112 / 266
第2章 異世界でももふもふは正義!?
42
しおりを挟む 襲撃が落ち着いてひと段落つきーー
戻ってきたアンナと3人で、長老様の家でお茶をご馳走になっていた。
ワイバーンは私の収納魔法と、アンナさんの収納袋を使って回収をしておいた。
もちろん、長老様からのお願いである。
街が何事もなかった様に、生活を始めた頃。
お茶を頂いていた長老様の家に慌てて入ってくる足音がした。
「長老!ワイバーンは!どうなりまし‥‥た?」
焦って走ってきたのだろう。肩で息をし、目を赤くしながら叫んでいる。
金色の長い髪がフワッと揺れる。まだ若そうに見える男性だ。
だが、私たちの朗らかな様子に疑問を持ったのだろう。その勢いも長くは続かない
。
「おお、副ギルド長。もしかして送った者と入れ違いになったかのう?ワイバーンは倒されたよ」
はっはっは、と笑う長老様とポカン、と口を開けた副ギルド長が対照的だ。
だが、この村のために副ギルド長自らが駆けつけるなんて、なんとも勇ましい。
「どういう事か説明してもらえますか?」
「だから言った通りじゃ。このお2人がワイバーンを殲滅してくれた」
「‥‥2人で?」
私たちは副ギルド長に背を向けて座っていたので、今ここにいたことに気が付いたらしい。
ロランの顔を見た後、私の顔を見て驚いている。
「ああ、お前さんたちが来る前にと思ってギルドには他の者を報告に行かせたんじゃ。お2人さんは怪我はなかったとはいえ、疲れていると思ってな」
「‥‥で、ここでお茶していたと」
「そうだ。助けてもらったのにお礼の一つも出来ないなんて、嫌だからのう」
副ギルド長は呑気な長老様の様子に頭を抱えている。
「状況は分かりました‥‥では、長老。この2人に詳しい話を聞きますので、街に向かいたいと思いますが‥‥」
「しょうがないのう。また皆さんこの村に来て下さいな、その時は歓迎しますぞ!」
その言葉で私たちは次の街に向かうことになったのだった。
ロランがアンナさんの事情を話してくれたので、アンナさんも着いていくことになった。
急いで来て欲しい、ということで村の馬を借りて行くことになる。
アンナさんもロランも私も、乗馬は問題ないようだ。
私たちが街に行くことを嫌がる村人を副ギルド長は宥め、また来ると約束して村を出る。
村人総出で見送ってくれたことは忘れないだろう。
今は先頭に副ギルド長、私、アンナさん、ロランの順で馬を走らせていた。
女性は危ないから、と気を使ってくれた様だ。
副ギルド長は気さくな方の様で、私に色々と声をかけてくれる。
今も質問されたので、答えている最中だ。
「ああ、シャルモンの街ご出身なのですね?」
「はい」
「シャルモンの街のギルド長には私もお世話になりました。すごく優しい方でしたね」
「そうですね」
先程から、「はい」「いいえ」「そうですね」しか言っていない気がする。
でも副ギルド長はペラペラと話しかけてくる。よく話が持つな、と1人で感心していただけだったが。
ーー実は副ギルド長が私に好意を寄せているから話しかけていることに、私は気づくことはなかった。
私が、変なところで感心している時。
後ろで馬を走らせていたロランは、眉間にシワを寄せて前を伺っていた。
私と副ギルド長が楽しげに(?)話している(様に見える)ので、余計にシワが寄っている。
アンナさんはそのことに気づいたらしく、危なくない程度に後ろを振り向いた。
「ロラン、シワが寄っているわよ?」
アンナさんは眉間を人差し指でトントン、と叩く。
それでロランは顔のことに気づいたらしい。眉間のシワはなくなった。
「何、嫉妬してるのよ」
「嫉妬って‥‥」
「あら?してないとでも?」
その言葉に黙るしか無いロラン。どこからどう見ても嫉妬してる様にしか見えないだろう。
そこで色々とロランから話を聞いていたアンナさんは思い至った様だ。
「そっか、セリーちゃんが男性と2人で話すところを見たことがなかった?だから嫉妬しちゃったのか」
図星である。下を向いてはいるが、耳まで赤くなっていることは確かだ。
「セリーちゃんは可愛いから、射止めておかないと攫われちゃうよ?」
「‥‥分かってる」
「ロランは本当にセリーちゃんのことが好きよね~羨ましい!」
「そりゃ、一目‥‥あ」
思わず突いて出てきた言葉に気づき、途中で止めるも、アンナさんには分かってしまったようだ。
「あらまぁ、ロランも隅に置けないね」
「‥‥ちっ」
「まあ、今嫉妬しているからって、セリーちゃんに当たるのだけはやめてよね?」
「‥‥分かってる」
アンナさんはロランを弄って楽しかったようだ。顔を前に戻している。
そこにはまだ話し続ける副ギルド長と、話だけ聞いている私の姿が。
「‥‥ちゃんと攫われない様に守ってよね?」
とアンナさんが呟いた声は誰の耳にも届くことは無かったのだった。
戻ってきたアンナと3人で、長老様の家でお茶をご馳走になっていた。
ワイバーンは私の収納魔法と、アンナさんの収納袋を使って回収をしておいた。
もちろん、長老様からのお願いである。
街が何事もなかった様に、生活を始めた頃。
お茶を頂いていた長老様の家に慌てて入ってくる足音がした。
「長老!ワイバーンは!どうなりまし‥‥た?」
焦って走ってきたのだろう。肩で息をし、目を赤くしながら叫んでいる。
金色の長い髪がフワッと揺れる。まだ若そうに見える男性だ。
だが、私たちの朗らかな様子に疑問を持ったのだろう。その勢いも長くは続かない
。
「おお、副ギルド長。もしかして送った者と入れ違いになったかのう?ワイバーンは倒されたよ」
はっはっは、と笑う長老様とポカン、と口を開けた副ギルド長が対照的だ。
だが、この村のために副ギルド長自らが駆けつけるなんて、なんとも勇ましい。
「どういう事か説明してもらえますか?」
「だから言った通りじゃ。このお2人がワイバーンを殲滅してくれた」
「‥‥2人で?」
私たちは副ギルド長に背を向けて座っていたので、今ここにいたことに気が付いたらしい。
ロランの顔を見た後、私の顔を見て驚いている。
「ああ、お前さんたちが来る前にと思ってギルドには他の者を報告に行かせたんじゃ。お2人さんは怪我はなかったとはいえ、疲れていると思ってな」
「‥‥で、ここでお茶していたと」
「そうだ。助けてもらったのにお礼の一つも出来ないなんて、嫌だからのう」
副ギルド長は呑気な長老様の様子に頭を抱えている。
「状況は分かりました‥‥では、長老。この2人に詳しい話を聞きますので、街に向かいたいと思いますが‥‥」
「しょうがないのう。また皆さんこの村に来て下さいな、その時は歓迎しますぞ!」
その言葉で私たちは次の街に向かうことになったのだった。
ロランがアンナさんの事情を話してくれたので、アンナさんも着いていくことになった。
急いで来て欲しい、ということで村の馬を借りて行くことになる。
アンナさんもロランも私も、乗馬は問題ないようだ。
私たちが街に行くことを嫌がる村人を副ギルド長は宥め、また来ると約束して村を出る。
村人総出で見送ってくれたことは忘れないだろう。
今は先頭に副ギルド長、私、アンナさん、ロランの順で馬を走らせていた。
女性は危ないから、と気を使ってくれた様だ。
副ギルド長は気さくな方の様で、私に色々と声をかけてくれる。
今も質問されたので、答えている最中だ。
「ああ、シャルモンの街ご出身なのですね?」
「はい」
「シャルモンの街のギルド長には私もお世話になりました。すごく優しい方でしたね」
「そうですね」
先程から、「はい」「いいえ」「そうですね」しか言っていない気がする。
でも副ギルド長はペラペラと話しかけてくる。よく話が持つな、と1人で感心していただけだったが。
ーー実は副ギルド長が私に好意を寄せているから話しかけていることに、私は気づくことはなかった。
私が、変なところで感心している時。
後ろで馬を走らせていたロランは、眉間にシワを寄せて前を伺っていた。
私と副ギルド長が楽しげに(?)話している(様に見える)ので、余計にシワが寄っている。
アンナさんはそのことに気づいたらしく、危なくない程度に後ろを振り向いた。
「ロラン、シワが寄っているわよ?」
アンナさんは眉間を人差し指でトントン、と叩く。
それでロランは顔のことに気づいたらしい。眉間のシワはなくなった。
「何、嫉妬してるのよ」
「嫉妬って‥‥」
「あら?してないとでも?」
その言葉に黙るしか無いロラン。どこからどう見ても嫉妬してる様にしか見えないだろう。
そこで色々とロランから話を聞いていたアンナさんは思い至った様だ。
「そっか、セリーちゃんが男性と2人で話すところを見たことがなかった?だから嫉妬しちゃったのか」
図星である。下を向いてはいるが、耳まで赤くなっていることは確かだ。
「セリーちゃんは可愛いから、射止めておかないと攫われちゃうよ?」
「‥‥分かってる」
「ロランは本当にセリーちゃんのことが好きよね~羨ましい!」
「そりゃ、一目‥‥あ」
思わず突いて出てきた言葉に気づき、途中で止めるも、アンナさんには分かってしまったようだ。
「あらまぁ、ロランも隅に置けないね」
「‥‥ちっ」
「まあ、今嫉妬しているからって、セリーちゃんに当たるのだけはやめてよね?」
「‥‥分かってる」
アンナさんはロランを弄って楽しかったようだ。顔を前に戻している。
そこにはまだ話し続ける副ギルド長と、話だけ聞いている私の姿が。
「‥‥ちゃんと攫われない様に守ってよね?」
とアンナさんが呟いた声は誰の耳にも届くことは無かったのだった。
51
お気に入りに追加
2,825
あなたにおすすめの小説
勇者パーティーハーレム!…の荷物番の俺の話
バナナ男さん
BL
突然異世界に召喚された普通の平凡アラサーおじさん< 山野 石郎 >改め【 イシ 】
世界を救う勇者とそれを支えし美少女戦士達の勇者パーティーの中・・俺の能力、ゼロ!あるのは訳の分からない< 覗く >という能力だけ。
これは、ちょっとしたおじさんイジメを受けながらもマイペースに旅に同行する荷物番のおじさんと、世界最強の力を持った勇者様のお話。
無気力、性格破綻勇者様 ✕ 平凡荷物番のおじさんのBLです。
不憫受けが書きたくて書いてみたのですが、少々意地悪な場面がありますので、どうかそういった表現が苦手なお方はご注意ください_○/|_ 土下座!

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…
しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。
高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。
数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。
そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…


言い逃げしたら5年後捕まった件について。
なるせ
BL
「ずっと、好きだよ。」
…長年ずっと一緒にいた幼馴染に告白をした。
もちろん、アイツがオレをそういう目で見てないのは百も承知だし、返事なんて求めてない。
ただ、これからはもう一緒にいないから…想いを伝えるぐらい、許してくれ。
そう思って告白したのが高校三年生の最後の登校日。……あれから5年経ったんだけど…
なんでアイツに馬乗りにされてるわけ!?
ーーーーー
美形×平凡っていいですよね、、、、
執着攻めと平凡受けの短編集
松本いさ
BL
執着攻めが平凡受けに執着し溺愛する、似たり寄ったりな話ばかり。
疲れたときに、さくっと読める安心安全のハッピーエンド設計です。
基本的に一話完結で、しばらくは毎週金曜の夜または土曜の朝に更新を予定しています(全20作)
変なαとΩに両脇を包囲されたβが、色々奪われながら頑張る話
ベポ田
BL
ヒトの性別が、雄と雌、さらにα、β、Ωの三種類のバース性に分類される世界。総人口の僅か5%しか存在しないαとΩは、フェロモンの分泌器官・受容体の発達度合いで、さらにI型、II型、Ⅲ型に分類される。
βである主人公・九条博人の通う私立帝高校高校は、αやΩ、さらにI型、II型が多く所属する伝統ある名門校だった。
そんな魔境のなかで、変なI型αとII型Ωに理不尽に執着されては、色々な物を奪われ、手に入れながら頑張る不憫なβの話。
イベントにて頒布予定の合同誌サンプルです。
3部構成のうち、1部まで公開予定です。
イラストは、漫画・イラスト担当のいぽいぽさんが描いたものです。
最新はTwitterに掲載しています。


兄たちが弟を可愛がりすぎです
クロユキ
BL
俺が風邪で寝ていた目が覚めたら異世界!?
メイド、王子って、俺も王子!?
おっと、俺の自己紹介忘れてた!俺の、名前は坂田春人高校二年、別世界にウィル王子の身体に入っていたんだ!兄王子に振り回されて、俺大丈夫か?!
涙脆く可愛い系に弱い春人の兄王子達に振り回され護衛騎士に迫って慌てていっもハラハラドキドキたまにはバカな事を言ったりとしている主人公春人の話を楽しんでくれたら嬉しいです。
1日の話しが長い物語です。
誤字脱字には気をつけてはいますが、余り気にしないよ~と言う方がいましたら嬉しいです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる