勇者様の荷物持ち〜こんなモテ期、望んでない!〜

綺沙きさき(きさきさき)

文字の大きさ
上 下
70 / 266
番外編 剣士様の筆おろし

18

しおりを挟む
「テメェ、何がおかしい……っ!」

怒りでたぎった瞳をアーロンが向けるが、それをドゥーガルドは鼻で笑って吹き飛ばした。

「……いや。散々人を童貞だの何だの馬鹿にしていたお前がそんな状態になるとはと思ってな。しかしこれで決まったな」
「何がだよ」

険しく眉間に皺を寄せるアーロンから、ドゥーガルドは俺をひょいと抱き抱えて奪った。

「……不全になったお前にソウシは抱けない。つまりソウシは俺のものだ」

とても数時間前まで童貞だった男とは思えない不適な笑みを浮かべてドゥーガルドは言い放った。

「いやいやいや! なにその短絡的思考!? つーか、なんで選択肢がアーロンとドゥーガルドしかないんだよ!」
「……ソウシ、まさか他の男に抱かれたいのか?」
「なんで選択肢が男オンリーなんだよ!」

狂ってやがる!

「え? お前まさかあの小せぇチンコで女を抱く気でいるのか? あはは、ありえねぇ~」

露骨にナイーブな部分を馬鹿にされ俺はキッと目尻をつり上げアーロンの方を振り返った。

「う、うるさい! このインポ野郎!」
「はぁ!? ふざけんなっ! てめぇのせいだろうが! さっさと呪いを解け!」
「だから呪いなんかかけてねぇって言ってんだろ!」
「じゃあ何でこの俺が勃たないんだよ!」
「知るか!」

全く、これじゃあ埒があかない。
ハァと大きくため息を吐くと、唐突にアーロンが俺の体をドゥーガルドから引き剥がした。
ドゥーガルドの眉間に不穏な皺が寄る。

「……アーロン、何をする。ソウシに気安く触るな」
「うるせぇ、一回しただけでデカい面すんな。とりあえず、原因解明のためこいつと今からヤる。邪魔すんな」
「……絶対させない」

怒りの波動を放つドゥーガルドが俺の腕を掴んで取り返そうとしたが、アーロンも力を緩めない。
二人の間でバチバチと火花が飛び散る。

「だから邪魔すんなって言ってんだろうが! この根暗ナイト気取り!」
「……邪魔なのはお前だ。ソウシを離せ。ソウシは今から俺と愛を育むんだ」
「勝手に夢の中で育んでろ! それで一人夢精しとけ、このむっつりロマンチスト! こいつは今から俺が種付けすんだよ!」

ギャアギャアと互いに悪態をつきながら俺の体を引っ張り合う奴らの間で、俺は呆然となっていた。

女の子のよさを分かってもらうために娼館に送り込んだというのに、なんでこいつら俺への執着をこじらせてんだ……?

一体どこで道を間違えたのか……。
俺は涙の滲む溜め息をこぼした。



騒ぎを聞きつけてチェルノが止めに来てくれたのは、もうしばらくしてのことだった。
しおりを挟む
感想 119

あなたにおすすめの小説

言い逃げしたら5年後捕まった件について。

なるせ
BL
 「ずっと、好きだよ。」 …長年ずっと一緒にいた幼馴染に告白をした。 もちろん、アイツがオレをそういう目で見てないのは百も承知だし、返事なんて求めてない。 ただ、これからはもう一緒にいないから…想いを伝えるぐらい、許してくれ。  そう思って告白したのが高校三年生の最後の登校日。……あれから5年経ったんだけど…  なんでアイツに馬乗りにされてるわけ!? ーーーーー 美形×平凡っていいですよね、、、、

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…

しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。 高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。 数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。 そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…

別れようと彼氏に言ったら泣いて懇願された挙げ句めっちゃ尽くされた

翡翠飾
BL
「い、いやだ、いや……。捨てないでっ、お願いぃ……。な、何でも!何でもするっ!金なら出すしっ、えっと、あ、ぱ、パシリになるから!」 そう言って涙を流しながら足元にすがり付くαである彼氏、霜月慧弥。ノリで告白されノリで了承したこの付き合いに、βである榊原伊織は頃合いかと別れを切り出したが、慧弥は何故か未練があるらしい。 チャライケメンα(尽くし体質)×物静かβ(尽くされ体質)の話。

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

転生したけど赤ちゃんの頃から運命に囲われてて鬱陶しい

翡翠飾
BL
普通に高校生として学校に通っていたはずだが、気が付いたら雨の中道端で動けなくなっていた。寒くて死にかけていたら、通りかかった馬車から降りてきた12歳くらいの美少年に拾われ、何やら大きい屋敷に連れていかれる。 それから温かいご飯食べさせてもらったり、お風呂に入れてもらったり、柔らかいベッドで寝かせてもらったり、撫でてもらったり、ボールとかもらったり、それを投げてもらったり───ん? 「え、俺何か、犬になってない?」 豹獣人の番大好き大公子(12)×ポメラニアン獣人転生者(1)の話。 ※どんどん年齢は上がっていきます。 ※設定が多く感じたのでオメガバースを無くしました。

堕とされた悪役令息

SEKISUI
BL
 転生したら恋い焦がれたあの人がいるゲームの世界だった  王子ルートのシナリオを成立させてあの人を確実手に入れる  それまであの人との関係を楽しむ主人公  

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

ヤンデレBL作品集

みるきぃ
BL
主にヤンデレ攻めを中心としたBL作品集となっています。

処理中です...