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第3章 異世界で溺愛剣士の婚約者!?
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「うわぁ、すげぇ! もう門からあんなに離れてる」
馬車の窓から外を見ながら俺は感嘆の声を漏らした。
城まで歩くのを免れた上に、人生初の馬車に興奮する俺と違って、他のメンバーはこういったことに慣れているのか、むしろはしゃぐ俺の方を物珍しそうに眺めていた。
「……馬車でこんなにはしゃぐなんて、ソウシは可愛らしいな。今度、ソウシ専用の馬車を買おう」
「いや、いらねぇから!」
窓際の席に座る俺にぴたりとくっついて愛おしげに目元を細めるドゥーガルドに、間髪入れず突っ込んだ。
「そうだ、そんなものはいらん。ソウシの移動は私がいれば十分だ」
俺の膝の上でクロがフンと得意げに胸を張る。
「いや、そういう意味じゃなくて……」
「じゃあソウシは私の背中より馬車の方がいいのだな……」
しゅん、と耳を垂らしてしょんぼりとするクロの姿に「う……っ」と胸が締め付けられた。
サイズが小型犬になったせいか、ちょっとした挙動に庇護欲が掻き立てられる。
ず、ずるい……! こんな可愛い姿でしょんぼりされたらギュッと抱き締めたくなってしまう……!
「おい、簡単に騙されんな」
まるで心の内を見透かしたみたいなタイミングで、向かいの席から呆れた声を寄越され、俺はハッとして顔を上げた。
窓枠に肘をついてアーロンが小さく溜め息を吐く。
「そうやってすぐアホみたいに絆されるから、そこのバカ共に簡単にケツ掘られんだよ」
「いや! 簡単に掘られてねぇから!」
「……そうだ、優しく丁寧に解してから──」
「そういうこと言ってんじゃねぇぇぇ!」
もうっ、本当にっ、こいつら何なんだ!?
人の傷口を抉ってそこにハバネロを塗りつけて何が楽しいの!?
「あはは~、気色悪い話題なら馬車の外でしてくれる~?」
笑っていない目で俺たちを睨みながら、チェルノが馬車のドアノブに手をかける。
「ちょ、ちょっと! チェルノ、落ち着けって! というか俺は完全に被害者なんですけど!」
アーロンやドゥーガルド、クロなら走る馬車から落とされても天罰として納得できるが、被害者でしかない俺が巻き込まれるのは納得がいかない。
「ボクに嫌な記憶を呼び起こさせるってことではみんな加害者だよ~」
「なに、その狂気的な大雑把さ!」
「ふふふ、そうだよね。チェルノを不愉快にさせるならみんな同罪だよね」
「それはお前が言っていい台詞じゃない!」
優雅に微笑んで他人事な発言をするジェラルド。
奴こそがチェルノの恐ろしい笑みの諸悪の根源だというのに、なんでチェルノ側ポジションに立ってられるんだ……!
「じゃあ存在自体が不愉快なお前は即行処刑で文句はないな」
一層不気味さを増した笑みを貼り付けて、ギロリとジェラルドを睨むチェルノに心臓が竦み上がる。
は、早く、馬車から降りてぇぇぇ!
車内の険悪な空気に、俺は半分泣きそうになりながら、馬車が一刻も早く目的地に着くのを祈るようにして待った。
馬車の窓から外を見ながら俺は感嘆の声を漏らした。
城まで歩くのを免れた上に、人生初の馬車に興奮する俺と違って、他のメンバーはこういったことに慣れているのか、むしろはしゃぐ俺の方を物珍しそうに眺めていた。
「……馬車でこんなにはしゃぐなんて、ソウシは可愛らしいな。今度、ソウシ専用の馬車を買おう」
「いや、いらねぇから!」
窓際の席に座る俺にぴたりとくっついて愛おしげに目元を細めるドゥーガルドに、間髪入れず突っ込んだ。
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俺の膝の上でクロがフンと得意げに胸を張る。
「いや、そういう意味じゃなくて……」
「じゃあソウシは私の背中より馬車の方がいいのだな……」
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ず、ずるい……! こんな可愛い姿でしょんぼりされたらギュッと抱き締めたくなってしまう……!
「おい、簡単に騙されんな」
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一層不気味さを増した笑みを貼り付けて、ギロリとジェラルドを睨むチェルノに心臓が竦み上がる。
は、早く、馬車から降りてぇぇぇ!
車内の険悪な空気に、俺は半分泣きそうになりながら、馬車が一刻も早く目的地に着くのを祈るようにして待った。
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