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第2章 異世界でももふもふは正義!?
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「こらこら、人を噛んだらだめだろー。よしよし」
「よしよし、じゃねぇよ! というか、なんだその棒読みの注意は! 顔にいたっては笑ってるじゃねぇか!」
「いや、まぁ人は噛んだらだめだけど、今回は例外というか」
「例外なわけあるか! 捜索代に慰謝料と治療費も上乗せしてやる!」
「グルルルル……ッ」
やれるもんならやってみろと言わんばかりに唸るクロに、アーロンがカチンときたようで、また剣を鞘から抜いた。
「犬の分際でいい度胸じゃねぇか……。人間様の恐ろしさを思い知らせてやる」
「グルルルル……ッ」
「おい、こら待て待て! だからケンカはだめだって言っただろうが!」
互いに憎々しげに睨み合う二人の間に入った。何とか一触即発な場を納め、ようやく俺は服を着ることが出来た。
上はチェルノの服を借りて、久しぶりに全身布に包まれてほっと息を吐く。
やっぱり服は大事だよなぁ……。
「それじゃあソウシも見つかった事だし先を急ごう~」
着替え終えた俺にチェルノが言った。当然の流れなのだが、思わず言葉に詰まってしまった。
振り返ってクロを見ると、お座りをした状態で寂しげにこちらを見詰めている。
そうだよな、俺が行ったらまたひとりになっちゃうもんな……。
もちろん俺も元の世界に戻らないといけないのでここに居残ることはできない。
でもクロをひとり置いていくのはすごく躊躇われた。
俺はクロのもとに駆け寄り、そっとその体を撫でた。
「クロ、今までありがとうな。死なずにまた仲間と合流できたのもクロのおかげだ」
「わふっ」
ぱたぱたと尻尾を振ってクロが答える。
「クロをひとりにさせたくないけど、俺は帰る場所があるからここにはずっといれない」
「クゥン……」
涙声にすら思える悲しげな声でクロは鳴いて項垂れるように俯いた。その姿にひどく心を揺さぶられる。
「俺だってクロと離れたくない! ……だから、もし、クロが嫌じゃなければ一緒に来ないか?」
そう言うと、クロがバッと顔を上げた。
「おいおいおいおい、ちょっと待て!」
俺の提案に異を唱えたのは、部外者であるアーロンだった。
「なに荷物持ちの分際で俺の許可なくメンバー増やそうとしてんだ!」
「なんでお前の許可がいるんだよ」
「このパーティーの、いや世界の中心の俺に許可を得るのは当然のことだろ!」
「知るか!」
「俺は反対だからな! そんな野蛮な犬と一緒だなんて絶対に嫌だ」
「人を外で襲っておいてよく野蛮だとかいえるな……」
下半身の衝動のまま同じ男を襲う人間の方がよっぽど野蛮だ。この男の棚上げ力には本当に感心する。
「とにかく俺は絶対に反対だ」
「みんなはどう思う?」
腕を組んでそっぽ向き断固として反対の意見を貫き通すアーロンを無視して、俺はドゥーガルドたちに向き直った。
「……ソウシの意見に異論なんてない」
「僕も賛成~。賢そうだし、強そうだし、デメリットはなさそうだもんねぇ」
「僕もチェルノがそう言うなら賛成だよ」
満場一致を携えて、再びアーロンの方へ向いた。
「はい、四対一。これで文句ないだろ?」
「はぁ? 文句あるに決まってるだろ! そもそもお前らの意見は一人一票でも俺の意見は一人で百票くらいの力があるんだか――」
「クロはどうする?」
アーロンの自分勝手な意見など聞いている時間がもったいない。俺は完全にスルーしてクロの方を振り返った。
「わふっ!」
クロは尻尾を激しく振って、俺の周りをくるくると回り始めた。
答えは決まったようだ。
「よし、それじゃあ改めてよろしくな!」
「わふっ! わふっ!」
こうしてクロは晴れて――しばらくアーロンはぼやいていたが、旅の仲間に加わった。
「よしよし、じゃねぇよ! というか、なんだその棒読みの注意は! 顔にいたっては笑ってるじゃねぇか!」
「いや、まぁ人は噛んだらだめだけど、今回は例外というか」
「例外なわけあるか! 捜索代に慰謝料と治療費も上乗せしてやる!」
「グルルルル……ッ」
やれるもんならやってみろと言わんばかりに唸るクロに、アーロンがカチンときたようで、また剣を鞘から抜いた。
「犬の分際でいい度胸じゃねぇか……。人間様の恐ろしさを思い知らせてやる」
「グルルルル……ッ」
「おい、こら待て待て! だからケンカはだめだって言っただろうが!」
互いに憎々しげに睨み合う二人の間に入った。何とか一触即発な場を納め、ようやく俺は服を着ることが出来た。
上はチェルノの服を借りて、久しぶりに全身布に包まれてほっと息を吐く。
やっぱり服は大事だよなぁ……。
「それじゃあソウシも見つかった事だし先を急ごう~」
着替え終えた俺にチェルノが言った。当然の流れなのだが、思わず言葉に詰まってしまった。
振り返ってクロを見ると、お座りをした状態で寂しげにこちらを見詰めている。
そうだよな、俺が行ったらまたひとりになっちゃうもんな……。
もちろん俺も元の世界に戻らないといけないのでここに居残ることはできない。
でもクロをひとり置いていくのはすごく躊躇われた。
俺はクロのもとに駆け寄り、そっとその体を撫でた。
「クロ、今までありがとうな。死なずにまた仲間と合流できたのもクロのおかげだ」
「わふっ」
ぱたぱたと尻尾を振ってクロが答える。
「クロをひとりにさせたくないけど、俺は帰る場所があるからここにはずっといれない」
「クゥン……」
涙声にすら思える悲しげな声でクロは鳴いて項垂れるように俯いた。その姿にひどく心を揺さぶられる。
「俺だってクロと離れたくない! ……だから、もし、クロが嫌じゃなければ一緒に来ないか?」
そう言うと、クロがバッと顔を上げた。
「おいおいおいおい、ちょっと待て!」
俺の提案に異を唱えたのは、部外者であるアーロンだった。
「なに荷物持ちの分際で俺の許可なくメンバー増やそうとしてんだ!」
「なんでお前の許可がいるんだよ」
「このパーティーの、いや世界の中心の俺に許可を得るのは当然のことだろ!」
「知るか!」
「俺は反対だからな! そんな野蛮な犬と一緒だなんて絶対に嫌だ」
「人を外で襲っておいてよく野蛮だとかいえるな……」
下半身の衝動のまま同じ男を襲う人間の方がよっぽど野蛮だ。この男の棚上げ力には本当に感心する。
「とにかく俺は絶対に反対だ」
「みんなはどう思う?」
腕を組んでそっぽ向き断固として反対の意見を貫き通すアーロンを無視して、俺はドゥーガルドたちに向き直った。
「……ソウシの意見に異論なんてない」
「僕も賛成~。賢そうだし、強そうだし、デメリットはなさそうだもんねぇ」
「僕もチェルノがそう言うなら賛成だよ」
満場一致を携えて、再びアーロンの方へ向いた。
「はい、四対一。これで文句ないだろ?」
「はぁ? 文句あるに決まってるだろ! そもそもお前らの意見は一人一票でも俺の意見は一人で百票くらいの力があるんだか――」
「クロはどうする?」
アーロンの自分勝手な意見など聞いている時間がもったいない。俺は完全にスルーしてクロの方を振り返った。
「わふっ!」
クロは尻尾を激しく振って、俺の周りをくるくると回り始めた。
答えは決まったようだ。
「よし、それじゃあ改めてよろしくな!」
「わふっ! わふっ!」
こうしてクロは晴れて――しばらくアーロンはぼやいていたが、旅の仲間に加わった。
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