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第3章 異世界で溺愛剣士の婚約者!?
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「了解、任せておいて!」
快く快諾の返事をすると、俺の前までやってきて手を差し出した。
「私、アーシャ。ちぇるるんの同僚兼、未来のお嫁さん。よろしくね」
美少女の笑みをこんな間近で見れる日がまさか来ようとは……!
未来のお嫁さん発言に、頭の中で危険人物警報が反応しないわけでもないが、美少女の笑みの前では些細なことだ。
「あ、お、俺はソウシ! よろしく!」
差し出された手を握ると、柔らかで繊細な感触でぎゅっと握り返され、鼓動が甘く跳ね上がった。
「じゃあソウちゃんだね! よろしく、ソウちゃん」
ソ、ソウちゃん……!
可憐な声で可愛らしいあだ名で呼ばれて鼓膜から脳天にかけて恍惚が駆け巡る。
母さんにソウちゃんと呼ばれることはあるものの、そこに含まれる甘い響きには雲泥の差があった。
俺の異世界トリップもようやくここに来て春到来かもしれない……!
そんな甘い妄想を巡らせる俺に、腕の中と背後からじとりと何か言いたげな視線が向けられたが、もちろん無視だ。
****
「それじゃあまたあとでね~!」
城内に入っていくチェルノたちをブンブンと手を強く横に振りながら姿が見えなくなるまで見送るアーシャ。
チェルノに対する好意は些かいきすぎている気がしないでもないが、ある意味一途で健気とも言い換えられる。
というかそうポジティブ変換したくなるほどに彼女は完璧な美少女だった。
チェルノの姿が見えなくなったところでようやくアーシャは俺の方を振り返った。
「それにしてもドゥーガルるんってよっぽどソウちゃんのことが好きなのね~」
呆れた風に肩を竦めるアーシャに、俺は苦笑するしかなかった。
最後まで俺から離れなかったドゥーガルドは、チェルノに杖で後頭部を殴られ、気絶したところをそのまま担がれて城内に入って行ったのだ。
ちなみに気絶したのは何かしらの魔法なのか、それとも物理的衝撃なのかは謎のままだ。
世の中には謎の方がいいことがたくさんあるが、これもそのひとつだろうともちろん追及はしなかった。
「全く、子供でもあるまいし困ったものだ」
「ふふ、クロろん、可愛い姿して意外と毒舌なのね~」
クスクスと笑いながらアーシャがクロの頭を撫でるが、俺以外の人間に気を許していないクロは顔を顰めて、アーシャの手から逃れた。
「気安く触るな。私に触れていいのはソウシだけだ」
「ふふ、嫌われちゃった~。というかドゥーガルるんにクロろんと本当に人気者ね~」
「いや、全然そういうんじゃないから……」
こんなにも嬉しくない人気者の称号がこの世にあるなんて思いもしなかった。
「でもドゥーガルるんの婚約者なんでしょ?」
「ちっ、違う! 全然違うから!」
思いがけない誤解に俺は全力で首を横に振った。
「え~、違うの~?」
目を丸くしてきょとんとするアーシャに、今度は全力で頷く。
「違う! 本当に違うから! あれはあいつの妄想の話であって俺は全然好きとかそういうんじゃないからっ」
むしろ今日出会ったばかりのアーシャの方がよっぽど好みどストライクで、バリバリの恋愛対象だから!
もちろん、チキンなのでそんな下心丸出しの好意は口にできないが。
だが、これの百分の一くらいの薄さで冗談まじりにどうにかさりげなく好意を伝えられないかと考えていると、
「……ふぅん、そうなんだ。ドゥーガルるんの婚約者じゃないんだ」
ぼそりと彼女が呟いた。
その声は、唇が赤い花に見えてくるほどに可憐な今までの声とは打って変わって、広大な花畑すら一瞬にして凍てつかせるような冷たいものだった。
快く快諾の返事をすると、俺の前までやってきて手を差し出した。
「私、アーシャ。ちぇるるんの同僚兼、未来のお嫁さん。よろしくね」
美少女の笑みをこんな間近で見れる日がまさか来ようとは……!
未来のお嫁さん発言に、頭の中で危険人物警報が反応しないわけでもないが、美少女の笑みの前では些細なことだ。
「あ、お、俺はソウシ! よろしく!」
差し出された手を握ると、柔らかで繊細な感触でぎゅっと握り返され、鼓動が甘く跳ね上がった。
「じゃあソウちゃんだね! よろしく、ソウちゃん」
ソ、ソウちゃん……!
可憐な声で可愛らしいあだ名で呼ばれて鼓膜から脳天にかけて恍惚が駆け巡る。
母さんにソウちゃんと呼ばれることはあるものの、そこに含まれる甘い響きには雲泥の差があった。
俺の異世界トリップもようやくここに来て春到来かもしれない……!
そんな甘い妄想を巡らせる俺に、腕の中と背後からじとりと何か言いたげな視線が向けられたが、もちろん無視だ。
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「それじゃあまたあとでね~!」
城内に入っていくチェルノたちをブンブンと手を強く横に振りながら姿が見えなくなるまで見送るアーシャ。
チェルノに対する好意は些かいきすぎている気がしないでもないが、ある意味一途で健気とも言い換えられる。
というかそうポジティブ変換したくなるほどに彼女は完璧な美少女だった。
チェルノの姿が見えなくなったところでようやくアーシャは俺の方を振り返った。
「それにしてもドゥーガルるんってよっぽどソウちゃんのことが好きなのね~」
呆れた風に肩を竦めるアーシャに、俺は苦笑するしかなかった。
最後まで俺から離れなかったドゥーガルドは、チェルノに杖で後頭部を殴られ、気絶したところをそのまま担がれて城内に入って行ったのだ。
ちなみに気絶したのは何かしらの魔法なのか、それとも物理的衝撃なのかは謎のままだ。
世の中には謎の方がいいことがたくさんあるが、これもそのひとつだろうともちろん追及はしなかった。
「全く、子供でもあるまいし困ったものだ」
「ふふ、クロろん、可愛い姿して意外と毒舌なのね~」
クスクスと笑いながらアーシャがクロの頭を撫でるが、俺以外の人間に気を許していないクロは顔を顰めて、アーシャの手から逃れた。
「気安く触るな。私に触れていいのはソウシだけだ」
「ふふ、嫌われちゃった~。というかドゥーガルるんにクロろんと本当に人気者ね~」
「いや、全然そういうんじゃないから……」
こんなにも嬉しくない人気者の称号がこの世にあるなんて思いもしなかった。
「でもドゥーガルるんの婚約者なんでしょ?」
「ちっ、違う! 全然違うから!」
思いがけない誤解に俺は全力で首を横に振った。
「え~、違うの~?」
目を丸くしてきょとんとするアーシャに、今度は全力で頷く。
「違う! 本当に違うから! あれはあいつの妄想の話であって俺は全然好きとかそういうんじゃないからっ」
むしろ今日出会ったばかりのアーシャの方がよっぽど好みどストライクで、バリバリの恋愛対象だから!
もちろん、チキンなのでそんな下心丸出しの好意は口にできないが。
だが、これの百分の一くらいの薄さで冗談まじりにどうにかさりげなく好意を伝えられないかと考えていると、
「……ふぅん、そうなんだ。ドゥーガルるんの婚約者じゃないんだ」
ぼそりと彼女が呟いた。
その声は、唇が赤い花に見えてくるほどに可憐な今までの声とは打って変わって、広大な花畑すら一瞬にして凍てつかせるような冷たいものだった。
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