上 下
107 / 266
第2章 異世界でももふもふは正義!?

37

しおりを挟む
 日が完全に落ち暗くなった森で、パチパチと音を立てる火を囲んでみんなで夕食をとる。
 
「うわぁ、美味しいねぇ、久しぶりの魚うれしいなぁ」

 焼いた魚の身を野草で包んで口に運び、チェルノがほくほくとした笑みで言った。

「ほんと美味しいね、チェルノ」
「テメェの肉も美味ければ殺した後売れるだろうな。いくらになるか楽しみだ」

 横でにこやかに相槌を打つジェラルドに見向きもせず、笑顔のまま答えるチェルノの発言に俺は思わずむせた。

 な、なんで、美味しい食事の話からそんな血生臭い話に飛べるんだ!

 しかしさすがはジェラルドと言うべきか、殺害後の自分の話をされているというのに微塵もその優美な笑みが崩れることはない。

「えー、僕は余すことなくチェルノに食べて欲しいけどなぁ」
「テメェの肉を食べるなら馬糞を食った方がマシだこの糞野郎」
「チェルノそういう趣味があったんだね。僕は全く趣味ではないけどチェルノが好きなら今度のプレイで取り入れようか」
「その前にお前の頭の中に馬糞を取り入れてやるよこの糞以下野郎」
「ちょ、ちょっと食事中にクソクソ言うなよ!」

 食欲をこれでもかというくらい削ぎ落とすその会話に耐えきれず苦情の声を上げる。
 もちろん普段なら、この二人の不穏な会話には一切触れないが、今日はそうもいかない。だって、今日の夕食は特別なのだ。

「この魚はクロが獲ってきたんだからなっ。汚ぇ話しないでちゃんと味わって食えよ!」
「あはは~、そうだねぇ、クロちゃんありがとう~。というか、ソウシはもうすっかり親バカになってるね」
「うるさい」

 確かにモンペになっている感じは否めない。

 でもうちの可愛い天使が獲ってきたんだぞ! 汚い話でうちの子の収穫をけがすな!

「でもそっちのワンちゃんばっかり褒めてると、もう一匹のワンちゃんがさらに落ち込んじゃうよぉ」
「あー……」

 チェルノの言葉に、俺は焚き火から少し離れた所で体育座りをして膝に顔を埋めるもう一匹のワンちゃんをちらりと見遣る。その背中は言いようのない哀愁を帯びている。
 
「えっと……、ドゥーガルドもこっち来いよ。ドゥーガルドの獲ってくれた魚も美味しいぞ!」

 魚を刺した木の枝を手に持って、ドゥーガルドに声を掛ける。しかし全くこちらに振り向く気配はない。
 クロの獲った魚よりも大きい魚を獲ってくると宣言して川へ向かったドゥーガルドだったが、帰ってきた彼が手に持っていたのはししゃもくらいの大きさの魚が五匹だけだった。
 俺からしたら釣り竿もなく、あの夕方の薄暗い中よく獲れたなと感心するレベルなのだが、ドゥーガルドはすっかり落ち込んでいた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

獣人の里の仕置き小屋

真木
恋愛
ある狼獣人の里には、仕置き小屋というところがある。 獣人は愛情深く、その執着ゆえに伴侶が逃げ出すとき、獣人の夫が伴侶に仕置きをするところだ。 今夜もまた一人、里から出ようとして仕置き小屋に連れられてきた少女がいた。 仕置き小屋にあるものを見て、彼女は……。

後輩が二人がかりで、俺をどんどん責めてくるー快楽地獄だー

天知 カナイ
BL
イケメン後輩二人があやしく先輩に迫って、おいしくいただいちゃう話です。

変態村♂〜俺、やられます!〜

ゆきみまんじゅう
BL
地図から消えた村。 そこに肝試しに行った翔馬たち男3人。 暗闇から聞こえる不気味な足音、遠くから聞こえる笑い声。 必死に逃げる翔馬たちを救った村人に案内され、ある村へたどり着く。 その村は男しかおらず、翔馬たちが異変に気づく頃には、すでに囚われの身になってしまう。 果たして翔馬たちは、抱かれてしまう前に、村から脱出できるのだろうか?

強制結婚させられた相手がすきすぎる

よる
BL
ご感想をいただけたらめちゃくちゃ喜びます! ※妊娠表現、性行為の描写を含みます。

前後からの激しめ前立腺責め!

ミクリ21 (新)
BL
前立腺責め。

ヤンデレBL作品集

みるきぃ
BL
主にヤンデレ攻めを中心としたBL作品集となっています。

身体検査

RIKUTO
BL
次世代優生保護法。この世界の日本は、最適な遺伝子を残し、日本民族の優秀さを維持するとの目的で、 選ばれた青少年たちの体を徹底的に検査する。厳正な検査だというが、異常なほどに性器と排泄器の検査をするのである。それに選ばれたとある少年の全記録。

男子学園でエロい運動会!

ミクリ21 (新)
BL
エロい運動会の話。

処理中です...