異世界転生する事になったけど、必死に努力する自前の精神力しか頼れるものはありませんでした。

SAKI

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在ったかもしれない別の可能性

英雄達の戦い

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 話をしよう。
 あれは今から......5年、いや6年前だったか......まぁいい。
 君達にとってはこれから語り聞かされる話だ。

 英雄バルクホーンの第1子が女であった事は瞬く間に王都中に知れ渡った。
 騎士王国アゲートを代表する最強の英雄バルクホーンの子供なのだ、生まれて直ぐ見合いの話まで持ち上がり、国王までが我が息子と結び付けようと画策するほどであった。

 「旦那様、ケイティアが可愛いのは分かるのですが、あの子も貴族の娘として生まれた身です。いつまでも婚約相手を決めない訳には」
 「駄目だ!ブルーム王のご子息であらせられるユーファ様はまだ5歳だ。それに武に優れているかはまだ分からぬではないか!我が血統は王国の剣であり盾で無ければならんのだ!」
 「それではアルム公爵閣下のご子息サードニクス様ならば実力もあり、家格も同格の公爵家で御座いますが」
 「いっかーん!!サードニクスの糞餓鬼はもう28だぞ?ケイが14歳になる頃には34だ!俺の可愛いケイが中年オヤジの手篭めにされるかと思ったらアルム家をぶっ潰してしまいそうだ!」

 我が娘可愛さに発狂するバルクホーンだが、8歳になるケイティアはマリーベル譲りである美貌の片鱗を見せており、祖父からの遺伝なのか漆黒の艶やかな髪、バルクホーンと同じ青い瞳、マリーベルの若い頃を彷彿とさせる優しい笑顔を見せられてはそれも仕方が無いか。

 「陛下の前で嫁に出すなら14歳と宣言したのだ!それまではどこの馬の骨かも分からん。いや、分かるが俺よりも弱いだろう軟弱筋肉には一目見せる事も許せん!」
 「ご長男のセージナイト様の見合いは即決したではありませんか。旦那様も覚悟を決められては」
 「男はどうでも良いのだ!男は!ブルーム王の長女たるミーティア様が降嫁されると言うのだ。受けて当然であろう。それに、ミーティア様は細剣の腕も超一級だ。容姿も素晴らしい!不足無いだろう?」

 さらりと流すバルクホーンに頭が痛くなるクラウスだったが、、マリーベルも納得しているのかセージナイトの件に関しては喜んでいたので仕方が無い。

 「旦那様よりもお強い武人など国内に存在しませんわ。ケイが行き遅れる事など無いと思いますが、早く良い縁談を纏めるのも親の務めでございますわ」
 「ならばケイと戦って打ち負かした者と婚約するのはどうだ。14歳までに俺が最強の嫁に育てて見せようではないか!」
 「旦那様?嫁に出す気が見えませんが......それにケイティア様の剣の腕前はまだ8歳だというのに剣術指南役を唸らせるほどではありませんか」

 そうなのである。
 女として生まれてしまった俺......いや、私だったが剣の道を諦めた訳ではないのだ。
 むしろ、動けるようになって直ぐに剣に興味を示すフリをしてバルクホーンに指南を願ったのだ。

 「おとうさま。これ好き」
 「む、剣か。我が娘ながら幼くして武の胎動を感じさせるとは......あい、分かった!」

 斧を得意武器にしているバルクホーンが教える事など出来るはずも無く、ならばとアゲート王国の剣術指南役を担いで来たのは記憶に新しい。
 何せ女に、まして『子供に剣を教える暇など無い』と突っぱねたケネス指南役を、肉体言語で納得させたバルクホーンが文字通り担いで連れて来たのだから。

 「だが、ケネスの奴を連れて来て良かったであろう。もう6年もすれば王国でも指折りの美少女剣士が誕生するだろう。いや、ケイの美しさと実力ならば周辺国にだって噂が轟くに違いない!俺は今確信した!」
 「はぁ、旦那様。ケイティア様には礼儀作法や閨事に関する勉強も」
 「必要無い!そんな物は見よう見まねで良いのだ!必要になった時に覚えさせれば良い。最低限の事はマリーが仕込んだであろう?」
 
 とまあ、万事こんな感じでお父様が盾となってくれているので、安心して剣に打ち込める毎日である。
 正直、全力を出せばケネス指南役も倒せるが、まだ8歳の娘に倒されては彼のメンツに関ってくるだろうし、この国の剣術にも興味があるのだ。
 辞められても困る。だから、日々鍛錬しながら上達する芝居を続けているのである。

 「お父様、私はお父様の様な方のお嫁さんになりたいです!」
 「ケーイ!そうであろう!それでこそ我が娘!いやぁ、やはり俺の目が青い内はそこらの有象無象にくれてやる訳にはいかんな!うわっははははははは!!」

 歴戦の英雄、ミンチメーカーとまで言われる王国最強武人が、娘にはデレデレとだらしのない顔を見せている等見せられるものでは無い......のだが、既に国中に知れ渡っている子煩悩のバルクホーンである。

 「ケイティア様がそうやってお父上を持ち上げるから縁談が決まらないのですが......このクラウスも戦場では【猛犬のクラウス】と呼ばれております。その類稀なる才能は得ようとして得られる物では無い事も理解しておりますぞ」
 「クラウスも強いもんね!私も強くなって戦うよ!」

 フンスと鼻息荒く、両手を胸の前で握り締める可憐な少女は、もう数年もすれば引く手数多の美貌を備えるのだろうと予感させるが、それをマリーベルもクラウスも心配しているのである。
 
 「見合いの手紙......100や200では収まりそうにありませんな。奥様」
 「ええ、クラウスには迷惑をかけるわね」
 「はぁっははははー!ほら、ケイ!グルグルグルー」
 「キャーーーー!」

 愛しい娘を持ち上げてグルグルと回る姿は、とても戦場で見せるオーガすら逃げ出す悪鬼とは思えぬ堕落っぷりであった。

 「ケイを守る為ならば、獅子王ガイウスだって俺は退けて見せるからなぁ!ははははは!」

 この翌年、騎士王国アゲートとインフィナイト王国は戦争に突入する事となる。
 緒戦は圧倒的有利を見せるアゲートだったが、豊富な人材と獅子王ガイウスの圧倒的な武力に押し返されていく事となる。
 【聖剣エスペランサ】を持った獅子王ガイウス、若き剣聖【ライオネル・アルベリオン】という最強の個人戦力に加えて、圧倒的な統率力で一糸乱れぬ軍団を指揮する辺境伯【アーネスト・ライト】が戦線を押し返し【旋風の牙】、【鉄鎖の絆】といった優れた庸兵団が遊撃軍として戦場を引っ掻き回すのである。 

 【神弓のセリオン】ことパトリック・セリオンと【死神バルクホーン】ことアルジェント・バルクホーンは死線を共に越えた親友である。
 元は2人とも庸兵上がりだったが、圧倒的な活躍に惚れたブルーム王が公爵家から嫁を出させて英雄に祭り上げたのが切っ掛けで国に仕える事となった。
 未だに平民風情がと陰口を叩く貴族も存在するが、彼等が居るからこそ他国も容易に侵攻して来ないのも事実であった。

 「殿は俺達に任せて逃げろ!今回の戦はアゲートの敗北だ!引け!引け!」
 「あーあ。神弓と死神の不敗神話もここまでか、せめてカーミラの奴がここに居ればな」
 「彼女は南方から魔物を使役して侵攻して来た魔族の対応に追われていた。早馬を飛ばしても明日に来れるかと言った所だろうさ」

 追撃される味方を逃がす為に立ち止まった2人は、唯一本陣へと繋がる小道に立ちふさがり敵の行く手を阻む。
 戦端が開かれてから何百人打ち倒したか覚えていない。疲弊する2人だったが、ここを抜かれてブルーム王が討ち取られるような事が有ってはならない。
 国が倒れるとまではいかないだろうが、次の王位を決めるまで国内が混乱する事は必死である。
 そうなれば最悪なら、王都まで攻め上がられる可能性すら存在するのだ。

 「あの似合わない無骨な仮面は止めたのか?疲れた顔が丸見えだぜ?」
 「言うな。アレはもう止めたのだ。俺には守る物が出来た。己を省みない鬼には戻らんよ」
 「ケイティアちゃんだったか?きっと良い女になるぜ?あの子はよ」
 「当然だ。俺とマリーの娘だからな」

 軽口を叩きながら笑いあう2人だったが、これから追撃してくるであろう敵軍は土煙がもうもうと上がるほどの大群だ。
 苦戦は必死であり、命を賭ける必要があるのは理解している。

 「こんな事ならマイラを思う存分抱いて、取って置きの酒を飲んでから戦場に来るんだったぜ」
 「ああ、お前には勿体無い器量良しの嫁さんだったな。ありゃ良い女だった」
 「だろう?流石に公爵令嬢ともなると物が違うぜ。安い娼婦なんかとは訳が違う」
 「それに、カーミラだって居るだろう?お前さんは娶るつもりだったんじゃないのか?」
 「あいつから聞いたのか......そうさ。勝負して打ち負かしたらって約束だったが、遂に俺が勝ってな」
 
 誇らしげに弓を引く動作をするセリオンは、流水の様に淀み無い動きで構えると放つ素振りをした。

 「【一矢六殺のカーミラ】も神弓には打ち負けたか、年貢の納め時ってやつだな」
 「戦場で相対する度に口説き続けたかいがあったよ。あの剛弓を避けるのはヒヤヒヤしたけどな」
 「斧に矢が刺さった時は俺も仰天したよ。化け物みたいな使い手がいるんだってな。何せ射手が見えない距離から打ってるのにアレだからな」
 「違ぇねえや。岩だろうが鉄だろうが貫いてくるからな」

 徐々に敵兵が近づいている中でも2人は変わらず話続けた。
 恐れるのは敵兵では無いのを彼らは知っているのだ。逃げ出そうとする自分自身を奮い立たせる事が出来る強者こそが、戦乱の世を生抜く事が出来る。

 「んじゃ......殺るか?」
 「おお。正面は任せておけ。騎兵だろうが何だろうが俺が止めてやる」
 「任せたぜ。まぁ、俺が的を外せばの話だがな。一矢たりとも外さねぇさ......狙い打つぜ」

 極限の集中状態に入ったセリオンには、目標が止まって見えた。
 外さない。外す訳が無い。外した事も無い。
 俺こそが神弓のセリオン......射抜けぬ物など無い!

 「そらよ!まずは曲射からだぜ?っと」

 迫る騎兵が通過する速度まで計算しつくされた矢が、次々と吸い込まれるように首へと突き刺さる。
 まさかの距離だ。矢が飛来する等とは欠片も予想していなかった彼らは一瞬で絶命した。

 10.20.30と放たれた矢は残らず必殺の一撃となり、インフィナイト兵の命を奪った。
 先鋒が射殺された事を知った彼らが盾を構えて突撃するが、その僅かに空いた隙間さえも貫き、針に糸を通すような精密な射撃が放たれる様は圧巻であった。

 「馬鹿な!先に進めないだと!?糞!防壁魔法だ!一点集中で展開させろ!重騎兵が道を切り開くまで魔法騎兵は援護に回れ!」
 「やっぱりそうくるよな。だが、俺の弓だって只の弓じゃないんだなぁ......これが」
 
 【蒼弓シリウス】 レアリティ LGレジェンド  
 流星から作られた弓には不思議な力が宿っている。
 一矢が二矢へ、二矢が四矢へと分かれ、雨の様に降り注ぐアローレインを一人で成し遂げる。
 壁を貫き、鎧を貫き、魔法すらも容易く貫く。我が至高の弓技を欲するならば叫べ!我は蒼き流星【シリウス】なり。

 「我が奥義を超え、その果てを見せろ!【シリウス】よ」

 蒼く輝く弓から発せられた弓は天高く上り流星を作り出した。
 次々と降り注ぐ蒼き光の雨、雨、雨は、正に流星群と評するが相応しい一撃必殺の奥義だった。

 防壁魔法すらも易々と貫き、後衛に回った魔法騎兵まで刺し貫いた【シリウス】によって追撃部隊は壊滅したかに思えたが、後方から音速を超える速度で疾走した赤い影によって全滅は阻まれた。
 彼こそがインフィナイトの最大最強最高戦力。天下無双の名を欲しい儘にする【獅子王】インフィナイト・ガイウス・ザガートその人であった。

 「素晴らしい弓技だった。若いライオネルであれば串刺しだったであろうよ。敵ながらあっぱれである」

 男は事も無げに【シリウス】を切り払い、余裕の表情でこう告げた。

 「これより【インフィナイト】が貴様らの相手である」と......。
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