上 下
106 / 266
第2章 異世界でももふもふは正義!?

36

しおりを挟む
「……えーっと、ドゥーガルドもよくたくさん果物を採ってきてくれたな。ありがとう」

 頭を撫でながらとりあえず礼を言う。
 腰を屈めてくれているので撫でやすくはあるが、自分より大きな男の頭を撫でるというのは何だか落ち着かない、というか違和感しかない。
 だが、ドゥーガルドには違和感は微塵もないようで、嬉しそうに頬を緩めている。
 しかし欲望というものは尽きないらしい。

「……もう一声」
「いや、なんでそこで値切りの常套句!?」
「……クロと同じくらい褒めて貰わないと満足できない」
「えー、面倒くせぇ……」

 だが満足しないとその頭を引きそうにない。それにこんなことでへそを曲げられた方が面倒なので、仕方なく賛辞の言葉を捻り出す。

「えっと、あんな美味しそうな果物見つけられてすごいなー。さすがだなー。尊敬するなー」

 ほぼ棒読みだが、それでもドゥーガルドは嬉しいようで、ぱたぱたと大きく揺れるあるはずのない尻尾まで見えてきた。

「……それから?」
「ええっ? まだ満足しないのかよ……。えっと、それから――」
「わふっ」

 いい加減、言葉が尽きてきたところで、クロが間に割り込んで、俺の腹にぐりぐりと頭をこすりつけてきた。
 まるでこっちも構えと甘いているようだ。

「ちょ、ちょっと、クロ、くすぐったいってば。ふふっ、お前は本当に甘えん坊だなぁ」
「わふっ」

 あまりの可愛いかまってちゃんに目尻を緩めてその頭を撫でると、クロは嬉しそうに一吠えした。

「……ソウシ、俺への褒美がまだ途中だが」

 クロと二人の世界に入った俺を引き戻すように、ドゥーガルドが若干不服気味に言った。

「えー、もういいだろ。あれだけしたら十分だ。はい、サービスタイム終了」
「……分かった。じゃあ今から魚を獲ってくる」
「何がどうなってそうなった!?」

 明らかに思考回路のどこかでバグが起こったに違いないと確信させるほどの唐突さだ。

「……ソウシは果物より魚が好きなのだろ。だからクロの方をたくさん褒めた。それなら魚を獲りに行くより他にない」
「いやいや、他にあるだろ! というか動物に対抗するな!」

 人間のプライドを持て!

 そして褒め方に差があるのは、果物より魚が好きなわけではなく、単にドゥーガルドよりクロが可愛いからということに他ならないのだが、どうしてそこに気付かないんだ……。

「……ソウシに一番頼られ褒められるのはこの俺だ。この座は他の誰にも譲れない」
「いや、今まで一瞬たりともその座にお前がいたことないけど!?」

 なんで人のケツを狙って警戒されている人間がそこまでの自信を持てるんだ!?
 この長年守ってきた王座は絶対誰にも渡さないって感じの王者の貫禄を醸し出すのはやめろ。

「……夕食までには戻ってくる」
「いや、もうここに夕食あるからいいって!」
「……それは他の奴らの夕食だ。ソウシの夕食は俺が獲ってくる。その雑魚よりも大きな魚をな」
「いやいや、このでかい魚より大きい魚を川で獲れるわけないだろ! というかもう暗くなるし……って、全然聞いてねぇ! ちょ、ちょっと待て! ハウス! ハウス!」

 俺は犬に言うようにして呼び止めたが、遠退くその勇み立った背中が止まることはなかった……。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

僕が玩具になった理由

Me-ya
BL
🈲R指定🈯 「俺のペットにしてやるよ」 眞司は僕を見下ろしながらそう言った。 🈲R指定🔞 ※この作品はフィクションです。 実在の人物、団体等とは一切関係ありません。 ※この小説は他の場所で書いていましたが、携帯が壊れてスマホに替えた時、小説を書いていた場所が分からなくなってしまいました😨 ので、ここで新しく書き直します…。 (他の場所でも、1カ所書いていますが…)

親友だと思ってた完璧幼馴染に執着されて監禁される平凡男子俺

toki
BL
エリート執着美形×平凡リーマン(幼馴染) ※監禁、無理矢理の要素があります。また、軽度ですが性的描写があります。 pixivでも同タイトルで投稿しています。 https://www.pixiv.net/users/3179376 もしよろしければ感想などいただけましたら大変励みになります✿ 感想(匿名)➡ https://odaibako.net/u/toki_doki_ Twitter➡ https://twitter.com/toki_doki109 素敵な表紙お借りしました! https://www.pixiv.net/artworks/98346398

ヤンデレBL作品集

みるきぃ
BL
主にヤンデレ攻めを中心としたBL作品集となっています。

3人の弟に逆らえない

ポメ
BL
優秀な3つ子に調教される兄の話です。 主人公:高校2年生の瑠璃 長男の嵐は活発な性格で運動神経抜群のワイルド男子。 次男の健二は大人しい性格で勉学が得意の清楚系王子。 三男の翔斗は無口だが機械に強く、研究オタクっぽい。黒髪で少し地味だがメガネを取ると意外とかっこいい? 3人とも高身長でルックスが良いと学校ではモテまくっている。 しかし、同時に超がつくブラコンとも言われているとか? そんな3つ子に溺愛される瑠璃の話。 調教・お仕置き・近親相姦が苦手な方はご注意くださいm(_ _)m

ヤンデレ化していた幼稚園ぶりの友人に食べられました

ミルク珈琲
BL
幼稚園の頃ずっと後ろを着いてきて、泣き虫だった男の子がいた。 「優ちゃんは絶対に僕のものにする♡」 ストーリーを分かりやすくするために少しだけ変更させて頂きましたm(_ _)m ・洸sideも投稿させて頂く予定です

【R18】元騎士団長(32)、弟子として育てていた第三王子(20)をヤンデレにしてしまう

夏琳トウ(明石唯加)
BL
かつて第三王子ヴィクトールの剣術の師をしていたラードルフはヴィクトールの20歳を祝うパーティーに招待された。 訳あって王都から足を遠ざけていたラードルフは知らない。 この日がヴィクトールの花嫁を選ぶ日であるということを。ヴィクトールが自身に重すぎる恋慕を向けているということを――。 ヤンデレ王子(20)×訳あり元騎士団長(32)の歪んだ師弟ラブ。 ■掲載先→アルファポリス、ムーンライトノベルズ

美形な幼馴染のヤンデレ過ぎる執着愛

月夜の晩に
BL
愛が過ぎてヤンデレになった攻めくんの話。 ※ホラーです

[R18] 転生したらおちんぽ牧場の牛さんになってました♡

ねねこ
BL
転生したら牛になってて、毎日おちんぽミルクを作ってます♡

処理中です...