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第2章 異世界でももふもふは正義!?
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「……妬んでなどいない。むしろ哀れんでいすらいる。その姿ではこうやってソウシを抱き締めることもできないのだからな」
勝ち誇ったように言うと、見せつけるようにさらにぎゅっと強く抱き締め、すりすりと頬ずりまでしてきた。
「ちょ、やめろ! 気持ち悪いっ」
上半身をひねってドゥーガルドの体を押して離れようとするが腰をがっちりホールドされているためなかなか望む距離がとれない。
「フッ、随分と一方的な抱擁だな。ちなみに私は昨晩ソウシの方から抱き付いてもらった。もちろん人の姿の時だ」
「……っ!」
得意げに言ってフンと鼻を鳴らすクロの言葉に、ドゥーガルドが頭から背筋にかけて雷のような衝撃を受けたのがビリビリと背中に伝わってきた。
「……ッ、ソウシ! どういうことだっ。俺には恥ずかしがってそんなことしてくれないのに……」
まるで浮気を責めるような勢いで詰め寄るドゥーガルドに、面倒くささがいよいよ最高潮となる。
うわー、めんどくせぇ……! というかなんで付き合ってもないのにこんな責められないといけないんだよ!
クロの言葉は誤解を招く言葉だが、ドゥーガルドと付き合っているわけでもないので別に弁解の必要はない。
しかしこのままだとさらに拗れて手が付けられないほどの面倒くさい展開になることは目に見えているので、とりあえず弁解することにした。
「だ、抱き付いたっていっても、あれだからな! 別にいやらしい意味じゃなくて、親愛的な意味の軽いやつ」
俺から抱き付いたのは、ひどい目に遭う前、ちょうどあの悲しい過去を聞いた直後のことだ。
そこにドゥーガルドたちが誤解しているような意味は微塵もなかった。
「あと、お前に抱き付かないのは恥ずかしいからじゃなくて単純に嫌だからだ」
ついでにドゥーガルドの妄想的な誤解も解く言葉も付け足したが、たぶん本人に届いてはいないだろう。
俺はくるりとクロの方へ向き直った。
「クロもドゥーガルドを煽るな。面倒くさいことになるから。で、話は戻るけどその姿でも普通に会話できるんだな」
「ああ、そうだ」
クロはさらりと肯定した。
「いやっ、それなら早く話せよ! なんか騙された気持ちになるじゃん!」
あの可愛い「わふっ」は何だったんだ!
なんかあれだ、大好きなキャラクターの着ぐるみからおっさんが出て来たような悲しい裏切りを受けた感じになる。
詐欺被害者のように憤然とツッコむ俺に、クロがスッと視線を地面に落とした。
「……すまない、騙すような形になって。だが人語を話す獣など気味が悪いだろう。一度そのせいで殺されかけたこともあったしな」
ぽつりと悲しげに零した言葉に、思わず胸が苦しくなった。
そういえば初めて会った時、クロは俺を助けてはくれたが警戒心をみなぎらせていた。きっと俺と会うまでの長い年月、人間に何度もひどい仕打ちを受けたのだろう。
そう思うと自分の言葉がひどく自意識過剰で脳天気なものに感じて恥ずかしくなった。
なんだか申し訳なくなり謝ろうと口を開きかけた時、
――ダンッ!
クロの姿を遮るように剣が視界をまっすぐに貫いた。
勝ち誇ったように言うと、見せつけるようにさらにぎゅっと強く抱き締め、すりすりと頬ずりまでしてきた。
「ちょ、やめろ! 気持ち悪いっ」
上半身をひねってドゥーガルドの体を押して離れようとするが腰をがっちりホールドされているためなかなか望む距離がとれない。
「フッ、随分と一方的な抱擁だな。ちなみに私は昨晩ソウシの方から抱き付いてもらった。もちろん人の姿の時だ」
「……っ!」
得意げに言ってフンと鼻を鳴らすクロの言葉に、ドゥーガルドが頭から背筋にかけて雷のような衝撃を受けたのがビリビリと背中に伝わってきた。
「……ッ、ソウシ! どういうことだっ。俺には恥ずかしがってそんなことしてくれないのに……」
まるで浮気を責めるような勢いで詰め寄るドゥーガルドに、面倒くささがいよいよ最高潮となる。
うわー、めんどくせぇ……! というかなんで付き合ってもないのにこんな責められないといけないんだよ!
クロの言葉は誤解を招く言葉だが、ドゥーガルドと付き合っているわけでもないので別に弁解の必要はない。
しかしこのままだとさらに拗れて手が付けられないほどの面倒くさい展開になることは目に見えているので、とりあえず弁解することにした。
「だ、抱き付いたっていっても、あれだからな! 別にいやらしい意味じゃなくて、親愛的な意味の軽いやつ」
俺から抱き付いたのは、ひどい目に遭う前、ちょうどあの悲しい過去を聞いた直後のことだ。
そこにドゥーガルドたちが誤解しているような意味は微塵もなかった。
「あと、お前に抱き付かないのは恥ずかしいからじゃなくて単純に嫌だからだ」
ついでにドゥーガルドの妄想的な誤解も解く言葉も付け足したが、たぶん本人に届いてはいないだろう。
俺はくるりとクロの方へ向き直った。
「クロもドゥーガルドを煽るな。面倒くさいことになるから。で、話は戻るけどその姿でも普通に会話できるんだな」
「ああ、そうだ」
クロはさらりと肯定した。
「いやっ、それなら早く話せよ! なんか騙された気持ちになるじゃん!」
あの可愛い「わふっ」は何だったんだ!
なんかあれだ、大好きなキャラクターの着ぐるみからおっさんが出て来たような悲しい裏切りを受けた感じになる。
詐欺被害者のように憤然とツッコむ俺に、クロがスッと視線を地面に落とした。
「……すまない、騙すような形になって。だが人語を話す獣など気味が悪いだろう。一度そのせいで殺されかけたこともあったしな」
ぽつりと悲しげに零した言葉に、思わず胸が苦しくなった。
そういえば初めて会った時、クロは俺を助けてはくれたが警戒心をみなぎらせていた。きっと俺と会うまでの長い年月、人間に何度もひどい仕打ちを受けたのだろう。
そう思うと自分の言葉がひどく自意識過剰で脳天気なものに感じて恥ずかしくなった。
なんだか申し訳なくなり謝ろうと口を開きかけた時、
――ダンッ!
クロの姿を遮るように剣が視界をまっすぐに貫いた。
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