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第1章 異世界でも俺はこき使われる
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ガサガサ……ガサガサガサガサ……--
気配と物音を大きくしながらどんどん迫ってくる何かに唾を飲み込む。
そしてその気配がほぼ実体と化したと同時に草むらからモンスターが現れた。
モンスターは植物型のもので、四方に蔦をうねうねと伸ばし、中心には人食い花のような大きな花が凶悪そうな口を開いている。
体長は優に俺の三倍は超えるくらいで、横幅も小屋程度はある。
中心から伸びた雄しべのようなものの先端には目玉がついていて、それらがぎょろりと俺たちの方へ向いた。
モンスターは刺々しく尖った鳴き声を上げると、蔦をムチのようにして俺たちの方へ振り上げた。
ドゥーガルドがすぐさま反応し振り下ろされた蔦を薙ぎ払った。
切り落とされた蔦は生き物のように地面でのたうった。
しかし、モンスターの蔦は何事もなかったようにまた再生した。
「……やっかいな奴だ」
ドゥーガルドが舌打ちをすると、俺の方へ振り向いた。
「……頼みがある。アーロンたちを呼びに行って欲しい。アーロンには金になりそうなモンスターがいると言ってくれ。俺はここでこいつの相手をしておく」
「わ、分かった!」
俺は怯む体と心を叱咤しながら何とか立ち上がり、アーロンたちの元に駆け出した。
俺は無我夢中で走った。
元の場所に戻ると、ドゥーガルドの激戦をよそに三人とも大きな木の下でぐったりと寝そべっていた。
本当にこれからこいつらに助けを求めていいのかと不安になるほどだらりと。
俺は助けを請うというよりも活を入れる意味合いで叫んだ。
「みんな! 寝てる場合じゃない! 向こうにモンスターが現れたんだ! 今ドゥーガルドが相手してるけどかなり苦戦してるんだ!」
「ドゥーガルドが~……?」
チェルノがのっそりと上半身を起こした。
「それはかなり手強そうだね~。面倒だな~」
「無理しなくていいよ。チェルノがケガでもしたら大変だ。ほら、僕が腕枕してあげるからまだ寝ていなよ」
「うるせぇもげてしまえそんな腕。ん~っと、それじゃあ助けに行かなきゃね~」
「ふふ、チェルノは本当に照れ屋なんだから」
ひと伸びするとチェルノはようやく立ち上がった。
ジェラルドも、辛辣な言葉を向けられた人間のものとは思えない爽やかな笑みを浮かべたまま起き上がった。
メンタル強いな……!
つーか、こんな緊急事態になぜみんなのんびり!?
俺の伝え方が悪いのか!?
仲間のピンチを伝えてもこのマイペースさ。
ある意味、見習いたいくらいだ。
「じゃあサッサと始末しといてくれ。俺はここでまだ体力回復しとくから」
「嘘だろ!?」
寝返りを打って俺たちに背を向けてヒラヒラと手を振るアーロンに俺は思わず叫んだ。
気配と物音を大きくしながらどんどん迫ってくる何かに唾を飲み込む。
そしてその気配がほぼ実体と化したと同時に草むらからモンスターが現れた。
モンスターは植物型のもので、四方に蔦をうねうねと伸ばし、中心には人食い花のような大きな花が凶悪そうな口を開いている。
体長は優に俺の三倍は超えるくらいで、横幅も小屋程度はある。
中心から伸びた雄しべのようなものの先端には目玉がついていて、それらがぎょろりと俺たちの方へ向いた。
モンスターは刺々しく尖った鳴き声を上げると、蔦をムチのようにして俺たちの方へ振り上げた。
ドゥーガルドがすぐさま反応し振り下ろされた蔦を薙ぎ払った。
切り落とされた蔦は生き物のように地面でのたうった。
しかし、モンスターの蔦は何事もなかったようにまた再生した。
「……やっかいな奴だ」
ドゥーガルドが舌打ちをすると、俺の方へ振り向いた。
「……頼みがある。アーロンたちを呼びに行って欲しい。アーロンには金になりそうなモンスターがいると言ってくれ。俺はここでこいつの相手をしておく」
「わ、分かった!」
俺は怯む体と心を叱咤しながら何とか立ち上がり、アーロンたちの元に駆け出した。
俺は無我夢中で走った。
元の場所に戻ると、ドゥーガルドの激戦をよそに三人とも大きな木の下でぐったりと寝そべっていた。
本当にこれからこいつらに助けを求めていいのかと不安になるほどだらりと。
俺は助けを請うというよりも活を入れる意味合いで叫んだ。
「みんな! 寝てる場合じゃない! 向こうにモンスターが現れたんだ! 今ドゥーガルドが相手してるけどかなり苦戦してるんだ!」
「ドゥーガルドが~……?」
チェルノがのっそりと上半身を起こした。
「それはかなり手強そうだね~。面倒だな~」
「無理しなくていいよ。チェルノがケガでもしたら大変だ。ほら、僕が腕枕してあげるからまだ寝ていなよ」
「うるせぇもげてしまえそんな腕。ん~っと、それじゃあ助けに行かなきゃね~」
「ふふ、チェルノは本当に照れ屋なんだから」
ひと伸びするとチェルノはようやく立ち上がった。
ジェラルドも、辛辣な言葉を向けられた人間のものとは思えない爽やかな笑みを浮かべたまま起き上がった。
メンタル強いな……!
つーか、こんな緊急事態になぜみんなのんびり!?
俺の伝え方が悪いのか!?
仲間のピンチを伝えてもこのマイペースさ。
ある意味、見習いたいくらいだ。
「じゃあサッサと始末しといてくれ。俺はここでまだ体力回復しとくから」
「嘘だろ!?」
寝返りを打って俺たちに背を向けてヒラヒラと手を振るアーロンに俺は思わず叫んだ。
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