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第1章 異世界でも俺はこき使われる
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「……っ、ソウシ! よかった! 無事で!」
ドゥーガルドが大げさに言って抱きついてきた。
「っうぐ!」
く、苦しい……!
力強い抱擁に思わずカエルのような声が出た。
「あはは~! 本当に無事でよかったよ~! ……ところであの貝はどうしたのかな~?」
目が笑っていない笑顔でチェルノに詰め寄られたので、俺は「ひ!」と悲鳴を上げた。
「まぁまぁチェルノ、よかったじゃない。おかげで助かったわけだし」
「うるせぇこのド変態野郎。全てはテメェのせいだろうが。出せ。残りの蓄音貝を全部出せぇぇぇぇぇぇ!」
間に入ってきたジェラルドの胸ぐらを掴んでチェルノが激しく揺らすが、全く堪えている様子はなくジェラルドは恍惚が入り交じった笑みを浮かべている。
「おい、ソウシ」
振り向くとアーロンがじっとこちらを見ていた。
その顔にいつものニタニタした嫌な笑みなど微塵もなかった。
そんなアーロンなど初めてで戸惑っていると、
「お前、ケガはなかったか?」
「え?」
まさかアーロンに心配されるなど思ってもいなかったので、俺は目をしばたかせた。
するとすぐに答えない俺に苛立ったのか、眉をわずかに顰めて「だからケガはなかったかと聞いてるんだ」と今度は少し語気荒く言った。
「あ、うん、大丈夫! ほら元気!」
拳を握って意味不明な元気アピールをするとそこでようやくアーロンが「そうか」と微笑んだ。
今までに見たことのない穏やかな笑いで思わず目を丸くしていると、おもむろに奴が手を差し出した。
「じゃあ無事に助け出したってことでその謝礼、三万ピールな!」
守銭奴の下卑た笑みをニッカリと浮かべるアーロン。
やっぱりアーロンはアーロンだった……。
俺は思いきり顔をしかめた。
「はぁ!? ふざけんなっ! 何が無事助けただ! 絶対払うわけねぇだろ!」
「金で払えねぇなら仕方ねぇ。それなら体で払ってもらう」
「誰が払うかぁぁぁ! つーか、隙を作った俺にもっと感謝しやがれ!」
ぎゃあぎゃあとアーロンと騒いでいると、
「おい! 草司っ!」
怒りに満ちた声が響きわたって、心臓が凍りついた。
恐る恐る振り返ると、モンスターたちに両脇を支えられて立っている慶介がいた。
慶介の顔は苦悶で歪んでおり、その上をさらに怒りの朱色が噴き上がっていた。
「お前……っ、覚えておけよっ! そっちに行ったこと、次会った時に死ぬほど後悔させてやる! 上も下もぐちゃぐちゃに泣かせてやるからな!」
呪詛のような重い声でそう宣告すると、奴は空間に現れた闇の歪みの中へ消えていった。
他のモンスターもその中へ姿を消し、歪みが閉じたと同時に、グラグラと地面が揺れ始めた。
ガラガラと城がどんどん崩れていく。
ドゥーガルドが大げさに言って抱きついてきた。
「っうぐ!」
く、苦しい……!
力強い抱擁に思わずカエルのような声が出た。
「あはは~! 本当に無事でよかったよ~! ……ところであの貝はどうしたのかな~?」
目が笑っていない笑顔でチェルノに詰め寄られたので、俺は「ひ!」と悲鳴を上げた。
「まぁまぁチェルノ、よかったじゃない。おかげで助かったわけだし」
「うるせぇこのド変態野郎。全てはテメェのせいだろうが。出せ。残りの蓄音貝を全部出せぇぇぇぇぇぇ!」
間に入ってきたジェラルドの胸ぐらを掴んでチェルノが激しく揺らすが、全く堪えている様子はなくジェラルドは恍惚が入り交じった笑みを浮かべている。
「おい、ソウシ」
振り向くとアーロンがじっとこちらを見ていた。
その顔にいつものニタニタした嫌な笑みなど微塵もなかった。
そんなアーロンなど初めてで戸惑っていると、
「お前、ケガはなかったか?」
「え?」
まさかアーロンに心配されるなど思ってもいなかったので、俺は目をしばたかせた。
するとすぐに答えない俺に苛立ったのか、眉をわずかに顰めて「だからケガはなかったかと聞いてるんだ」と今度は少し語気荒く言った。
「あ、うん、大丈夫! ほら元気!」
拳を握って意味不明な元気アピールをするとそこでようやくアーロンが「そうか」と微笑んだ。
今までに見たことのない穏やかな笑いで思わず目を丸くしていると、おもむろに奴が手を差し出した。
「じゃあ無事に助け出したってことでその謝礼、三万ピールな!」
守銭奴の下卑た笑みをニッカリと浮かべるアーロン。
やっぱりアーロンはアーロンだった……。
俺は思いきり顔をしかめた。
「はぁ!? ふざけんなっ! 何が無事助けただ! 絶対払うわけねぇだろ!」
「金で払えねぇなら仕方ねぇ。それなら体で払ってもらう」
「誰が払うかぁぁぁ! つーか、隙を作った俺にもっと感謝しやがれ!」
ぎゃあぎゃあとアーロンと騒いでいると、
「おい! 草司っ!」
怒りに満ちた声が響きわたって、心臓が凍りついた。
恐る恐る振り返ると、モンスターたちに両脇を支えられて立っている慶介がいた。
慶介の顔は苦悶で歪んでおり、その上をさらに怒りの朱色が噴き上がっていた。
「お前……っ、覚えておけよっ! そっちに行ったこと、次会った時に死ぬほど後悔させてやる! 上も下もぐちゃぐちゃに泣かせてやるからな!」
呪詛のような重い声でそう宣告すると、奴は空間に現れた闇の歪みの中へ消えていった。
他のモンスターもその中へ姿を消し、歪みが閉じたと同時に、グラグラと地面が揺れ始めた。
ガラガラと城がどんどん崩れていく。
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