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第3章 異世界で溺愛剣士の婚約者!?

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「これが王都……!」

 王都の大きな門をくぐった俺は、その活気な街の雰囲気や、他とは比べ物にならない人の多さ、そして城壁内の広さに、思わず感嘆の声を漏らした。

「すげぇ、やっぱり王都は規模が違うな!」

 いかにも異世界といった感じの光景に目を輝かせて見回していると、

「いちいちはしゃぐな。これだから田舎者は」

 後ろにいるアーロンが嫌味ったらしく言いながら鼻で笑って小馬鹿にしてきた。

「うるせぇ! 俺の住む世界と違うんだから珍しがって当然だろ! というか、田舎者じゃねぇし! 俺のいた世界の方がもっとすごいんだからな。東京と比べたら王都なんて比じゃねぇし」

 フン、と得意げに胸を張ってマウントを取る。
 一度も東京に行ったことはないが、田舎者扱いされるのは癪なので細かい事は棚に上げておく。

「へぇ~、ソウシの世界はこっちの世界より発達してるんだねぇ。じゃあお城もあれよりもっとすごいの?」

 チェルノが興味深そうに前方を指差しながら聞いてくる。その指に先には王都アルダンシアの象徴である大きな城が聳え立っている。
 王都の中心に建っているので、門からはまだ結構な距離があるというのにその姿が見えるのだからかなり大きいのだろう。

 城の高さで比べると、少なくとも日本の城は負けそうだ。だが、王都なんて比じゃないとまで言った手前、本当のことは言えない。

「あー……、まぁ城はあるっちゃあるけど、それよりスカイツリーとかの方がすごい」

 とりあえず絶対に勝てる建築物に話を逸らす。

「すかいつりー? 空まで届く木なの~?」
「木ではないけど、空まで届きそうなくらい高いタワーだな」
「へぇ。よくわかんないけど、ソウシの住む世界ってこっちと全然違って面白そうだね~。行ってみたいな~」

 チェルノが珍しく毒気なく純粋に羨んでいると、その肩にそっと手が置かれた。

「ふふ、本当に面白そうだね。じゃあ僕たちの新婚旅行はそこに決定──」
「気安く触ってんじゃねぇよゴミ糞野郎。一人で行って二度と帰ってくんな」
「ふふ、新婚旅行は夫婦ふたりで行くものだよ。まったくチェルノったらおっちょこちょいなんだから」
「ふざけたこと言ってるとそのすかいつりーってやつから突き落として血の雨降らすぞ」

 ひ、ひぇ……! 国内随一の観光名所をそんな凄惨な殺人現場にしないで……!

 もちろん、チェルノの有言実行しそうなその本気の目と凄んだ声に震え上がって言葉にはできないが……。

「……すかいつりー、か」

 俺の背後に影のようにぴったりと貼りつくストーカー、もといドゥーガルドが興味深そうに呟いた。

「……面白そうだな。夜もその建物には入れるのか」
「あ、うん、たぶん入れたはず」

 まさかスカイツリーの話にここまで食いつかれるとは思っていなかったので、戸惑いつつも頷く。

「……そうか、ならよかった。夜は星空が近くで見れてさぞ綺麗だろうな。ぜひご両親に挨拶に行った帰りに案内してくれ」
「いや、待て待て待て」

 聞き捨てならない言葉に思わず突っ込む。
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