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第1章 異世界でも俺はこき使われる
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どんだけクズ!?
どんだけマイペース!?
もういっそ一人で旅しろと言いたくなるほどの協調性と情のなさだ。
「仲間のピンチに駆けつけないってお前、どんだけクズなんだ!」
「うるせぇな。みんなで行っても無駄に体力消費するだけだろう。もしまたすぐにモンスターが現れたらどうする? 一人は体力温存しておいた方が効率的だろ」
「出たよ! お前のそういう正論っぽいこと言って自分のなまけを正当化するところ!」
「正論っぽいじゃない。正論だ」
石のように動かないアーロンに歯噛みしていると、去り際のドゥーガルドの言葉を思い出した。
俺は一か八かその言葉を口にしてみた。
「……へぇ、じゃあ留守番でいいんだな。あ~あ~せっかく金になりそうなモンスターだってドゥーガルドが言っていたのに」
金という言葉に反応してアーロンが素早く振り返った。
「は!? 今何て言った!」
「え……だから金になりそうなモンスターだって……」
「それを早く言え!」
露骨な食いつき具合に引いている俺など気にせず、アーロンは俊敏に立ち上がった。
「よし、みんな行くぞ! トロトロするな! 走れ!」
さっきまで寝転がっていたのが嘘のように先陣を切って走り出すアーロンに俺はもはや溜め息を吐く力すら失っていた。
ドゥーガルドとモンスターの戦いは、依然として膠着状態だった。
モンスターが降り下ろす蔦をドゥーガルドが薙ぎ払うが、蔦はすぐに再生してまた猛攻を繰り出す、という繰り返しだった。
「おお! 淫食花(いんしょくか)じゃねぇか!」
「いんしょくか? なんだそれ?」
仲間の窮地を目の当たりにした反応とは到底思えない声のアーロンに眉をしかめながら訊いた。
「植物型のモンスターで、雌しべの奥部分にある蜜が媚薬として高く売れるんだよ。うわぁ、マジでラッキー!」
奴の目は完全に金の亡者そのものだった。
「ふぅん、媚薬か……」
「ジェラルド! 顔がえらいことなってる!」
今まで見てきた爽やかな笑みなど幻だったかのように、えげつないほどの悪い笑みを浮かべるジェラルドに思わず突っ込む。
「媚薬……怖い……びやく、こわい……」
「チェルノ!? 大丈夫か!?」
隣でチェルノが顔を真っ青にしてガクガクと体を震わしている。
「あぁ! チェルノ、心配しないで! 次はちゃんと媚薬なんか使わず同意でやるから安心して!」
ほぼ意識がないような状態でぶつぶつと呟き続けるチェルノにジェラルドが抱きついた途端、チェルノの体から光と突風が放たれた。
光に目をつぶされた俺たちが次に目を開けると、そこにはバチバチと電気を纏った大きな白い繭があった。
突然のことに目をしばたかせていると、
「テメェ、またチェルノが引きこもってしまったじゃねぇか! トラウマを刺激するのもいい加減にしろよな!」
「ふふ、チェルノったらあの日のこと思い出して恥ずかしくなったのかな」
吠えるアーロンなど意に介さずうっとりと愛おしげに繭を見つめるジェラルド。
こいつら一体なにがあったんだ!?
どんだけマイペース!?
もういっそ一人で旅しろと言いたくなるほどの協調性と情のなさだ。
「仲間のピンチに駆けつけないってお前、どんだけクズなんだ!」
「うるせぇな。みんなで行っても無駄に体力消費するだけだろう。もしまたすぐにモンスターが現れたらどうする? 一人は体力温存しておいた方が効率的だろ」
「出たよ! お前のそういう正論っぽいこと言って自分のなまけを正当化するところ!」
「正論っぽいじゃない。正論だ」
石のように動かないアーロンに歯噛みしていると、去り際のドゥーガルドの言葉を思い出した。
俺は一か八かその言葉を口にしてみた。
「……へぇ、じゃあ留守番でいいんだな。あ~あ~せっかく金になりそうなモンスターだってドゥーガルドが言っていたのに」
金という言葉に反応してアーロンが素早く振り返った。
「は!? 今何て言った!」
「え……だから金になりそうなモンスターだって……」
「それを早く言え!」
露骨な食いつき具合に引いている俺など気にせず、アーロンは俊敏に立ち上がった。
「よし、みんな行くぞ! トロトロするな! 走れ!」
さっきまで寝転がっていたのが嘘のように先陣を切って走り出すアーロンに俺はもはや溜め息を吐く力すら失っていた。
ドゥーガルドとモンスターの戦いは、依然として膠着状態だった。
モンスターが降り下ろす蔦をドゥーガルドが薙ぎ払うが、蔦はすぐに再生してまた猛攻を繰り出す、という繰り返しだった。
「おお! 淫食花(いんしょくか)じゃねぇか!」
「いんしょくか? なんだそれ?」
仲間の窮地を目の当たりにした反応とは到底思えない声のアーロンに眉をしかめながら訊いた。
「植物型のモンスターで、雌しべの奥部分にある蜜が媚薬として高く売れるんだよ。うわぁ、マジでラッキー!」
奴の目は完全に金の亡者そのものだった。
「ふぅん、媚薬か……」
「ジェラルド! 顔がえらいことなってる!」
今まで見てきた爽やかな笑みなど幻だったかのように、えげつないほどの悪い笑みを浮かべるジェラルドに思わず突っ込む。
「媚薬……怖い……びやく、こわい……」
「チェルノ!? 大丈夫か!?」
隣でチェルノが顔を真っ青にしてガクガクと体を震わしている。
「あぁ! チェルノ、心配しないで! 次はちゃんと媚薬なんか使わず同意でやるから安心して!」
ほぼ意識がないような状態でぶつぶつと呟き続けるチェルノにジェラルドが抱きついた途端、チェルノの体から光と突風が放たれた。
光に目をつぶされた俺たちが次に目を開けると、そこにはバチバチと電気を纏った大きな白い繭があった。
突然のことに目をしばたかせていると、
「テメェ、またチェルノが引きこもってしまったじゃねぇか! トラウマを刺激するのもいい加減にしろよな!」
「ふふ、チェルノったらあの日のこと思い出して恥ずかしくなったのかな」
吠えるアーロンなど意に介さずうっとりと愛おしげに繭を見つめるジェラルド。
こいつら一体なにがあったんだ!?
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