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王都の闇編
復讐計画と奈落の浄化
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やばい物を見つけてしまった。これを上手く浄化するには計画を変更するしかないだろう。
1.公爵の動向を正確に把握し、取引の時間と場所を特定する。
2.取引相手の特定と取引内容の把握。
3.公爵戦力の把握と妨害工作。
この3つは公爵邸内で情報を手に入れた。少しでも早く奴隷を手に入れたいというダンケルクの希望により、早朝の6時取引となっている。
場所は隣国である【騎士王国アゲート】の国境付近にある『アベンチュリンの泉』となっていた。
アゲートでも5本の指に入る奴隷商『アンバーラット』が取引相手となっていた。
取引されるのは奴隷50人、健康ならば性別や容姿は問わない。それとは別に美しい外見をした女が5人となっていた。
護衛は騎士隊長と精鋭20名での行軍予定になっているが、当日は盗賊に扮した襲撃部隊が複数襲撃をかけて、ガーランド側の戦力を削ぐ予定となっている。
泉付近で伏せた部隊が取引直後に襲い掛かり、奴隷を奪うと同時に騎士隊長を捕縛する予定だ。
アンバーラット側の護衛には注意しなければならないが、俺が結界を構築して隔離する予定だ。
バルドが傘下に置く予定の組織なのだから、俺が傷つける訳にはいかない。
本当ならばここらでダンケルクを捕縛する予定だったのだが、公爵邸にて大規模な墓穴を発見した事により、大幅に計画を変更する事にした。
大量の怨念が封印されているこの墓穴を【奈落】と名付けたのだが、この奈落に活躍してもらう事になる。
このまま放置すれば破裂した封印がダンケルクを殺すのは確定事項なのだが、そういう訳にもいかないのだ。
それに、王都で大規模な霊的災害が発生したとなれば、インフィナイト王国の名声を傷付ける事にもなる。
エルリックには伝えたが、自分の手に負えない爆弾が王都内部に有ると知った彼は、いずれではなく現在進行形だったのか!と愕然とした表情をしていた。
頭を抱える彼には、俺が責任を持って浄化する旨を伝えたが「やはり処分すべきだった」と己の判断ミスに心を痛めている彼の表情は青ざめていた。
「最後のキーアイテムも手に入れたし、準備はほぼ完了した。残りの時間はゆっくりさせてもらうよ」
そう言い残した俺は王都に確保した【自由の鎖】の拠点へと転移した。
シャリシャリシャリ......シュッシュッシュ......シャッシャッシャ。
「ふふふ、良い輝きです。これならば鎧すらも抵抗泣く切り裂く事が出来るでしょう」
キラリと輝く刃を眺めながら、その砥ぎ上げた刃の美しさに魅了される女性が一人。
復讐も目前に迫り、準備に余念が無いイーリスであった。
「復讐の時を待ちながら、何度屈辱にこの心を焦がしたか。どうすれば、この馬鹿野郎の心に絶望を刻み込む事ができるか......死を選びたくなる程の苦痛を与えられるかを考えていました」
笑顔の裏に隠された苦しみに、苛立ちに、怒りに、憎悪に、嫌悪に、後悔に、何度心を染めたか。何度突き動かされそうになるのを堪えたか、何度この苦しみを周囲へ撒き散らそうとして思いとどまったか。
ただ一人の人間に対して、ここまで感情を積み重ねる事が出来るものだろうか?何度も塗り潰しては、新たに湧き出す感情の色を塗り重ねてきた。
貴族として生まれた自分が幸せに生きた時間、奴隷落ちして味わった絶望と屈辱に塗れた時間。
復讐という言葉だけでは説明する事が出来ない程に、積み上げてきた思いを解き放つ事を確約されて、ガーランド・ダンケルクという存在をありとあらゆる方法で苦しめてから殺してやろうと......これまでの全てを余す事無くぶちまける、ぶちかます場を与えられた歓喜の時間。
「この思いを理解する事など出来はしない。理解して欲しいとも思わない。理解させようとも思えない。この感情は私だけの物。この復讐はどんな金銀財宝なんかよりも貴重で、途方も無い価値を持ち、この世のどんな物よりも......醜く、無様で、愚かで、薄汚く......唾棄すべき行為だ」
心では理解している。意味の無い行為だ。
復讐は復讐を呼ぶだけで、苦しみや憎しみの連鎖しか生み出さない。
この思いが晴れる事などありはしない。
私の時間は、我が父や母の命が帰ってくる事など無い。
「それでも止まれない。それでも奪いたい。それでも殺したい。ダンケルクがこの世に存在する事を許してはおけない!この心の中でグツグツと煮えたぎる、醜くドロドロとした感情が私を復讐へと駆り立てるのですわ」
「ああ、イーリス......俺だけは君を肯定する。醜くても良いじゃないか?愚かで何が悪い?その行為の価値は君だけの物だ。邪魔をする者は全て排除するし、遮るものは一切をなぎ払う。君が君の思いを果たす為に、俺は俺の全てを持って答えるよ」
心に闇を抱えた男と女は、復讐という甘露に心を焦がす。
甘い調べにあわせてステップを踏む2人、迎える結末には意味も価値も無いのかも知れない。
それでも演奏は止まらないし、2人が足を止める事は無いだろう。
「邪魔をする物は男だろうが、女だろうが、モンスターだろうが、国だろうが、世界だろうが、神だろうが許さない!俺は全てを掛けてイーリスとの約束を果たす」
「ここで全てを清算し、この思いの果てへ至りますわ」
復讐の時まであと2日、準備は着々と進んでいく。
パズルのピースは組み上げられ、残すピースは後僅か。
メインキャスト達を載せた物語という列車は、終点へ向かってただ突き進む。
1.公爵の動向を正確に把握し、取引の時間と場所を特定する。
2.取引相手の特定と取引内容の把握。
3.公爵戦力の把握と妨害工作。
この3つは公爵邸内で情報を手に入れた。少しでも早く奴隷を手に入れたいというダンケルクの希望により、早朝の6時取引となっている。
場所は隣国である【騎士王国アゲート】の国境付近にある『アベンチュリンの泉』となっていた。
アゲートでも5本の指に入る奴隷商『アンバーラット』が取引相手となっていた。
取引されるのは奴隷50人、健康ならば性別や容姿は問わない。それとは別に美しい外見をした女が5人となっていた。
護衛は騎士隊長と精鋭20名での行軍予定になっているが、当日は盗賊に扮した襲撃部隊が複数襲撃をかけて、ガーランド側の戦力を削ぐ予定となっている。
泉付近で伏せた部隊が取引直後に襲い掛かり、奴隷を奪うと同時に騎士隊長を捕縛する予定だ。
アンバーラット側の護衛には注意しなければならないが、俺が結界を構築して隔離する予定だ。
バルドが傘下に置く予定の組織なのだから、俺が傷つける訳にはいかない。
本当ならばここらでダンケルクを捕縛する予定だったのだが、公爵邸にて大規模な墓穴を発見した事により、大幅に計画を変更する事にした。
大量の怨念が封印されているこの墓穴を【奈落】と名付けたのだが、この奈落に活躍してもらう事になる。
このまま放置すれば破裂した封印がダンケルクを殺すのは確定事項なのだが、そういう訳にもいかないのだ。
それに、王都で大規模な霊的災害が発生したとなれば、インフィナイト王国の名声を傷付ける事にもなる。
エルリックには伝えたが、自分の手に負えない爆弾が王都内部に有ると知った彼は、いずれではなく現在進行形だったのか!と愕然とした表情をしていた。
頭を抱える彼には、俺が責任を持って浄化する旨を伝えたが「やはり処分すべきだった」と己の判断ミスに心を痛めている彼の表情は青ざめていた。
「最後のキーアイテムも手に入れたし、準備はほぼ完了した。残りの時間はゆっくりさせてもらうよ」
そう言い残した俺は王都に確保した【自由の鎖】の拠点へと転移した。
シャリシャリシャリ......シュッシュッシュ......シャッシャッシャ。
「ふふふ、良い輝きです。これならば鎧すらも抵抗泣く切り裂く事が出来るでしょう」
キラリと輝く刃を眺めながら、その砥ぎ上げた刃の美しさに魅了される女性が一人。
復讐も目前に迫り、準備に余念が無いイーリスであった。
「復讐の時を待ちながら、何度屈辱にこの心を焦がしたか。どうすれば、この馬鹿野郎の心に絶望を刻み込む事ができるか......死を選びたくなる程の苦痛を与えられるかを考えていました」
笑顔の裏に隠された苦しみに、苛立ちに、怒りに、憎悪に、嫌悪に、後悔に、何度心を染めたか。何度突き動かされそうになるのを堪えたか、何度この苦しみを周囲へ撒き散らそうとして思いとどまったか。
ただ一人の人間に対して、ここまで感情を積み重ねる事が出来るものだろうか?何度も塗り潰しては、新たに湧き出す感情の色を塗り重ねてきた。
貴族として生まれた自分が幸せに生きた時間、奴隷落ちして味わった絶望と屈辱に塗れた時間。
復讐という言葉だけでは説明する事が出来ない程に、積み上げてきた思いを解き放つ事を確約されて、ガーランド・ダンケルクという存在をありとあらゆる方法で苦しめてから殺してやろうと......これまでの全てを余す事無くぶちまける、ぶちかます場を与えられた歓喜の時間。
「この思いを理解する事など出来はしない。理解して欲しいとも思わない。理解させようとも思えない。この感情は私だけの物。この復讐はどんな金銀財宝なんかよりも貴重で、途方も無い価値を持ち、この世のどんな物よりも......醜く、無様で、愚かで、薄汚く......唾棄すべき行為だ」
心では理解している。意味の無い行為だ。
復讐は復讐を呼ぶだけで、苦しみや憎しみの連鎖しか生み出さない。
この思いが晴れる事などありはしない。
私の時間は、我が父や母の命が帰ってくる事など無い。
「それでも止まれない。それでも奪いたい。それでも殺したい。ダンケルクがこの世に存在する事を許してはおけない!この心の中でグツグツと煮えたぎる、醜くドロドロとした感情が私を復讐へと駆り立てるのですわ」
「ああ、イーリス......俺だけは君を肯定する。醜くても良いじゃないか?愚かで何が悪い?その行為の価値は君だけの物だ。邪魔をする者は全て排除するし、遮るものは一切をなぎ払う。君が君の思いを果たす為に、俺は俺の全てを持って答えるよ」
心に闇を抱えた男と女は、復讐という甘露に心を焦がす。
甘い調べにあわせてステップを踏む2人、迎える結末には意味も価値も無いのかも知れない。
それでも演奏は止まらないし、2人が足を止める事は無いだろう。
「邪魔をする物は男だろうが、女だろうが、モンスターだろうが、国だろうが、世界だろうが、神だろうが許さない!俺は全てを掛けてイーリスとの約束を果たす」
「ここで全てを清算し、この思いの果てへ至りますわ」
復讐の時まであと2日、準備は着々と進んでいく。
パズルのピースは組み上げられ、残すピースは後僅か。
メインキャスト達を載せた物語という列車は、終点へ向かってただ突き進む。
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