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#1【日常】
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『40歳過ぎてそんなに恋愛小説ばっか読んで……悲しいな?』
眉間に皺を寄せ、私を憐れむような見下すような顔で言ってくる。
仕事を終え、夕食とお風呂も済ませ、1日の終わりに酒飲みしながらスマホで恋愛小説を読み漁るアラフォーに向かって、今日もあいつは容赦ない。
疑問系のようなイントネーションで言って来たが、『悲しくないか』ではなく『悲しいな』という断定で言って来るところにあいつの棘を感じる。
「現実が枯れ果ててるんでね。2次元でトキメキ補給してるの。」
スマホから目線を外さずに私は答えた。
しがないバツイチの事務派遣に出会いなんてない。単調な毎日にトキメキスパイスくらい求めてもいいじゃないか。
『トキメキって…好きだなー〈異世界〉系』
そう!私は40歳過ぎにして〈異世界恋愛〉小説にだだハマっている。
「そうそう、現実を生きるのが辛いから、異世界恋愛に逃げてるの。」
淡々とした口調で私はそう告げる。
『ふっ、それは潔いというのか?』
と、口角を少しあげ、見下したような目線で言ってくる。『本当は現実世界でも夢見たいけど、見れないだけだろ?』とでも言いたげな顔だ(私の被害妄想かもしれないが)。とにかく……ムカつく。
「設定が〈現実世界〉ってだけで、シラけるんだよね、どうしても現実と重ねて見ちゃうからね……………で、共感できない。」
だってそうだろう、そもそも出会いなんてない。毎日、家と会社の往復だ。それに最近はテレワークも増えている。一歩も外に出ない日だって数日続くこともある。他人と出会うどころか、良い感じの出会いなんてあるわけがない。
『可哀想だな』
何故か勝ち誇ったかのように口元を緩め、目を細めて言って来た。思わず私は、
「チッ」
舌打ちした。しばらく沈黙が続く。私は読んでいた小説に意識を向ける。
———————
『そもそも〈異世界〉って何だよ?』
しばらく続いた沈黙の後、あいつがまた話題をふって来た。何だかんだと暇なあいつは私が面倒くさいと会話を拒絶(完全無視)するせいか、私が好きな話題で会話を続けることにしたようだ。
「ゲーム世界とか?転生?とか?…とりあえず現実世界と違う設定の世界?的な?」
まぁ、好きと言っても最近ハマって読み出したばかり。今までゲームをすることもなく、恋愛小説を読むこともあまりなかったのでイマイチ…というか、正確なことは私もよく分かってはいない。そして、わざわざそれを調べる気もない。
スマホから目線を外し、あいつに向かってそう告げる。
『知識、あやふや過ぎだろ』
呆れたように眉間に皺を寄せたかと思うと、『適当な奴だな』と、今度は眉尻を下げて笑い出した。
吸い込まれるような瞳が細まり、その輝きを増す。芸術品のように整った顔のパーツの位置が崩れる。崩れるとは言っても、更に魅力を増す場所に収まるだけのようだ。思わず息を呑む。あいつの笑顔はもはや凶器だろう。
「UMA(ユーマ)みたいなあやふやな生物に言われたくないね。」
陶器のような白く美しい肌に、スッと通った鼻筋、ふさふさのまつ毛にパッチリとした瞳…ひとつの芸術作品のように恐ろしく整った顔は中性的で柔和な印象を受けるが、そこに月の光のような白金の髪と、輝く月のような金色の瞳がこの世のものとは思えない神秘性を持たせている。
羽を広げてふわりと浮いているあいつの体長はおよそ6センチ程。
そう、あいつはUMA=未確認生物だ。
眉間に皺を寄せ、私を憐れむような見下すような顔で言ってくる。
仕事を終え、夕食とお風呂も済ませ、1日の終わりに酒飲みしながらスマホで恋愛小説を読み漁るアラフォーに向かって、今日もあいつは容赦ない。
疑問系のようなイントネーションで言って来たが、『悲しくないか』ではなく『悲しいな』という断定で言って来るところにあいつの棘を感じる。
「現実が枯れ果ててるんでね。2次元でトキメキ補給してるの。」
スマホから目線を外さずに私は答えた。
しがないバツイチの事務派遣に出会いなんてない。単調な毎日にトキメキスパイスくらい求めてもいいじゃないか。
『トキメキって…好きだなー〈異世界〉系』
そう!私は40歳過ぎにして〈異世界恋愛〉小説にだだハマっている。
「そうそう、現実を生きるのが辛いから、異世界恋愛に逃げてるの。」
淡々とした口調で私はそう告げる。
『ふっ、それは潔いというのか?』
と、口角を少しあげ、見下したような目線で言ってくる。『本当は現実世界でも夢見たいけど、見れないだけだろ?』とでも言いたげな顔だ(私の被害妄想かもしれないが)。とにかく……ムカつく。
「設定が〈現実世界〉ってだけで、シラけるんだよね、どうしても現実と重ねて見ちゃうからね……………で、共感できない。」
だってそうだろう、そもそも出会いなんてない。毎日、家と会社の往復だ。それに最近はテレワークも増えている。一歩も外に出ない日だって数日続くこともある。他人と出会うどころか、良い感じの出会いなんてあるわけがない。
『可哀想だな』
何故か勝ち誇ったかのように口元を緩め、目を細めて言って来た。思わず私は、
「チッ」
舌打ちした。しばらく沈黙が続く。私は読んでいた小説に意識を向ける。
———————
『そもそも〈異世界〉って何だよ?』
しばらく続いた沈黙の後、あいつがまた話題をふって来た。何だかんだと暇なあいつは私が面倒くさいと会話を拒絶(完全無視)するせいか、私が好きな話題で会話を続けることにしたようだ。
「ゲーム世界とか?転生?とか?…とりあえず現実世界と違う設定の世界?的な?」
まぁ、好きと言っても最近ハマって読み出したばかり。今までゲームをすることもなく、恋愛小説を読むこともあまりなかったのでイマイチ…というか、正確なことは私もよく分かってはいない。そして、わざわざそれを調べる気もない。
スマホから目線を外し、あいつに向かってそう告げる。
『知識、あやふや過ぎだろ』
呆れたように眉間に皺を寄せたかと思うと、『適当な奴だな』と、今度は眉尻を下げて笑い出した。
吸い込まれるような瞳が細まり、その輝きを増す。芸術品のように整った顔のパーツの位置が崩れる。崩れるとは言っても、更に魅力を増す場所に収まるだけのようだ。思わず息を呑む。あいつの笑顔はもはや凶器だろう。
「UMA(ユーマ)みたいなあやふやな生物に言われたくないね。」
陶器のような白く美しい肌に、スッと通った鼻筋、ふさふさのまつ毛にパッチリとした瞳…ひとつの芸術作品のように恐ろしく整った顔は中性的で柔和な印象を受けるが、そこに月の光のような白金の髪と、輝く月のような金色の瞳がこの世のものとは思えない神秘性を持たせている。
羽を広げてふわりと浮いているあいつの体長はおよそ6センチ程。
そう、あいつはUMA=未確認生物だ。
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