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魔族侵攻編
守護者の意地VS魔族の意地
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「攻めよ!攻めて攻めて攻めまくれ!このジェロームが作った好機を無駄にするな!我々が、魔族こそがもっとも優れた存在であると証明せよ!」
勢いに乗った魔族達は破壊の限りを尽くす。家を燃やし、馬車や井戸と生活に使う物は残さず破壊する徹底振りだった。
ここは我々の領域だと言わんばかりの猛攻を繰り広げ、情け容赦無い侵略は人間同士の戦争を超える物だった。
アステリオスと共に転移したジェロームは、そのまま街中へと進行を開始していた。
外壁を破壊する為に全魔力で魔導弾を連射した為に、次弾の発射まで魔力をチャージする必要があるアステリオスは、全方位障壁を展開しながらも魔力炉に次々と投入される魔石を吸収している。
「ふむ、我ながら大盤振る舞いが過ぎたようだな。魔力炉のエネルギー残量が2割まで減っている。まぁ、良かろう!障壁を展開しつつ前進せよ!ありったけの魔石を炉に食わせてやれ!」
溜め込んだ魔石をここで食いつぶす事になるが、ここら一体を占領してしまえば巨大な利益が得られるのだ。ジェロームの決断に躊躇いは無かった。
電気石の鉱床が豊富にあるここいらの地形は宝の山である。アステリオスの砲身にも使用されているこの電気石は、大気中からのマナを蓄える力が強い。加工する事で電流や磁力を自在に操る事が出来るようになるのだ。
「アステリオスの量産が成った暁には、このジェロームが世界の全てを手中に収める覇者と成るだろう」
「ジェローム様!前線から支援要請が入っています!」
「何?あの外壁を見て逃げ出さぬとは......まだ骨のある奴が居たとでも言うのか?」
アステリオスの内部にある指令席に座るジェロームだったが、オペレーター役の魔族が報告を上げると不機嫌な様子を見せる。
「かなりの力を持ったヒューマンが防衛ラインを形成しており、これ以上進軍する事は困難であるとの事ですが......如何なさいますか?ジェローム様」
「数が揃えば愚かな奴も紛れるだろう。愚かにもこの私に反逆した事を後悔させてやろうじゃないか。主砲発射用意、反抗心ごと粉々に吹き飛ばしてやるわ!」
ジェロームの号令に反応して魔導弾へと魔力が注がれていく。徐々に砲身全体に光が集まっていき、臨界へと達した魔力の輝きが砲口から漏れ出す。
「ここから先へ魔族を進ませるな!民の避難が終わるまで俺達がここを守る!」
「「「「「おう!」」」」」
魔法で防壁を形成し、その上に障壁魔法を張るとバリケードが完成する。
団員達は魔法や弓で応戦し、近づく魔族を次々に倒していくが、倍近い戦力に苦戦を強いられる。
そして、遂にアステリオスの砲身が咆哮を上げる様子を目にした団員は戦慄する事になった。
「この輝きが同胞の道を切り開くだろう。双魔砲アステリオス全力発射!」
人が暮らす土地である事など考慮に入れないその一撃は強烈無比である。衝撃は建物をなぎ倒し、魔導弾は触れる物一切を破壊し尽くすように思えたのだが......。
「我に止められぬ物は無し!【完全鉄壁】【要塞】」
「その程度ではね【我が主に全てを捧ぐ】【不惜身命】スターク |ω・)<無駄無駄!」
集団から飛び出したのはフルプレートで完全武装したスタークと、その背後でスキルを使用するアイシャだった。輝く砲身から放たれた魔導弾が迫り来る正面に堂々と立ち塞がるスタークには一切の恐れが無かった。
「まだまだ!【防護】【反射】【盾の騎士団】」
スキルを次々と発動し、アイシャのスキルで得た魔法を己に付与するスタークの防御力は既に鉄壁等と言う生易しい物ではなくなり、文字通り女神の楯となっていた。団員から次々に飛んでくる援護魔法とスキルを受けて更に強化されていくスタークの防御力は人外を超え、超越者の領域へと足を掛けていた。
「馬鹿めが!そんなものでこのアステリオスの双魔砲が防げるものかぁああああ!」
「ここは通さん!俺の背負う全てが支えてくれる!力をくれる!俺を燃え上がらせる!うぉおおおおおお!」
2メートル近い身長のスタークだが、その背丈を越えるサイズの魔導弾が同時に2発迫る。
ビリビリと空気を震わせて飛んできた紅い魔導弾を受け止めたスタークの大盾だったが、白く輝く光が溢れ出していき、包み込むように衝撃波までも受け止めた。
押し合うように2色の輝きがせめぎ合うが、それも長くは続かない。ジリジリとスタークが押され始め、踵が土に減り込むと徐々に押され始める。
「フハハハハハ!人間如きが防げる物ではないのだ!どれだけスキルを積み上げようと!どれだけ想いを背負ったとしても!我が覇道を阻める者が居ようか!いや、居ない!まだまだ行くぞ!」
狂喜に染まったジェロームだったが、その余裕には訳があった。
「次弾装填完了!何時でも撃てます」
「ご苦労!双魔砲アステリオス全力発射!このアステリオスこそが我が誇り!我が絶対の象徴!止めれる物なら止めてみろぉおお!!」
紅い輝きが再び砲身を輝かせ、その砲口から輝きが吐き出される。初撃が作り上げた破壊の後を通過する悪意の塊は、今も押し合いを続けるスタークへと迫る。
「スターク!スターク!嫌ぁああああああ!」
「嘘だろ?団長でも防げないってのかよ......」
後方から放たれた2撃目が遂にスタークへと到達しようとした時だった。
「切り札ってのはここぞって時に切るもんだぜ?お前達は俺が守ると言ったはずだ!ケイ殿!今こそ力を借ります!」
スタークが光に包まれていき、長年愛用していたフルプレート姿から白銀の鎧へと変貌する。
【守護者の魂】 「レアリティ LG」
ガルムに続いてケイが作り出した意思を持つ鎧の2作目。ミスリルの鎧にメテオダイトをコーティングした鎧。
『軽量化』『温度変化軽減』『衝撃軽減』『対魔力防御』『刺突武器無効』『治癒能力強化』『状態異常治癒』のエンチャントがされている。
全ての性能を守る事だけに注いだ一点集中型の性能は非常に強力で、状況に合わせてその姿すらも変貌させる。
スキル【攻守自在】を使用可能。
味方部隊の全パラメーターをSTRかDEFに変換させる事が出来る。
スキル【一点集中】を使用可能。
味方部隊の全パラメーターを1名に集中させる事が出来る。
『【守護者の魂】マスターの願いによりここに推参!』
「おう!んじゃ、早速だが一発行くぜ?」
『御意。【一点集中】【攻守自在】を使用します』
部隊総勢172名全員の力を文字通り背負ったスタークはここで限界を超えた。本当の意味で全てを背負ったスタークはその重みを心と体で感じ、身が引き締まると同時に闘志が溢れ出していくのを感じた。
愛用の大盾と鎧が融合して身長を大きく超える巨大な盾に変貌する。
「俺は!俺達はこの程度で倒れはしない!」
白い輝きが勢いを増して溢れ出し、紅い光を押し返した所に魔導弾の2撃目が着弾する。衰え始めていた魔導弾だったが、勢いを取り戻してサイズを増す。
しかし、猛り狂う暴風のような衝撃波が辺りに拡散する事は無かった。スタークを包み込む光は際限無く広がり紅い光を白く染めていく。
「ば、馬鹿な!そんな事があるはずが......」
「ぬあぁあああああ!ふん!」
スタークは地面に突き刺す形で使用していた白銀の大盾を持ち上げ、魔導弾を無理やり空へかち上げると同時にスキルを発動する。
「【攻守自在】それじゃ、お返しするぜ?うぉおおおおおおおりゃあああああ!!」
『全ステータスをSTRへ変換します』
膨大な防御力を一点攻撃へと転化させたスタークの力は暴虐そのもので、白銀の大盾を大剣へと変化させて全力で振り下ろすと大地が陥没した。
かち上げた魔導弾を両断し、打点からアステリオスに向かって白銀の光が亀裂と共に伸びていく。
魔導弾が作り上げた破壊の後を塗りつぶすように伸びてアステリオスへと迫る光にジェロームは恐怖する。
「全方位障壁展開!急げ!早くしろ!死にたいのか!」
「それが、全魔力を2撃目に使用した為、残存魔力が底を」
「なんだってぇ!うあああ、ああああああ!!!」
全長20メートルという巨大なアステリオスだったが、動力が沈黙すればただの金属の塊である。
圧倒的な強度や防壁も魔力あっての物であり、それが失われてしまえば結果など決まっているのだ。
「嫌だ!こんな!こんな所で死ぬ訳にはいかんのだ!私が、この私こそが世界を導くべき存在で......」
「た、退避!退避だ!脱出しろ!」
「無理だ!もう間に合わない!」
白銀の光が迫り来る中でも最後までジェロームは醜く叫び続けるのだった。
「嫌だぁ!嫌だぁあああ!」
「やあ、ジェロたん!もう舞台から退場かにゃ?」
「き、貴様!ラプラス!お前が!お前がもっと強力な魔力炉を渡していればこんな事には!」
「はぁ、試しに提供した魔力炉を自分の功績にして悪用したのはジェロたんじゃにゃいかにゃ?」
あと数秒でアステリオスが白銀の光に飲まれるという状況でラプラスは冷徹に言う。
それは普段のおどけた調子では無く、冷酷無比な刃のような切れ味を持っていた。
「道化がメインキャストに成ろうなんて身の程を知りなさい。欲望に溺れた末路がこれなら満足して滅びるべきじゃないの」
「ききき、貴様!貴様ぁああああああ!!!」
拳を振り上げてラプラスを殴ろうとするが、何かが閃き一瞬でジェロームの腕を断ち切る。
「ぎゃあああああ!腕が、私の腕が」
「じゃあねジェロたん。ああ、転移炉と魔力炉は返してもらうからね。貴重なデータをありがとう」
フワリとラプラスが空間に溶けて消えた直後、白銀の光がアステリオスを包み込み爆砕する。
巨躯を誇ったアステリオスだったが、跡形も無く吹き飛んで何も残っていなかった。
魔族達は散り散りになって逃げ去り、先ほどまでの激戦が嘘のようだった。
「スターク!一瞬でも貴方を疑った私が馬鹿だったわ! ビェーン。゚(ノωヽ。)゚。チラッ(ノω・ヽ)」 「気にするなアイシャ。俺だってケイ殿から貰ったこの鎧が無ければやられていただろう」
静かに見詰め合う2人だったが、心配した団員達が駆けつけてくる。
「団長!怪我はありませんか」
「流石は団長だぜ!俺は最初から信じていたもんね」
「嘘だろ?団長でも防げないってのかよ......って言ったのは誰だったっけ?」
「情けない男達だねぇ。団長みたいにドンと構えられないのかねぇ。アタシが鍛え直してやる必要があるねぇ」
「「「お構いなく!」」」
「あんだってぇ!?」
アイシャを抱き寄せたスタークは、互いの無事を喜び長い抱擁を交わす。
団員達に囲まれて囃し立てられる2人だったが、キラキラと光を反射して輝く白銀の鎧は何も言わず、主を見守りながら沈黙するのだった。
勢いに乗った魔族達は破壊の限りを尽くす。家を燃やし、馬車や井戸と生活に使う物は残さず破壊する徹底振りだった。
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アステリオスと共に転移したジェロームは、そのまま街中へと進行を開始していた。
外壁を破壊する為に全魔力で魔導弾を連射した為に、次弾の発射まで魔力をチャージする必要があるアステリオスは、全方位障壁を展開しながらも魔力炉に次々と投入される魔石を吸収している。
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溜め込んだ魔石をここで食いつぶす事になるが、ここら一体を占領してしまえば巨大な利益が得られるのだ。ジェロームの決断に躊躇いは無かった。
電気石の鉱床が豊富にあるここいらの地形は宝の山である。アステリオスの砲身にも使用されているこの電気石は、大気中からのマナを蓄える力が強い。加工する事で電流や磁力を自在に操る事が出来るようになるのだ。
「アステリオスの量産が成った暁には、このジェロームが世界の全てを手中に収める覇者と成るだろう」
「ジェローム様!前線から支援要請が入っています!」
「何?あの外壁を見て逃げ出さぬとは......まだ骨のある奴が居たとでも言うのか?」
アステリオスの内部にある指令席に座るジェロームだったが、オペレーター役の魔族が報告を上げると不機嫌な様子を見せる。
「かなりの力を持ったヒューマンが防衛ラインを形成しており、これ以上進軍する事は困難であるとの事ですが......如何なさいますか?ジェローム様」
「数が揃えば愚かな奴も紛れるだろう。愚かにもこの私に反逆した事を後悔させてやろうじゃないか。主砲発射用意、反抗心ごと粉々に吹き飛ばしてやるわ!」
ジェロームの号令に反応して魔導弾へと魔力が注がれていく。徐々に砲身全体に光が集まっていき、臨界へと達した魔力の輝きが砲口から漏れ出す。
「ここから先へ魔族を進ませるな!民の避難が終わるまで俺達がここを守る!」
「「「「「おう!」」」」」
魔法で防壁を形成し、その上に障壁魔法を張るとバリケードが完成する。
団員達は魔法や弓で応戦し、近づく魔族を次々に倒していくが、倍近い戦力に苦戦を強いられる。
そして、遂にアステリオスの砲身が咆哮を上げる様子を目にした団員は戦慄する事になった。
「この輝きが同胞の道を切り開くだろう。双魔砲アステリオス全力発射!」
人が暮らす土地である事など考慮に入れないその一撃は強烈無比である。衝撃は建物をなぎ倒し、魔導弾は触れる物一切を破壊し尽くすように思えたのだが......。
「我に止められぬ物は無し!【完全鉄壁】【要塞】」
「その程度ではね【我が主に全てを捧ぐ】【不惜身命】スターク |ω・)<無駄無駄!」
集団から飛び出したのはフルプレートで完全武装したスタークと、その背後でスキルを使用するアイシャだった。輝く砲身から放たれた魔導弾が迫り来る正面に堂々と立ち塞がるスタークには一切の恐れが無かった。
「まだまだ!【防護】【反射】【盾の騎士団】」
スキルを次々と発動し、アイシャのスキルで得た魔法を己に付与するスタークの防御力は既に鉄壁等と言う生易しい物ではなくなり、文字通り女神の楯となっていた。団員から次々に飛んでくる援護魔法とスキルを受けて更に強化されていくスタークの防御力は人外を超え、超越者の領域へと足を掛けていた。
「馬鹿めが!そんなものでこのアステリオスの双魔砲が防げるものかぁああああ!」
「ここは通さん!俺の背負う全てが支えてくれる!力をくれる!俺を燃え上がらせる!うぉおおおおおお!」
2メートル近い身長のスタークだが、その背丈を越えるサイズの魔導弾が同時に2発迫る。
ビリビリと空気を震わせて飛んできた紅い魔導弾を受け止めたスタークの大盾だったが、白く輝く光が溢れ出していき、包み込むように衝撃波までも受け止めた。
押し合うように2色の輝きがせめぎ合うが、それも長くは続かない。ジリジリとスタークが押され始め、踵が土に減り込むと徐々に押され始める。
「フハハハハハ!人間如きが防げる物ではないのだ!どれだけスキルを積み上げようと!どれだけ想いを背負ったとしても!我が覇道を阻める者が居ようか!いや、居ない!まだまだ行くぞ!」
狂喜に染まったジェロームだったが、その余裕には訳があった。
「次弾装填完了!何時でも撃てます」
「ご苦労!双魔砲アステリオス全力発射!このアステリオスこそが我が誇り!我が絶対の象徴!止めれる物なら止めてみろぉおお!!」
紅い輝きが再び砲身を輝かせ、その砲口から輝きが吐き出される。初撃が作り上げた破壊の後を通過する悪意の塊は、今も押し合いを続けるスタークへと迫る。
「スターク!スターク!嫌ぁああああああ!」
「嘘だろ?団長でも防げないってのかよ......」
後方から放たれた2撃目が遂にスタークへと到達しようとした時だった。
「切り札ってのはここぞって時に切るもんだぜ?お前達は俺が守ると言ったはずだ!ケイ殿!今こそ力を借ります!」
スタークが光に包まれていき、長年愛用していたフルプレート姿から白銀の鎧へと変貌する。
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ガルムに続いてケイが作り出した意思を持つ鎧の2作目。ミスリルの鎧にメテオダイトをコーティングした鎧。
『軽量化』『温度変化軽減』『衝撃軽減』『対魔力防御』『刺突武器無効』『治癒能力強化』『状態異常治癒』のエンチャントがされている。
全ての性能を守る事だけに注いだ一点集中型の性能は非常に強力で、状況に合わせてその姿すらも変貌させる。
スキル【攻守自在】を使用可能。
味方部隊の全パラメーターをSTRかDEFに変換させる事が出来る。
スキル【一点集中】を使用可能。
味方部隊の全パラメーターを1名に集中させる事が出来る。
『【守護者の魂】マスターの願いによりここに推参!』
「おう!んじゃ、早速だが一発行くぜ?」
『御意。【一点集中】【攻守自在】を使用します』
部隊総勢172名全員の力を文字通り背負ったスタークはここで限界を超えた。本当の意味で全てを背負ったスタークはその重みを心と体で感じ、身が引き締まると同時に闘志が溢れ出していくのを感じた。
愛用の大盾と鎧が融合して身長を大きく超える巨大な盾に変貌する。
「俺は!俺達はこの程度で倒れはしない!」
白い輝きが勢いを増して溢れ出し、紅い光を押し返した所に魔導弾の2撃目が着弾する。衰え始めていた魔導弾だったが、勢いを取り戻してサイズを増す。
しかし、猛り狂う暴風のような衝撃波が辺りに拡散する事は無かった。スタークを包み込む光は際限無く広がり紅い光を白く染めていく。
「ば、馬鹿な!そんな事があるはずが......」
「ぬあぁあああああ!ふん!」
スタークは地面に突き刺す形で使用していた白銀の大盾を持ち上げ、魔導弾を無理やり空へかち上げると同時にスキルを発動する。
「【攻守自在】それじゃ、お返しするぜ?うぉおおおおおおおりゃあああああ!!」
『全ステータスをSTRへ変換します』
膨大な防御力を一点攻撃へと転化させたスタークの力は暴虐そのもので、白銀の大盾を大剣へと変化させて全力で振り下ろすと大地が陥没した。
かち上げた魔導弾を両断し、打点からアステリオスに向かって白銀の光が亀裂と共に伸びていく。
魔導弾が作り上げた破壊の後を塗りつぶすように伸びてアステリオスへと迫る光にジェロームは恐怖する。
「全方位障壁展開!急げ!早くしろ!死にたいのか!」
「それが、全魔力を2撃目に使用した為、残存魔力が底を」
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圧倒的な強度や防壁も魔力あっての物であり、それが失われてしまえば結果など決まっているのだ。
「嫌だ!こんな!こんな所で死ぬ訳にはいかんのだ!私が、この私こそが世界を導くべき存在で......」
「た、退避!退避だ!脱出しろ!」
「無理だ!もう間に合わない!」
白銀の光が迫り来る中でも最後までジェロームは醜く叫び続けるのだった。
「嫌だぁ!嫌だぁあああ!」
「やあ、ジェロたん!もう舞台から退場かにゃ?」
「き、貴様!ラプラス!お前が!お前がもっと強力な魔力炉を渡していればこんな事には!」
「はぁ、試しに提供した魔力炉を自分の功績にして悪用したのはジェロたんじゃにゃいかにゃ?」
あと数秒でアステリオスが白銀の光に飲まれるという状況でラプラスは冷徹に言う。
それは普段のおどけた調子では無く、冷酷無比な刃のような切れ味を持っていた。
「道化がメインキャストに成ろうなんて身の程を知りなさい。欲望に溺れた末路がこれなら満足して滅びるべきじゃないの」
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「ぎゃあああああ!腕が、私の腕が」
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巨躯を誇ったアステリオスだったが、跡形も無く吹き飛んで何も残っていなかった。
魔族達は散り散りになって逃げ去り、先ほどまでの激戦が嘘のようだった。
「スターク!一瞬でも貴方を疑った私が馬鹿だったわ! ビェーン。゚(ノωヽ。)゚。チラッ(ノω・ヽ)」 「気にするなアイシャ。俺だってケイ殿から貰ったこの鎧が無ければやられていただろう」
静かに見詰め合う2人だったが、心配した団員達が駆けつけてくる。
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「流石は団長だぜ!俺は最初から信じていたもんね」
「嘘だろ?団長でも防げないってのかよ......って言ったのは誰だったっけ?」
「情けない男達だねぇ。団長みたいにドンと構えられないのかねぇ。アタシが鍛え直してやる必要があるねぇ」
「「「お構いなく!」」」
「あんだってぇ!?」
アイシャを抱き寄せたスタークは、互いの無事を喜び長い抱擁を交わす。
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