勇者様の荷物持ち〜こんなモテ期、望んでない!〜

綺沙きさき(きさきさき)

文字の大きさ
上 下
186 / 266
第3章 異世界で溺愛剣士の婚約者!?

11

しおりを挟む
 失礼ですがと言いながら微塵も申し訳なさのない声には少しイラッときたが、男たちの言うことはまぁ確かに一理ある。
 魔王討伐の旅に同行していたとはいえ、戦いにおいて主力ではなかったのは事実だ。
 しかし、見知らぬ場所で一人置いてけぼりというのはあまりに心細い。
 そして何より、せっかくファンタジーな世界に来たのだ、謁見の間に行ってみたい! という図々しい好奇心も強かった。

「え、いや、あの、俺も一応このパーティーのメンバーですけど!」

 城の中に入れてもらいたい一心で、挙手をしながら男に詰め寄る。
 主戦力とは到底言えなかったが、魔王倒した時にもちゃんとその場にいたし、邪神である慶介の気を逸らしたことで魔王に隙ができたのも事実で、少しは役立ったはずだ。
 だが、俺の部外者でないアピールは男たちには全く響かなかった。

「チェルノ様の報告によれば貴方は旅の途中で雇った荷物持ちだと聞いております。そのような者を謁見の間に通すわけにはいきません」
「そのような者ぉ?」

 男の言い方にカチンときた。

 言っとくけど、あの荷物すげぇ重いんだからな! 荷物持ち舐めんなよ!

 抗議してやろうと口を開くより早く、俺の後ろにいたドゥーガルドがスッと前に出た。

「……そのような者とはなんだ。聞き捨てならんな」

 ドゥーガルドがギロリと鋭い目で男たちを睨み据える。
 すると、彼らは慌てて居住まいを正し、弁解するように言った。

「し、失礼しました。しかし謁見の間に部外者を立ち入れさせるわけにはいきません」
「……部外者ではない」

 そう言うと、ドゥーガルドはグッと俺の肩を抱き寄せた。

「……俺の婚約者だ」
「言うと思ったよ!」

 堂々と胸を張って言い放つドゥーガルドの妄言に、もう驚きはしない。慣れとは本当に恐ろしいものだ。

「ドゥ、ドゥーガルド様のご婚約者様でしたか。それは失礼しました……」

 男は頭を下げて非礼を詫びた。
 しかし俺を上から下まで見るその目は戸惑いと疑いをたっぷり含んでいる。
 ツッコミ所満載な言葉でも、正当な指摘を入れるどころか謝るところを見るあたり、どうやらドゥーガルドはこの世界で地位がある人間なのだろう。
 どんな嘘も妄言も地位のある人間が言えば、たちまち真実となってしまうこの世の恐ろしさを目の前で見てしまった気がして、少しゾッとした。
しおりを挟む
感想 119

あなたにおすすめの小説

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…

しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。 高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。 数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。 そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…

主人公のライバルポジにいるようなので、主人公のカッコ可愛さを特等席で愛でたいと思います。

小鷹けい
BL
以前、なろうサイトさまに途中まであげて、結局書きかけのまま放置していたものになります(アカウントごと削除済み)タイトルさえもうろ覚え。 そのうち続きを書くぞ、の意気込みついでに数話分投稿させていただきます。 先輩×後輩 攻略キャラ×当て馬キャラ 総受けではありません。 嫌われ→からの溺愛。こちらも面倒くさい拗らせ攻めです。 ある日、目が覚めたら大好きだったBLゲームの当て馬キャラになっていた。死んだ覚えはないが、そのキャラクターとして生きてきた期間の記憶もある。 だけど、ここでひとつ問題が……。『おれ』の推し、『僕』が今まで嫌がらせし続けてきた、このゲームの主人公キャラなんだよね……。 え、イジめなきゃダメなの??死ぬほど嫌なんだけど。絶対嫌でしょ……。 でも、主人公が攻略キャラとBLしてるところはなんとしても見たい!!ひっそりと。なんなら近くで見たい!! ……って、なったライバルポジとして生きることになった『おれ(僕)』が、主人公と仲良くしつつ、攻略キャラを巻き込んでひっそり推し活する……みたいな話です。 本来なら当て馬キャラとして冷たくあしらわれ、手酷くフラれるはずの『ハルカ先輩』から、バグなのかなんなのか徐々に距離を詰めてこられて戸惑いまくる当て馬の話。 こちらは、ゆるゆる不定期更新になります。

別れようと彼氏に言ったら泣いて懇願された挙げ句めっちゃ尽くされた

翡翠飾
BL
「い、いやだ、いや……。捨てないでっ、お願いぃ……。な、何でも!何でもするっ!金なら出すしっ、えっと、あ、ぱ、パシリになるから!」 そう言って涙を流しながら足元にすがり付くαである彼氏、霜月慧弥。ノリで告白されノリで了承したこの付き合いに、βである榊原伊織は頃合いかと別れを切り出したが、慧弥は何故か未練があるらしい。 チャライケメンα(尽くし体質)×物静かβ(尽くされ体質)の話。

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました

まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。 性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。 (ムーンライトノベルにも掲載しています)

美形な幼馴染のヤンデレ過ぎる執着愛

月夜の晩に
BL
愛が過ぎてヤンデレになった攻めくんの話。 ※ホラーです

言い逃げしたら5年後捕まった件について。

なるせ
BL
 「ずっと、好きだよ。」 …長年ずっと一緒にいた幼馴染に告白をした。 もちろん、アイツがオレをそういう目で見てないのは百も承知だし、返事なんて求めてない。 ただ、これからはもう一緒にいないから…想いを伝えるぐらい、許してくれ。  そう思って告白したのが高校三年生の最後の登校日。……あれから5年経ったんだけど…  なんでアイツに馬乗りにされてるわけ!? ーーーーー 美形×平凡っていいですよね、、、、

美貌の騎士候補生は、愛する人を快楽漬けにして飼い慣らす〜僕から逃げないで愛させて〜

飛鷹
BL
騎士養成学校に在席しているパスティには秘密がある。 でも、それを誰かに言うつもりはなく、目的を達成したら静かに自国に戻るつもりだった。 しかし美貌の騎士候補生に捕まり、快楽漬けにされ、甘く喘がされてしまう。 秘密を抱えたまま、パスティは幸せになれるのか。 美貌の騎士候補生のカーディアスは何を考えてパスティに付きまとうのか……。 秘密を抱えた二人が幸せになるまでのお話。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

処理中です...