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『ひねくれ人気ミステリ作家×苦労性家政夫シリーズ』
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「だから、君は俺があげたものは着ないくせに、他の男から貰ったものは着る薄情者だなと言っているんだっ」
口調を荒らげる穂積さんだが、不思議と威圧的なものは感じなかった。むしろいじけた子どものように感じるから不思議だ。
「……えっと、あの、すみません」
らしくない態度に面食らってとりあえず謝ると、穂積さんはフン、と鼻を鳴らした。
「謝るなら早く着て来い」
「いや、あれは無理でしょ!」
俺は思わず突っ込んだ。
というのも、穂積さんがくれたものが俺でも知っているくらいの高級ブランドの服で、とてもこの仕事に着て来られるものじゃないのだ。
「人がせっかくやったというのに随分な口振りだな」
「せっかく頂いた高級なものだからこそ、こういう汚れやすい仕事では使えないんですよ」
ムッと鼻の頭に皺を寄せる穂積さんの神経を逆撫でないよう、慎重に下手に出て言葉を選ぶ。すると、少しだけ鼻の頭の皺が和らいだ。
「……ふぅん、なるほどな。確かに君のような貧乏人に突然あのような高級品をあげても使いどころがなく戸惑うだろうな。猿にパソコンを買い与えるようなものだな。俺の配慮が欠けていた、すまない」
ただ一言謝るだけでもこんなにも嫌味を付随させないといけないのかと呆れつつも、声の調子は幾分機嫌がよくなっており、俺の言葉が満更でもない様子だった。
「いや、あんないいものを頂いて感謝はしてるんですよ、本当に。あの服は今度どっかいい所に行く時に着させてもらいます」
「じゃあいつにする?」
「へ?」
思わず口から間抜けな声が漏れる。
「だから、出掛けるのはいつにするかと言ってるんだ。俺も幸い、今執筆している長編の目処は大方ついたところだ。今週末か来週なら連れて行ってやれる」
え? なんで一緒に出掛ける流れになってんの? 俺の頭の中にハテナマークが飛び交う。
穂積さんの言葉は、脈絡が全くないわけではない。だが、俺と穂積さんの間に二人で出掛けるような交友関係もない。
「……えっと、それは仕事の一環でということですか?」
奴隷、もとい小間使いとして外出に同伴させたいということだろうか。いや、そうとしか考えられなかった。
しかし穂積さんは不可解そうに眉を顰めた。
口調を荒らげる穂積さんだが、不思議と威圧的なものは感じなかった。むしろいじけた子どものように感じるから不思議だ。
「……えっと、あの、すみません」
らしくない態度に面食らってとりあえず謝ると、穂積さんはフン、と鼻を鳴らした。
「謝るなら早く着て来い」
「いや、あれは無理でしょ!」
俺は思わず突っ込んだ。
というのも、穂積さんがくれたものが俺でも知っているくらいの高級ブランドの服で、とてもこの仕事に着て来られるものじゃないのだ。
「人がせっかくやったというのに随分な口振りだな」
「せっかく頂いた高級なものだからこそ、こういう汚れやすい仕事では使えないんですよ」
ムッと鼻の頭に皺を寄せる穂積さんの神経を逆撫でないよう、慎重に下手に出て言葉を選ぶ。すると、少しだけ鼻の頭の皺が和らいだ。
「……ふぅん、なるほどな。確かに君のような貧乏人に突然あのような高級品をあげても使いどころがなく戸惑うだろうな。猿にパソコンを買い与えるようなものだな。俺の配慮が欠けていた、すまない」
ただ一言謝るだけでもこんなにも嫌味を付随させないといけないのかと呆れつつも、声の調子は幾分機嫌がよくなっており、俺の言葉が満更でもない様子だった。
「いや、あんないいものを頂いて感謝はしてるんですよ、本当に。あの服は今度どっかいい所に行く時に着させてもらいます」
「じゃあいつにする?」
「へ?」
思わず口から間抜けな声が漏れる。
「だから、出掛けるのはいつにするかと言ってるんだ。俺も幸い、今執筆している長編の目処は大方ついたところだ。今週末か来週なら連れて行ってやれる」
え? なんで一緒に出掛ける流れになってんの? 俺の頭の中にハテナマークが飛び交う。
穂積さんの言葉は、脈絡が全くないわけではない。だが、俺と穂積さんの間に二人で出掛けるような交友関係もない。
「……えっと、それは仕事の一環でということですか?」
奴隷、もとい小間使いとして外出に同伴させたいということだろうか。いや、そうとしか考えられなかった。
しかし穂積さんは不可解そうに眉を顰めた。
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