは、チェルノに杖で後頭部を殴られ、気絶したところをそのまま担がれて城内に入って行ったのだ。
ちなみに気絶したのは何かしらの魔法なのか、それとも物理的衝撃なのかは謎のままだ。
世の中には謎の方がいいことがたくさんあるが、これもそのひとつだろうともちろん追及はしなかった。
「全く、子供でもあるまいし困ったものだ」
「ふふ、クロろん、可愛い姿して意外と毒舌なのね~」
クスクスと笑いながらアーシャがクロの頭を撫でるが、俺以外の人間に気を許していないクロは顔を顰めて、アーシャの手から逃れた。
「気安く触るな。私に触れていいのはソウシだけだ」
「ふふ、嫌われちゃった~。というかドゥーガルるんにクロろんと本当に人気者ね~」
「いや、全然そういうんじゃないから……」
こんなにも嬉しくない人気者の称号がこの世にあるなんて思いもしなかった。
「でもドゥーガルるんの婚約者なんでしょ?」
「ちっ、違う! 全然違うから!」
思いがけない誤解に俺は全力で首を横に振った。
「え~、違うの~?」
目を丸くしてきょとんとするアーシャに、今度は全力で頷く。
「違う! 本当に違うから! あれはあいつの妄想の話であって俺は全然好きとかそういうんじゃないからっ」
むしろ今日出会ったばかりのアーシャの方がよっぽど好みどストライクで、バリバリの恋愛対象だから!
もちろん、チキンなのでそんな下心丸出しの好意は口にできないが。
だが、これの百分の一くらいの薄さで冗談まじりにどうにかさりげなく好意を伝えられないかと考えていると、
「……ふぅん、そうなんだ。ドゥーガルるんの婚約者じゃないんだ」
ぼそりと彼女が呟いた。
その声は、唇が赤い花に見えてくるほどに可憐な今までの声とは打って変わって、広大な花畑すら一瞬にして凍てつかせるような冷たいものだった。
41
お気に入りに追加
2,796
あなたにおすすめの小説
【完結済】ラスボスの使い魔に転生したので世界を守るため全力でペットセラピーしてみたら……【溺愛こじらせドS攻め】
綺沙きさき(きさきさき)
BL
【溺愛ヤンデレ魔術師】×【黒猫使い魔】のドS・執着・溺愛をこじらせた攻めの話
<あらすじ>
魔術師ギディオンの使い魔であるシリルは、知っている。
この世界が前世でプレイしたゲーム『グランド・マギ』であること、そしてギディオンが世界滅亡を望む最凶のラスボスで、その先にはバッドエンドしか待っていないことも……。
そんな未来を回避すべく、シリルはギディオンの心の闇を癒やすため、猫の姿を最大限に活用してペットセラピーを行う。
その甲斐あって、ギディオンの心の闇は癒やされ、バッドエンドは回避できたと思われたが、ある日、目を覚ますと人間の姿になっていて――!?
========================
*表紙イラスト…はやし燈様(@umknb7)
*表紙デザイン…睦月様(https://mutsuki-design.tumblr.com/)
*9月23日(月)J.GARDEN56にて頒布予定の『異世界転生×執着攻め小説集』に収録している作品です。
35歳からの楽しいホストクラブ
綺沙きさき(きさきさき)
BL
『35歳、職業ホスト。指名はまだ、ありません――』
35歳で会社を辞めさせられた青葉幸助は、学生時代の後輩の紹介でホストクラブで働くことになったが……――。
慣れないホスト業界や若者たちに戸惑いつつも、35歳のおじさんが新米ホストとして奮闘する物語。
・売れっ子ホスト(22)×リストラされた元リーマン(35)
・のんびり平凡総受け
・攻めは俺様ホストやエリート親友、変人コック、オタク王子、溺愛兄など
※本編では性描写はありません。
(総受けのため、番外編のパラレル設定で性描写ありの小話をのせる予定です)
童貞が建設会社に就職したらメスにされちゃった
なる
BL
主人公の高梨優(男)は18歳で高校卒業後、小さな建設会社に就職した。しかし、そこはおじさんばかりの職場だった。
ストレスや性欲が溜まったおじさん達は、優にエッチな視線を浴びせ…
3人の弟に逆らえない
ポメ
BL
優秀な3つ子に調教される兄の話です。
主人公:高校2年生の瑠璃
長男の嵐は活発な性格で運動神経抜群のワイルド男子。
次男の健二は大人しい性格で勉学が得意の清楚系王子。
三男の翔斗は無口だが機械に強く、研究オタクっぽい。黒髪で少し地味だがメガネを取ると意外とかっこいい?
3人とも高身長でルックスが良いと学校ではモテまくっている。
しかし、同時に超がつくブラコンとも言われているとか?
そんな3つ子に溺愛される瑠璃の話。
調教・お仕置き・近親相姦が苦手な方はご注意くださいm(_ _)m
親友だと思ってた完璧幼馴染に執着されて監禁される平凡男子俺
toki
BL
エリート執着美形×平凡リーマン(幼馴染)
※監禁、無理矢理の要素があります。また、軽度ですが性的描写があります。
pixivでも同タイトルで投稿しています。
https://www.pixiv.net/users/3179376
もしよろしければ感想などいただけましたら大変励みになります✿
感想(匿名)➡ https://odaibako.net/u/toki_doki_
Twitter➡ https://twitter.com/toki_doki109
素敵な表紙お借りしました!
https://www.pixiv.net/artworks/98346398
ヤンデレ化していた幼稚園ぶりの友人に食べられました
ミルク珈琲
BL
幼稚園の頃ずっと後ろを着いてきて、泣き虫だった男の子がいた。
「優ちゃんは絶対に僕のものにする♡」
ストーリーを分かりやすくするために少しだけ変更させて頂きましたm(_ _)m
・洸sideも投稿させて頂く予定です
転生令息は冒険者を目指す!?
葛城 惶
BL
ある時、日本に大規模災害が発生した。
救助活動中に取り残された少女を助けた自衛官、天海隆司は直後に土砂の崩落に巻き込まれ、意識を失う。
再び目を開けた時、彼は全く知らない世界に転生していた。
異世界で美貌の貴族令息に転生した脳筋の元自衛官は憧れの冒険者になれるのか?!
とってもお馬鹿なコメディです(;^_^A
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる