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第2章 異世界でももふもふは正義!?
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俺達は門番に城壁の頂部にある歩廊まで案内された。
歩廊には転落防止のための壁があった。壁の高さは胸までの低いところと頭上より高いところが等間隔に並んでいて、正面から見ると凹凸が連なっている感じだ。
「私たちが確認できたグーロは計十三匹です」
壁の高さが低いところから顔を出して門の外を見下ろす。城壁の周りは堀で囲まれていて、門と繋がった跳ね橋は上げられていた。
その跳ね橋の前で白い獣が一匹横たわっていた。恐らくあれがグーロだろう。遠目でも死んでいることが分かった。
「一匹は殺せたんだね~、残りの十二匹は~?」
「毒矢を一斉に放ったのですが、一匹しか命中せず他のグーロは茂みに身を隠しています」
面目なさそうに言う門番が指差す先を見れば、確かに茂みの中に白い毛並みが見え隠れしている。
「何度か矢を放ってみたのですが、茂みの中にいるため命中率も悪く、グーロも警戒してこちらに出てこないんです」
「持久戦になっちゃったんだね~」
「その通りです……」
門番は途方に暮れた様子で溜め息を吐いた。
「なるほどな。じゃあジェラルドの矢で殺すこともできなさそうだな。……で、どうするよ?」
「え!? まさかのノープラン!?」
あれだけ大口叩いておいて他力本願!? 嘘だろ!?
「ノープランじゃねぇ、ジェラルドが毒矢でグーロを弱らせたところを俺とドゥーガルドで叩き切るつもりが、計算外だ」
チッ、と舌打ちをしながらガリガリと頭を掻く。
「というか、お前が引き受けたんだから自分で考えろよ!」
「うるせぇ! 仲間だろうが! 仲間なら困った時は支え!」
「お前に支えてもらった記憶がないんですけど!?」
というか、クズの守銭奴がもっともらしい正論を言っても微塵も説得力がない。
しかしアーロンのその場しのぎの中身のない正論は今に始まったことじゃない。それよりも、今はグーロをどうにかしなければ。
「チェルノの魔法でどうにかできないのか? たとえば昨日のおっさんにやったみたいなこととか」
「ボクの魔法はこの距離じゃ届かないね~。それにあの数のグーロを相手にするのは難しいかも~。ごめんね~」
「いいんだよ、チェルノ! 心配しなくても僕が絶対チェルノを守るからね!」
「テメェに守られるくらいならグーロに食われた方がマシだ弓矢以外能なし野郎が。あ! そうだ~! この役立たずをここから投げ落として、それを食べているところを狙って攻撃するのはどうかな~?」
「あ、えっと、もう少し穏便な、誰も犠牲が出ない方法がイイデス……」
嬉々として残酷な提案をするチェルノに、俺は震えながら首を振った。
一方、生贄にされかけたというのにジェラルドは「チェルノのために死ねるなら本望だよ」と嬉しそうに微笑んでいる。
ジェラルドの鋼のポジティブシンキングはグーロでさえ食べられないかもしれない……。
「うーん、どうしたもんかなぁ……」
アーロンの尻拭いをするのはご免だが、俺としてもグーロの件をさっさと片付けて、王都に向かいたい。
戦闘面では役に立てないのでせめて何か少しでもいい案がないかと頭を捻っていると、
「わふっ!」
クロが突然吠えて俺に背を向けて歩廊を走り出した。
軽く握っていた鎖がジャラリと俺の手から零れ落ち、ジャラジャラと石畳の上で引きずられる音が走るクロの後を追う。
「クロ!」
普段なら絶対に俺の傍から勝手に離れることのないクロの行動に驚いて名前を呼ぶ。
しかしクロは城壁の塀に前足を掛けると、そのまま城壁の外へ飛び降りた。
歩廊には転落防止のための壁があった。壁の高さは胸までの低いところと頭上より高いところが等間隔に並んでいて、正面から見ると凹凸が連なっている感じだ。
「私たちが確認できたグーロは計十三匹です」
壁の高さが低いところから顔を出して門の外を見下ろす。城壁の周りは堀で囲まれていて、門と繋がった跳ね橋は上げられていた。
その跳ね橋の前で白い獣が一匹横たわっていた。恐らくあれがグーロだろう。遠目でも死んでいることが分かった。
「一匹は殺せたんだね~、残りの十二匹は~?」
「毒矢を一斉に放ったのですが、一匹しか命中せず他のグーロは茂みに身を隠しています」
面目なさそうに言う門番が指差す先を見れば、確かに茂みの中に白い毛並みが見え隠れしている。
「何度か矢を放ってみたのですが、茂みの中にいるため命中率も悪く、グーロも警戒してこちらに出てこないんです」
「持久戦になっちゃったんだね~」
「その通りです……」
門番は途方に暮れた様子で溜め息を吐いた。
「なるほどな。じゃあジェラルドの矢で殺すこともできなさそうだな。……で、どうするよ?」
「え!? まさかのノープラン!?」
あれだけ大口叩いておいて他力本願!? 嘘だろ!?
「ノープランじゃねぇ、ジェラルドが毒矢でグーロを弱らせたところを俺とドゥーガルドで叩き切るつもりが、計算外だ」
チッ、と舌打ちをしながらガリガリと頭を掻く。
「というか、お前が引き受けたんだから自分で考えろよ!」
「うるせぇ! 仲間だろうが! 仲間なら困った時は支え!」
「お前に支えてもらった記憶がないんですけど!?」
というか、クズの守銭奴がもっともらしい正論を言っても微塵も説得力がない。
しかしアーロンのその場しのぎの中身のない正論は今に始まったことじゃない。それよりも、今はグーロをどうにかしなければ。
「チェルノの魔法でどうにかできないのか? たとえば昨日のおっさんにやったみたいなこととか」
「ボクの魔法はこの距離じゃ届かないね~。それにあの数のグーロを相手にするのは難しいかも~。ごめんね~」
「いいんだよ、チェルノ! 心配しなくても僕が絶対チェルノを守るからね!」
「テメェに守られるくらいならグーロに食われた方がマシだ弓矢以外能なし野郎が。あ! そうだ~! この役立たずをここから投げ落として、それを食べているところを狙って攻撃するのはどうかな~?」
「あ、えっと、もう少し穏便な、誰も犠牲が出ない方法がイイデス……」
嬉々として残酷な提案をするチェルノに、俺は震えながら首を振った。
一方、生贄にされかけたというのにジェラルドは「チェルノのために死ねるなら本望だよ」と嬉しそうに微笑んでいる。
ジェラルドの鋼のポジティブシンキングはグーロでさえ食べられないかもしれない……。
「うーん、どうしたもんかなぁ……」
アーロンの尻拭いをするのはご免だが、俺としてもグーロの件をさっさと片付けて、王都に向かいたい。
戦闘面では役に立てないのでせめて何か少しでもいい案がないかと頭を捻っていると、
「わふっ!」
クロが突然吠えて俺に背を向けて歩廊を走り出した。
軽く握っていた鎖がジャラリと俺の手から零れ落ち、ジャラジャラと石畳の上で引きずられる音が走るクロの後を追う。
「クロ!」
普段なら絶対に俺の傍から勝手に離れることのないクロの行動に驚いて名前を呼ぶ。
しかしクロは城壁の塀に前足を掛けると、そのまま城壁の外へ飛び降りた。
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