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第3章 異世界で溺愛剣士の婚約者!?
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「おいっ、早くしろよ! 王様との謁見に遅れるだろうが! 商談において遅刻は禁物だ」
城内へと繋がる扉前の壁に寄りかかってアーロンがイライラした様子で怒鳴る。
というか商談って、王様相手にお前……。
無礼極まりない言葉だが、相手が勇者であるためか、それともこの果ての見えない面倒な言い争いよりマシだと思ったのだろう。城の男たちは特にアーロンの言葉に何か言うことはなかった。
「も~、本当に仕方ない奴らばっかりだね~」
地に伏したままの二人を置いて遅れてやって来たチェルノが面倒臭そうに溜め息を吐く。
「とりあえずボクらが謁見している間、ソウシを守る人がいればいいんでしょう~?」
「……そうだ。だが、ソウシを守れるほど強く尚且つ邪な目でソウシを見ない鋼の心を持った人間が果たしてこの世に俺以外にいるか?」
いや、だからお前はなんで自己評価がそんなに高いんだ……?
真顔で言うドゥーガルドを横目で呆れながら見遣る。
「鋼の心かはともかくとして適任者がこの場にいるよ~」
「え?」
驚く俺など気にせず、チェルノはくるりと今きた道を振り返った。
「アーシャ、ちょっと頼みがあるからきてくれない~?」
緩い声の呼び掛けに、今まで地面にうつ伏せで倒れていた美少女が勢い良く起き上がった。そしてそのまま飛ぶようにチェルノのもとまでやってきた。
「頼み事!? もちろんちぇるるんの頼みならなんでもきくよ!」
チェルノの両手をぎゅっと握りしめて、顔を眼前まで近づける美少女の後ろにはブンブンと激しく揺れる尻尾が見えそうだった。
キラキラと目を輝かせる美少女にあんな至近距離まで詰められるなんて羨ましい……!
今までのやりとりを見てアクの強い残念系美少女であることは火を見るより明らかだが、それでも腐っても鯛、残念でも美少女、羨望を抱かないわけがなかった。
だが、当のチェルノは「あはは~、ありがと~」とうんざりとした気持ちが言葉の端々から滲み出た声で形だけの礼を口にするだけで、他人の羨望をその身に受ける優越感は微塵もない。
まぁ、さっきのやりとりを見ていれば、それも分からなくもないが……。
「で、頼み事ってなになに? 疲れたちぇるるんを元気付けるご馳走の準備? それとも心身を満たすちょっとえっちで気持ちいいマッサージ?」
「あはは~、絶対その二つではないから安心して~」
美少女の熱視線と素敵な提案をさらりとかわして、チェルノは俺の方を指差した。
「頼みたいのはあそこにいるボクの連れの面倒をみてほしいんだ~。この国にきてまだ日が浅くて知らないことも多いんだ~。謁見が終わるまでの間、この国のことを教えてあげたり城内を案内したりしてあげて~」
チェルノに言われてくるりとこちらを振り返えると、美少女は花が綻ぶような笑みを浮かべた。
城内へと繋がる扉前の壁に寄りかかってアーロンがイライラした様子で怒鳴る。
というか商談って、王様相手にお前……。
無礼極まりない言葉だが、相手が勇者であるためか、それともこの果ての見えない面倒な言い争いよりマシだと思ったのだろう。城の男たちは特にアーロンの言葉に何か言うことはなかった。
「も~、本当に仕方ない奴らばっかりだね~」
地に伏したままの二人を置いて遅れてやって来たチェルノが面倒臭そうに溜め息を吐く。
「とりあえずボクらが謁見している間、ソウシを守る人がいればいいんでしょう~?」
「……そうだ。だが、ソウシを守れるほど強く尚且つ邪な目でソウシを見ない鋼の心を持った人間が果たしてこの世に俺以外にいるか?」
いや、だからお前はなんで自己評価がそんなに高いんだ……?
真顔で言うドゥーガルドを横目で呆れながら見遣る。
「鋼の心かはともかくとして適任者がこの場にいるよ~」
「え?」
驚く俺など気にせず、チェルノはくるりと今きた道を振り返った。
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緩い声の呼び掛けに、今まで地面にうつ伏せで倒れていた美少女が勢い良く起き上がった。そしてそのまま飛ぶようにチェルノのもとまでやってきた。
「頼み事!? もちろんちぇるるんの頼みならなんでもきくよ!」
チェルノの両手をぎゅっと握りしめて、顔を眼前まで近づける美少女の後ろにはブンブンと激しく揺れる尻尾が見えそうだった。
キラキラと目を輝かせる美少女にあんな至近距離まで詰められるなんて羨ましい……!
今までのやりとりを見てアクの強い残念系美少女であることは火を見るより明らかだが、それでも腐っても鯛、残念でも美少女、羨望を抱かないわけがなかった。
だが、当のチェルノは「あはは~、ありがと~」とうんざりとした気持ちが言葉の端々から滲み出た声で形だけの礼を口にするだけで、他人の羨望をその身に受ける優越感は微塵もない。
まぁ、さっきのやりとりを見ていれば、それも分からなくもないが……。
「で、頼み事ってなになに? 疲れたちぇるるんを元気付けるご馳走の準備? それとも心身を満たすちょっとえっちで気持ちいいマッサージ?」
「あはは~、絶対その二つではないから安心して~」
美少女の熱視線と素敵な提案をさらりとかわして、チェルノは俺の方を指差した。
「頼みたいのはあそこにいるボクの連れの面倒をみてほしいんだ~。この国にきてまだ日が浅くて知らないことも多いんだ~。謁見が終わるまでの間、この国のことを教えてあげたり城内を案内したりしてあげて~」
チェルノに言われてくるりとこちらを振り返えると、美少女は花が綻ぶような笑みを浮かべた。
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