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第1章 異世界でも俺はこき使われる
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俺は背中の荷物を慶介にバレないようこっそり探った。
幸いにも、周りの激しい戦いの音のおかげで奴に気づかれることはなかった。
だが、荷物の中に入っているのは、干し肉や水などの食料などばかりで、出発前に断捨離した自分を呪った。
こんなことなら置いていくんじゃなかった……!
半ば諦めながら探っていると、手の先に固いものが触れた。
取り出すと、それは蓄音貝だった。
そういえばチェルノが蓄音貝を破壊した後、ジェラルドが「これ、内緒ね」と怖い笑みで言って、こっそり入れたのだった。
恐らく、チェルノにばれることを予期していくつか隠し持っていたのだろう。
その時は、傍迷惑な荷物を増やさないでくれとげんなりしていたが、今はそれが砂漠の中で見つけた水のように有り難いものに見えた。
蓄音貝が割れた時、アーロンがチェルノの俺の喘ぎ声とチェルノのそれが似ていると言っていた。
そして、認めたくない事実だが、慶介は俺に対して異常な執着心を持っている。
そこにこの蓄音貝を使えば、多少なりとも奴を動揺させることはできるのではないか。
もちろん火に油を注ぐ結果になる可能性もあるけれど……。
でも……。
苦戦するみんなの様子を見る。
……このまま待っていても負けてしまう。
それなら一か八かでやってみよう……っ!
俺は蓄音貝をぎゅっと握りしめた。
そして、
「うぉぉぉぉ!」
慶介の足下をめがけて蓄音貝を投げつけた。
パリン、と悲鳴のような音が飛び散ったと同時に、甲高い喘ぎ声が辺りに響きわたった。
場違いで、しかも強烈なその声に、敵味方関係なくそこにいる者すべてが動きを止めた。
慶介は目を見開いて、割れた貝殻を凝視している。
すると、俺の読み通り、慶介の手中の玉が灯火が風で揺れるように歪み萎びた。
「うがぁ……っ」
玉と同調して、魔王もその場にガクンと膝をついた。
その隙をアーロンとドゥーガルドが見逃すはずがなかった。
二本の刃が魔王の体を貫く。
「がぁぁぁぁぁぁ……っ!」
最後の力を振り絞るような声で叫んで、魔王はそのまま倒れてしまった。
「……っ!」
魔王が床に伏したと同時に、慶介も膝から崩れた。
どうやら魔王の食らったダメージが慶介の体にも襲ったようだ。
反射的に慶介の元に駆け寄ろうとしたが、
「ソウシ!」
アーロンとドゥーガルドに呼び止められて、ハッとした。
そうだ、いくら幼なじみだろうと、良心が痛もうとも、コイツに近寄ったらだめだ。
もし近づいたら……、考えるだけでもぞっとする。
俺はゆっくり後ずさり、慶介から少し距離を置いたところで猛ダッシュでみんなのもとに駆けて行った。
背後に突き刺さる視線を感じたが、目をつむって気づかない振りをした。
幸いにも、周りの激しい戦いの音のおかげで奴に気づかれることはなかった。
だが、荷物の中に入っているのは、干し肉や水などの食料などばかりで、出発前に断捨離した自分を呪った。
こんなことなら置いていくんじゃなかった……!
半ば諦めながら探っていると、手の先に固いものが触れた。
取り出すと、それは蓄音貝だった。
そういえばチェルノが蓄音貝を破壊した後、ジェラルドが「これ、内緒ね」と怖い笑みで言って、こっそり入れたのだった。
恐らく、チェルノにばれることを予期していくつか隠し持っていたのだろう。
その時は、傍迷惑な荷物を増やさないでくれとげんなりしていたが、今はそれが砂漠の中で見つけた水のように有り難いものに見えた。
蓄音貝が割れた時、アーロンがチェルノの俺の喘ぎ声とチェルノのそれが似ていると言っていた。
そして、認めたくない事実だが、慶介は俺に対して異常な執着心を持っている。
そこにこの蓄音貝を使えば、多少なりとも奴を動揺させることはできるのではないか。
もちろん火に油を注ぐ結果になる可能性もあるけれど……。
でも……。
苦戦するみんなの様子を見る。
……このまま待っていても負けてしまう。
それなら一か八かでやってみよう……っ!
俺は蓄音貝をぎゅっと握りしめた。
そして、
「うぉぉぉぉ!」
慶介の足下をめがけて蓄音貝を投げつけた。
パリン、と悲鳴のような音が飛び散ったと同時に、甲高い喘ぎ声が辺りに響きわたった。
場違いで、しかも強烈なその声に、敵味方関係なくそこにいる者すべてが動きを止めた。
慶介は目を見開いて、割れた貝殻を凝視している。
すると、俺の読み通り、慶介の手中の玉が灯火が風で揺れるように歪み萎びた。
「うがぁ……っ」
玉と同調して、魔王もその場にガクンと膝をついた。
その隙をアーロンとドゥーガルドが見逃すはずがなかった。
二本の刃が魔王の体を貫く。
「がぁぁぁぁぁぁ……っ!」
最後の力を振り絞るような声で叫んで、魔王はそのまま倒れてしまった。
「……っ!」
魔王が床に伏したと同時に、慶介も膝から崩れた。
どうやら魔王の食らったダメージが慶介の体にも襲ったようだ。
反射的に慶介の元に駆け寄ろうとしたが、
「ソウシ!」
アーロンとドゥーガルドに呼び止められて、ハッとした。
そうだ、いくら幼なじみだろうと、良心が痛もうとも、コイツに近寄ったらだめだ。
もし近づいたら……、考えるだけでもぞっとする。
俺はゆっくり後ずさり、慶介から少し距離を置いたところで猛ダッシュでみんなのもとに駆けて行った。
背後に突き刺さる視線を感じたが、目をつむって気づかない振りをした。
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