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第1章 異世界でも俺はこき使われる
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そしてやって来たのが、この世界だ。
いやぁ、軽はずみに異世界に行きたいとか思ったらいけないね。
苦しみから逃げ出しても他の苦しみが待ち受けてるってよく言うもんね。
うん、分かった。
俺、もう逃げない。
神様、約束する。
元の世界に戻ったら慶介に立ち向かうよ!
……だから俺を早く元の世界に戻してくれーーーーっ!!!!
「ニンゲン、死ネ……!」
モンスターが斧を振り上げた。
避けるなんてそんな発想なかった。
そのくらい俺の頭は絶望一色に染められていた。
--お前、生きてて楽しいわけ?
走馬燈の代わりに慶介の最後の一言が頭を駆け巡った。
本当に、俺の人生つまんなかったな……。
目を瞑り全てを諦めて斧を受け入れる状態になっていたけれど、待てど待てども斧が俺を真っ二つにする気配がなかった。
恐る恐る目を開けると、モンスターは斧を振り上げた状態で固まっていた。
「……え?」
俺が目をパチパチさせていると、
「上物アイテムもらいぃぃぃ!」
ザシュ……!
誰かの叫びとともに、肉を剣で裂くような音が響いて、モンスターはそのまま前に、つまり俺に向かって倒れ始めた。
「え、え、ええええ!?」
避ける間もなく俺はモンスターの下敷きとなった。
舞い上がる土埃が口の中に入り、モンスターの体を伝って落ちてくる血が俺の服にじわじわと滲んだ。
「ひ……!」
早くここから抜け出そうともがいたが、ドン! と上から加わった重さと衝撃にさらに身動きがとれなくなった。
「ぐぇ……!」
「ハハハハ! ヤベぇ! 俺、やっぱり天才だな」
どうやら誰かがモンスターの上に乗りトドメを入れたようだ。
ソイツの声は浮かれきっていて、踏まれた蛙のような俺の呻き声は聞こえていないようだ。
「ちょっとぉ~、それはボクの制止魔法のおかげでしょ~」
少し離れたところから間延びした少し幼い感じの声がモンスターの上にいる男に反論した。
「そうだ、そうだ。全てはチェルノのおかげだ。調子に乗るなよ、アーロン」
「うるさい、黙れ。ボクの援護をするな。鬱陶しい」
好青年然とした声に、さっきの間延びした声とは打って変わって、鋭い剣呑な声で切り捨てる。
「はいはい、ご協力ありがとーございました。それじゃあこの斧は折半ってことで」
アーロンと呼ばれた男は、モンスターを蹴ってそこから飛び降りた。
モンスターと地面の隙間に人の足が見える。
きっとアーロンのものだろう。
俺は慌てて大きな声で叫んだ。
「た、助けてください……!」
男の足がピタリと止まった。
辺りを見渡すような間があったので「こ、ここです! モンスターの下です!」とさらに叫んだ。
男はしゃがみ込み、モンスターの下を覗き込んだ。
潰れる俺を見て目を見開いた。
いやぁ、軽はずみに異世界に行きたいとか思ったらいけないね。
苦しみから逃げ出しても他の苦しみが待ち受けてるってよく言うもんね。
うん、分かった。
俺、もう逃げない。
神様、約束する。
元の世界に戻ったら慶介に立ち向かうよ!
……だから俺を早く元の世界に戻してくれーーーーっ!!!!
「ニンゲン、死ネ……!」
モンスターが斧を振り上げた。
避けるなんてそんな発想なかった。
そのくらい俺の頭は絶望一色に染められていた。
--お前、生きてて楽しいわけ?
走馬燈の代わりに慶介の最後の一言が頭を駆け巡った。
本当に、俺の人生つまんなかったな……。
目を瞑り全てを諦めて斧を受け入れる状態になっていたけれど、待てど待てども斧が俺を真っ二つにする気配がなかった。
恐る恐る目を開けると、モンスターは斧を振り上げた状態で固まっていた。
「……え?」
俺が目をパチパチさせていると、
「上物アイテムもらいぃぃぃ!」
ザシュ……!
誰かの叫びとともに、肉を剣で裂くような音が響いて、モンスターはそのまま前に、つまり俺に向かって倒れ始めた。
「え、え、ええええ!?」
避ける間もなく俺はモンスターの下敷きとなった。
舞い上がる土埃が口の中に入り、モンスターの体を伝って落ちてくる血が俺の服にじわじわと滲んだ。
「ひ……!」
早くここから抜け出そうともがいたが、ドン! と上から加わった重さと衝撃にさらに身動きがとれなくなった。
「ぐぇ……!」
「ハハハハ! ヤベぇ! 俺、やっぱり天才だな」
どうやら誰かがモンスターの上に乗りトドメを入れたようだ。
ソイツの声は浮かれきっていて、踏まれた蛙のような俺の呻き声は聞こえていないようだ。
「ちょっとぉ~、それはボクの制止魔法のおかげでしょ~」
少し離れたところから間延びした少し幼い感じの声がモンスターの上にいる男に反論した。
「そうだ、そうだ。全てはチェルノのおかげだ。調子に乗るなよ、アーロン」
「うるさい、黙れ。ボクの援護をするな。鬱陶しい」
好青年然とした声に、さっきの間延びした声とは打って変わって、鋭い剣呑な声で切り捨てる。
「はいはい、ご協力ありがとーございました。それじゃあこの斧は折半ってことで」
アーロンと呼ばれた男は、モンスターを蹴ってそこから飛び降りた。
モンスターと地面の隙間に人の足が見える。
きっとアーロンのものだろう。
俺は慌てて大きな声で叫んだ。
「た、助けてください……!」
男の足がピタリと止まった。
辺りを見渡すような間があったので「こ、ここです! モンスターの下です!」とさらに叫んだ。
男はしゃがみ込み、モンスターの下を覗き込んだ。
潰れる俺を見て目を見開いた。
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