異世界転生する事になったけど、必死に努力する自前の精神力しか頼れるものはありませんでした。

SAKI

文字の大きさ
上 下
45 / 117
辺境騒乱編

時を越える者と使役されし竜姫6

しおりを挟む
 【時の扉タイムゲート】を抜けて帰ってきた俺は即座に扉を閉じた。
 確実に追ってきているだろう魔犬を1秒でも足止めする事が出来る様に、この空間座標への侵入者に対する防壁魔法を展開する。
 周囲の時空間を食い破って出て来る事が無いように【時の扉タイムゲート】の扉を閉めるだけで消滅させず、時空間の固定と周辺座標の結界維持をする術式の柱にした。

 「これで追いついてくるにしても、出口は【時の扉タイムゲート】の扉だけだ」
 「そんなに厄介な相手なんですか?私を含めて、この子達4匹は全員がLV100000を超えていますわ」
 
 うんうんと頷く4匹と誇らしげに主張する主だったが、俺がその驕りを打ち砕く。

 「ああ、1匹ならLV120000程度だからお前らでも何とかなるだろうよ。けどな?コイツはどんな仕組みかわからねぇが、次から次へと現れやがるんだ。まるで並行世界、並行宇宙、並行時空から同一の存在がここを目的地にして飛ぶが如くな」

 俺も箱庭時代にコイツの素材が欲しくて戦った事があるのだが、あの時は大変だった。
 モグラ叩きの様に、次から次へと現れるコイツに激怒したティアマトが【運命崩壊ディスティニーデストラクション】とかいう関連時空全崩壊魔法を使用するのを、他の神様達と全員で止めたのだ。
 MMORPGで強敵が無限湧きするポイントにキャラクターを放置するイメージでOKだ。いつまで経っても際限無く現れるので、目的が無い人はウンザリするだろう。

 「あの時は難儀したんだ。今回は神様達も居ないしなぁ......俺もちょっと苦労しそうだぜ?」

 ゴンゴンと扉に体当たりしているのか、衝撃と共に音が伝わってくる。
 恐らく、コイツを殺すとあの無限連鎖が始まるのだろう。
 今の俺ならば、ティアマトの如く出現する端から撃滅出来るだろうが、【時の扉タイムゲート】の維持へ魔力を回している以上、ジリジリと追い込まれていくだろう。
 アイテムボックス内の財宝を使用して回復すれば良いんだが、こちらは某ゲームの泥手狩りをする気は無いのである。
 
 「それでは一体どうすればよろしいんですの?」
 「そうだな。獲物を誤認してどこかに消えてもらうのが一番だろうさ」

 箱庭時代で苦労したあの時に、恐らく俺もこの手のシチュエーションは来るだろうと、対策は講じてあるのだ。
 俺達全員分の身代わり人形を瞬時に作成した俺は、更に行動を続ける。
 気配隠蔽の術式を発動させて、全員が避難出来る空間を構築すると、全員を誘導した。
 後は作り上げた人形に全員の意識を転写して、遠隔操作可能にする。

 「うむ、我ながら良い出来じゃないか。これなら大丈夫だろう」
 「あっちの空間に本体が避難しているのに、ここに自分が居るというのは変な感覚ですわね」
 「この胸の出来とか素晴らしくないか?本物みたいだろ」

 ふにふにとやわらかい胸を触る俺にローゼンシアの表情が凍りつく。

 「なななな、何て事しますの!変態!痴漢!」
 「俺の作った人形じゃないか!生で触った分けでもあるまいし、減るもんじゃないだろう?」
 「減りますわ!何て事しますのよ!」
 「ローゼンシア様への無礼......看過出来んな」 「主の無念は我々が晴らす」 「デスっていうです!」
 「お、おい!ぬわぁああああああ」

 4人のコンビネーションで袋叩きにされる俺だったが、誰も助けてくれないだと!?......解せぬ。

 「ケイ様、帰って早々何をするかと思えば、人形プレイにセクハラだなんて......私もマニアック過ぎると思うのですが?」
 「ケイの変態!2人の嫁が居ながらあんな乳デカ女に!」
 「ち、乳デカ!?」
 
 イーリスとエリスに攻められる俺だったが、エリスの発言に口をパクパクさせて絶句しているローゼンシアが少々哀れだった。
 そんなやり取りをしている内に、扉の方がそろそろ限界が近いらしく、術式に亀裂が入るのを感じ取った。

 「む、そろそろ来るぞ。イーリスとエリスは避難してくれ。俺達はアイツと一戦した後に別空間へ誘導する」
 
 全員が避難したのを確認して、避難用の隔離空間を閉じる。
 それと同時に扉を破壊した。
 時空間からこの世界へ現れたティンダロスの猟犬は、こちらの世界での肉体を構成し始める。
 何と表現すれば妥当なのか分からないが、ひどい悪臭が立ち込める中、青黒い煙の様な物が固まり、肉体を形成していく。

 ティンダロスの猟犬と言われるこの魔犬は、時間が生まれる以前の超太古、異常な角度をもつ空間に住む不浄な存在とされる。

絶えず飢え、そして非常に執念深い。四つ足で、獲物の「におい」を知覚すると、その獲物を捕らえるまで、時間や次元を超えて永久に追い続ける。獲物を追う様子から「猟犬」と呼ばれるが、犬とは全く異なる存在である。

 という記述があるが、こちらの世界では醜悪な容姿の犬だった。
 体全体が腐れ落ち、骨と零れ落ちる粘液で構成されたゾンビ犬とでも言えば良いだろうか。
 
 「GURURURURURURURURURU!」

 唸り声を上げながら獲物を追い求める魔犬が現れた瞬間に、俺が一撃を繰り出した。
 
しおりを挟む
感想 107

あなたにおすすめの小説

異世界転生!ハイハイからの倍人生

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕は死んでしまった。 まさか野球観戦で死ぬとは思わなかった。 ホームランボールによって頭を打ち死んでしまった僕は異世界に転生する事になった。 転生する時に女神様がいくら何でも可哀そうという事で特殊な能力を与えてくれた。 それはレベルを減らすことでステータスを無制限に倍にしていける能力だった...

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

いきなり異世界って理不尽だ!

みーか
ファンタジー
 三田 陽菜25歳。会社に行こうと家を出たら、足元が消えて、気付けば異世界へ。   自称神様の作った機械のシステムエラーで地球には帰れない。地球の物は何でも魔力と交換できるようにしてもらい、異世界で居心地良く暮らしていきます!

異世界転生~チート魔法でスローライフ

玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。 43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。 その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」 大型連休を利用して、 穴場スポットへやってきた! テントを建て、BBQコンロに テーブル等用意して……。 近くの川まで散歩しに来たら、 何やら動物か?の気配が…… 木の影からこっそり覗くとそこには…… キラキラと光注ぐように発光した 「え!オオカミ!」 3メートルはありそうな巨大なオオカミが!! 急いでテントまで戻ってくると 「え!ここどこだ??」 都会の生活に疲れた主人公が、 異世界へ転生して 冒険者になって 魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。 恋愛は多分ありません。 基本スローライフを目指してます(笑) ※挿絵有りますが、自作です。 無断転載はしてません。 イラストは、あくまで私のイメージです ※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが 少し趣向を変えて、 若干ですが恋愛有りになります。 ※カクヨム、なろうでも公開しています

アラヒフおばさんのゆるゆる異世界生活

ゼウママ
ファンタジー
50歳目前、突然異世界生活が始まる事に。原因は良く聞く神様のミス。私の身にこんな事が起こるなんて…。 「ごめんなさい!もう戻る事も出来ないから、この世界で楽しく過ごして下さい。」と、言われたのでゆっくり生活をする事にした。 現役看護婦の私のゆっくりとしたどたばた異世界生活が始まった。 ゆっくり更新です。はじめての投稿です。 誤字、脱字等有りましたらご指摘下さい。

異世界召喚失敗から始まるぶらり旅〜自由気ままにしてたら大変なことになった〜

ei_sainome
ファンタジー
クラスメイト全員が異世界に召喚されてしまった! 謁見の間に通され、王様たちから我が国を救って欲しい云々言われるお約束が…始まらない。 教室内が光ったと思えば、気づけば地下に閉じ込められていて、そこには誰もいなかった。 勝手に召喚されたあげく、誰も事情を知らない。未知の世界で、自分たちの力だけでどうやって生きていけというのか。 元の世界に帰るための方法を探し求めて各地を放浪する旅に出るが、似たように見えて全く異なる生態や人の価値観と文化の差に苦悩する。 力を持っていても順応できるかは話が別だった。 クラスメイトたちにはそれぞれ抱える内面や事情もあり…新たな世界で心身共に表面化していく。 ※ご注意※ 初投稿、試作、マイペース進行となります。 作品名は今後改題する可能性があります。 世界観だけプロットがあり、話の方向性はその場で決まります。 旅に出るまで(序章)がすごく長いです。 他サイトでも同作を投稿しています。 更新頻度は1〜3日程度を目標にしています。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる

三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。 こんなはずじゃなかった! 異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。 珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に! やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活! 右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり! アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

処理中です...