120 / 266
第2章 異世界でももふもふは正義!?
50
しおりを挟む
「あれ~、アーロン買い物終わったの~?」
「いや、まだ買い物の途中だけどこっちに人の流れができてたからなんか儲け話でもあるかと思って来ただけ」
「残念だったな、ここに儲け話はないからな」
「――いや、ある!」
キラリと目を光らせてそう言うと、アーロンは俺を押し退けてザッと人だかりの中心、クロの前に立った。
「おさわり無料キャンペーンはここまで! ここからは有料だ!」
「はぁ!?」
思いも寄らない宣言にクロの周りにいた人たちはもちろん、俺も目を見開いた。
「おさわり三十秒で百ピーロ。背中に乗せて街を一周で、五千ピーロだ!」
「なに勝手にクロで商売始めてんだよ!」
肩を掴んで守銭奴の口上を遮ると、アーロンは鬱陶しそうに舌打ちをした。
「いいだろ、このくらい。餌代くらい自分で稼いでもらわねぇと」
「いや、クロは普通に俺らの食材をとってきてくれんだろ!」
この間大きな魚を獲ってきてもらったことを忘れたのか!? むしろお前がクロに飯代払え!
「いいじゃねぇか。こいつだってお前の役に立つなら喜んで何だってするさ。な?」
「グルルルル……ッ」
「ほら、こいつも喜んでやらせてもらいますってよ」
「ほらじゃねぇよ! めっちゃ唸ってるじゃねぇか!」
この唸り声のどこに快諾を感じたんだ!?
「ちげぇよ、これは気合いの唸りだ」
「無理がありすぎるだろ!」
アーロンのアコギな商売を阻止するため、ギャアギャアと言い合っていると、
「そこの旅のお方」
よぼよぼとした足取りで杖をつきながら老婆が俺の方へやってきた。
老婆は腰がすっかり曲がっていることもあって体が小さく見えたが、どこか長老のような威厳のある佇まいでもあった。
「そこの獣は貴方様のものですか?」
「は、はい、そうですけど……」
そう答えた瞬間、老婆は目をカッと見開き、今まで自分の重心を預けていた杖を振り上げて俺の太腿にクリーンヒットさせた。
「あだぁっ!」
突然の攻撃に俺は濁った悲鳴をあげた。老婆の力なのでケガを負うほどのものではないが、地味に痛い。
「なっ、なにするんですか!」
理不尽な暴力に抗議の声を上げる。
クズ勇者のせいであらゆる理不尽には慣れていたつもりだったが、まさか見知らぬ老婆にまでこんな目に遭わされるなんて思ってもいなかった。太腿の痛みも相まってちょっと涙目になった。
けれど老婆は険しい顔つきを少しも崩さず、俺をキッと睨み据えた。
「お主こそ何てことをしてるんじゃ! 黒の使いをこの街に連れてくるとは……さっさと出て行け!」
「うわっ、ちょ、杖はやめてくださいっ」
怒りを剥き出しにした老婆が杖を再び振り上げた。
俺は慌てて手で顔をガードしながらストップをかけたが、俺の制止も虚しく杖は振り下ろされた。
や、やばい……っ!
反射的に目をつむったと同時に、人の気配と風が前髪をかすめた。
――ガシッ
予想していた衝撃が来なかったので恐る恐る目を開けると、アーロンが俺の前に立って老婆の杖を手で受け止めていた。
「いや、まだ買い物の途中だけどこっちに人の流れができてたからなんか儲け話でもあるかと思って来ただけ」
「残念だったな、ここに儲け話はないからな」
「――いや、ある!」
キラリと目を光らせてそう言うと、アーロンは俺を押し退けてザッと人だかりの中心、クロの前に立った。
「おさわり無料キャンペーンはここまで! ここからは有料だ!」
「はぁ!?」
思いも寄らない宣言にクロの周りにいた人たちはもちろん、俺も目を見開いた。
「おさわり三十秒で百ピーロ。背中に乗せて街を一周で、五千ピーロだ!」
「なに勝手にクロで商売始めてんだよ!」
肩を掴んで守銭奴の口上を遮ると、アーロンは鬱陶しそうに舌打ちをした。
「いいだろ、このくらい。餌代くらい自分で稼いでもらわねぇと」
「いや、クロは普通に俺らの食材をとってきてくれんだろ!」
この間大きな魚を獲ってきてもらったことを忘れたのか!? むしろお前がクロに飯代払え!
「いいじゃねぇか。こいつだってお前の役に立つなら喜んで何だってするさ。な?」
「グルルルル……ッ」
「ほら、こいつも喜んでやらせてもらいますってよ」
「ほらじゃねぇよ! めっちゃ唸ってるじゃねぇか!」
この唸り声のどこに快諾を感じたんだ!?
「ちげぇよ、これは気合いの唸りだ」
「無理がありすぎるだろ!」
アーロンのアコギな商売を阻止するため、ギャアギャアと言い合っていると、
「そこの旅のお方」
よぼよぼとした足取りで杖をつきながら老婆が俺の方へやってきた。
老婆は腰がすっかり曲がっていることもあって体が小さく見えたが、どこか長老のような威厳のある佇まいでもあった。
「そこの獣は貴方様のものですか?」
「は、はい、そうですけど……」
そう答えた瞬間、老婆は目をカッと見開き、今まで自分の重心を預けていた杖を振り上げて俺の太腿にクリーンヒットさせた。
「あだぁっ!」
突然の攻撃に俺は濁った悲鳴をあげた。老婆の力なのでケガを負うほどのものではないが、地味に痛い。
「なっ、なにするんですか!」
理不尽な暴力に抗議の声を上げる。
クズ勇者のせいであらゆる理不尽には慣れていたつもりだったが、まさか見知らぬ老婆にまでこんな目に遭わされるなんて思ってもいなかった。太腿の痛みも相まってちょっと涙目になった。
けれど老婆は険しい顔つきを少しも崩さず、俺をキッと睨み据えた。
「お主こそ何てことをしてるんじゃ! 黒の使いをこの街に連れてくるとは……さっさと出て行け!」
「うわっ、ちょ、杖はやめてくださいっ」
怒りを剥き出しにした老婆が杖を再び振り上げた。
俺は慌てて手で顔をガードしながらストップをかけたが、俺の制止も虚しく杖は振り下ろされた。
や、やばい……っ!
反射的に目をつむったと同時に、人の気配と風が前髪をかすめた。
――ガシッ
予想していた衝撃が来なかったので恐る恐る目を開けると、アーロンが俺の前に立って老婆の杖を手で受け止めていた。
51
お気に入りに追加
2,821
あなたにおすすめの小説

別れようと彼氏に言ったら泣いて懇願された挙げ句めっちゃ尽くされた
翡翠飾
BL
「い、いやだ、いや……。捨てないでっ、お願いぃ……。な、何でも!何でもするっ!金なら出すしっ、えっと、あ、ぱ、パシリになるから!」
そう言って涙を流しながら足元にすがり付くαである彼氏、霜月慧弥。ノリで告白されノリで了承したこの付き合いに、βである榊原伊織は頃合いかと別れを切り出したが、慧弥は何故か未練があるらしい。
チャライケメンα(尽くし体質)×物静かβ(尽くされ体質)の話。

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…
しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。
高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。
数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。
そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…

王道学園の冷徹生徒会長、裏の顔がバレて総受けルート突入しちゃいました!え?逃げ場無しですか?
名無しのナナ氏
BL
王道学園に入学して1ヶ月でトップに君臨した冷徹生徒会長、有栖川 誠(ありすがわ まこと)。常に冷静で無表情、そして無言の誠を生徒達からは尊敬の眼差しで見られていた。
そんな彼のもう1つの姿は… どの企業にも属さないにも関わらず、VTuber界で人気を博した個人VTuber〈〈 アイリス 〉〉!? 本性は寂しがり屋の泣き虫。色々あって周りから誤解されまくってしまった結果アイリスとして素を出していた。そんなある日、生徒会の仕事を1人で黙々とやっている内に疲れてしまい__________
※
・非王道気味
・固定カプ予定は無い
・悲しい過去🐜
・話の流れが遅い
・作者が話の進行悩み過ぎてる

普通の男の子がヤンデレや変態に愛されるだけの短編集、はじめました。
山田ハメ太郎
BL
タイトル通りです。
お話ごとに章分けしており、ひとつの章が大体1万文字以下のショート詰め合わせです。
サクッと読めますので、お好きなお話からどうぞ。
変なαとΩに両脇を包囲されたβが、色々奪われながら頑張る話
ベポ田
BL
ヒトの性別が、雄と雌、さらにα、β、Ωの三種類のバース性に分類される世界。総人口の僅か5%しか存在しないαとΩは、フェロモンの分泌器官・受容体の発達度合いで、さらにI型、II型、Ⅲ型に分類される。
βである主人公・九条博人の通う私立帝高校高校は、αやΩ、さらにI型、II型が多く所属する伝統ある名門校だった。
そんな魔境のなかで、変なI型αとII型Ωに理不尽に執着されては、色々な物を奪われ、手に入れながら頑張る不憫なβの話。
イベントにて頒布予定の合同誌サンプルです。
3部構成のうち、1部まで公開予定です。
イラストは、漫画・イラスト担当のいぽいぽさんが描いたものです。
最新はTwitterに掲載しています。

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました
まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。
性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。
(ムーンライトノベルにも掲載しています)

言い逃げしたら5年後捕まった件について。
なるせ
BL
「ずっと、好きだよ。」
…長年ずっと一緒にいた幼馴染に告白をした。
もちろん、アイツがオレをそういう目で見てないのは百も承知だし、返事なんて求めてない。
ただ、これからはもう一緒にいないから…想いを伝えるぐらい、許してくれ。
そう思って告白したのが高校三年生の最後の登校日。……あれから5年経ったんだけど…
なんでアイツに馬乗りにされてるわけ!?
ーーーーー
美形×平凡っていいですよね、、、、

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる