異世界転生する事になったけど、必死に努力する自前の精神力しか頼れるものはありませんでした。

SAKI

文字の大きさ
上 下
11 / 117
クォーツ転生編

辺境の村に生まれる特異な赤子

しおりを挟む
 さぁ、転生しました!
 記憶も能力も引き継いでいますが、いきなりやらかしてしまった。
 ステータス隠蔽技能なんて持って無かった.....ORZ

 しかし、そんな事は予想してましたよ?とティアマトの声が聞こえたような気がした。
 ステータス欄の【至高神の加護】が光っており、ステータスが隠蔽されている。

 【ステータス】

  ケイ  (0) LV1 種族 ヒューマン ジョブ 無し
  HP 10/10 MP 8/8
 スキル 鑑定 LV1 採取 LV1 農業 LV1 狩猟 LV1 

 となっていた。
 両親は、生まれたばかりでスキルが4つもあるなんて天才だ!と狂喜乱舞している。 
 どうやら生まれた場所は、平均が最低レベルの安全地帯らしいと判断した。
 
 頭の中で【百科事典】ウィキペディアを開いて、情報を調べる事にした。
 
 ここはクォーツに存在する国の一つ【インフィナイト王国】の東にある辺境の開拓村【レッドストーン】というらしい。
 統治する『辺境伯アーネスト・ライト』が開拓に力を入れているらしく、最前線にある3つの村は町になりそうな規模に成長している。
 俺が生まれた【レッドストーン】【ブルーストーン】【イエローストーン】という何とも単純なネーミングである。

 そんな開拓村の平民である『グレイ』と『メリッサ』の間に生まれたのが長男『ケイ』、俺である。
 どうやら、転生者達は基本的に、前世の名前に似た名を付けられるようになっているらしい。

 家族構成は、父 グレイ(28)、母 メリッサ(18)、長男 ケイ(0)に加えて、女奴隷が2人 レイン(27)、ミーシャ(8)となっている。
 こちらの世界は人の命が軽いらしく、平気で奴隷が売り買いされており、その値段も格安だ。

 日本円に直すと、金貨=100000円、大銀貨=50000円、銀貨=10000円、大銅貨=5000円、銅貨=1000円、鉄貨=100円、石貨=1円 のレートらしいのだが、奴隷は平均金貨10枚~5枚程度で取引されているらしい。
 農奴、戦奴、性奴等の使用用途と性別、容姿、スキル、LVによって値段が変動するらしい。

 レインはグレイが成人(この世界では16歳らしい)した時に、祖父マルスから与えられた奴隷らしく、ミーシャはグレイがレインに生ませた子供らしい。
 我が父ながらやってくれる!!エンジョイなう...だと!?

 世間一般では権力、財力を持っている者ほど、奴隷への扱いが酷くなる傾向にあるようだ。
 まぁ、金の無い平民からすれば、働き手にもなるし大切な【道具】なのだろう。
 丁寧に使えば長持ちするし、命令しなくても自分で動いてくれる便利な存在だ。

 国や地方、個人差もあるのだろうが、グレイの場合は家族同然に大切な存在として接している。
 メリッサもグレイの考え方に好感を持った為、一緒になったようだ。
 平民と奴隷という立場の差はあれど、メリッサとレイン・ミーシャの関係も良好だ。

 別に偽善者を気取る気も無いが、両親が心ある人間で本当に良かったと思う。
 近い未来、ミーシャは俺の教育係になるのだろうと思った。

 意識があろうが、ステータスが高かろうが、スキルが豊富だろうが、今の俺は赤ちゃんである。
 メリッサのおっぱいを貰って大きくなるまでは、子供らしく生きよう....トイレ恥ずかしいなぁ。

 子供の時間はあっという間に過ぎた。
 それはそうだ、箱庭では170年近くの時間を過ごしたのだ、5年の月日はあっという間だった。
 森は切り開かれ、幾千のモンスターが狩り取られていき、辺境伯領は徐々に拡大していった。
 
 開拓村は町になり、物流も盛んになってきた。
 前線で戦う人は確かに強くなっていくが、大多数の町人はレベルも低くとても戦えるような強さでは無い。
 町の守りを勤める兵達は、モンスターを狩る兵達は、町人から尊敬を集めていた。

 自分の力とは関係無く、国の為に、町の為に、家族の為に戦う戦士達は勇ましく、憧れるに値する存在だった。
 モンスター達との大きな戦いがあれば、親しい人が命を落とす事もあった。
 
 開拓が進んだとはいえ、モンスター達の領土もまだまだ広大であり、モンスターを従える魔王も人族の領土を侵略しようと、常に隙を狙っている状態だった。

 それでも【レッドストーン】【ブルーストーン】【イエローストーン】から派生した、新たな開拓村を守る為に、多くの兵士が駐屯する事になった。
 それにより、町は更に潤う事になり、【レッドストーン】【ブルーストーン】【イエローストーン】はどんどん規模を拡大していった。


 「ケイ?また町の外を見に行っていたの?」
 「うん、僕も大きくなったら兵士の人達みたいに戦うんだ」

 5年が過ぎて13歳になったミーシャは、ケイが生まれてから弟が出来たと、とにかくケイを構いたがった。
 中身はおっさんを通り過ぎてお爺さんも通り過ぎたのだ。
 若い少女が弟に向ける感情が微笑ましく感じて、姉が大好きな弟を演じながらも、この少女が可愛くて仕方が無かった。
 手を引かれて我が家に帰ると、レインが迎えてくれた。

 「二人ともお帰りなさい。もうすぐ夕食の時間だから手を洗ってきなさい」
 
 「「はーい!」」

 手を洗って食卓に着くと、既にグレイが席についていた。
 
 「ケイはミーシャに迷惑をかけていなかったか?いつも町中を走り回って元気なのはいいのだが」

 細身だが筋肉質でガッシリした体格のグレイは、自身も積極的に開拓を推し進める実力派の戦士で、部隊の指揮を任される事もある程の求心力もあった。
 それに付き従い戦場を駆ける母のメリッサも攻撃、防御の両面で活躍する魔法戦士だ。

 二人が出かけて留守にする家を管理するのがレインの仕事だ。
 
 「子供の内から活動的なのは良い事だと私は思うのだけれど?」

 メリッサは小柄ながらも豊かな体型をしており、今は二人目の子供を身篭っている。
 俺は密かに妹が欲しいな~と思っているが、男か女かを決める事が出来るわけではないので、祈っているだけである。
 もし、難産になりそうならば全力を出すつもりではあるが、メリッサなら大丈夫だろうと思って安心している。

 「父さんはまたモンスターと戦ったの?強かった?」

 芝居とはいえ、目を輝かせて父親の英雄譚を強請る子供を見て、頬が緩まない父親は居ないだろう。
 今日のモンスターは小物が多く、大型の草食動物の群れを見つけて捕獲したらしい。
 この『ブル』という草食動物は牛に似た動物だが、大きさは牛の2倍の体長である。
 肉は美味しいし、ミルクは牛乳よりも濃厚でコクがあり、俺は一口飲んで大好きになった。

 「またブルのミルクを飲んでニヤニヤしているの?ケイはミルクだけ飲んでいればご機嫌ね」

 そう言いながらもミーシャはお代わりを注いでくれる。 可愛いお姉さまだ。
 
 「一杯食べて一杯飲んで、おっきくなるよ!」

 フンスと鼻息荒く語るケイを眺める家族は、誰もが微笑ましい者を見るように笑顔だった。
 こういう食事の時間がとても楽しく、神達と過ごしていた時間を思い出すようだった。

 今だからこそ言える。長い時間を過ごしたが、孤独だった時間なんて殆ど無かった。
 俺は幸せな時間をいっぱい貰ったんだなと、こんな時間が続くといいなぁ。
 
しおりを挟む
感想 107

あなたにおすすめの小説

異世界転生!ハイハイからの倍人生

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕は死んでしまった。 まさか野球観戦で死ぬとは思わなかった。 ホームランボールによって頭を打ち死んでしまった僕は異世界に転生する事になった。 転生する時に女神様がいくら何でも可哀そうという事で特殊な能力を与えてくれた。 それはレベルを減らすことでステータスを無制限に倍にしていける能力だった...

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

いきなり異世界って理不尽だ!

みーか
ファンタジー
 三田 陽菜25歳。会社に行こうと家を出たら、足元が消えて、気付けば異世界へ。   自称神様の作った機械のシステムエラーで地球には帰れない。地球の物は何でも魔力と交換できるようにしてもらい、異世界で居心地良く暮らしていきます!

異世界転生~チート魔法でスローライフ

玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。 43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。 その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」 大型連休を利用して、 穴場スポットへやってきた! テントを建て、BBQコンロに テーブル等用意して……。 近くの川まで散歩しに来たら、 何やら動物か?の気配が…… 木の影からこっそり覗くとそこには…… キラキラと光注ぐように発光した 「え!オオカミ!」 3メートルはありそうな巨大なオオカミが!! 急いでテントまで戻ってくると 「え!ここどこだ??」 都会の生活に疲れた主人公が、 異世界へ転生して 冒険者になって 魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。 恋愛は多分ありません。 基本スローライフを目指してます(笑) ※挿絵有りますが、自作です。 無断転載はしてません。 イラストは、あくまで私のイメージです ※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが 少し趣向を変えて、 若干ですが恋愛有りになります。 ※カクヨム、なろうでも公開しています

アラヒフおばさんのゆるゆる異世界生活

ゼウママ
ファンタジー
50歳目前、突然異世界生活が始まる事に。原因は良く聞く神様のミス。私の身にこんな事が起こるなんて…。 「ごめんなさい!もう戻る事も出来ないから、この世界で楽しく過ごして下さい。」と、言われたのでゆっくり生活をする事にした。 現役看護婦の私のゆっくりとしたどたばた異世界生活が始まった。 ゆっくり更新です。はじめての投稿です。 誤字、脱字等有りましたらご指摘下さい。

異世界召喚失敗から始まるぶらり旅〜自由気ままにしてたら大変なことになった〜

ei_sainome
ファンタジー
クラスメイト全員が異世界に召喚されてしまった! 謁見の間に通され、王様たちから我が国を救って欲しい云々言われるお約束が…始まらない。 教室内が光ったと思えば、気づけば地下に閉じ込められていて、そこには誰もいなかった。 勝手に召喚されたあげく、誰も事情を知らない。未知の世界で、自分たちの力だけでどうやって生きていけというのか。 元の世界に帰るための方法を探し求めて各地を放浪する旅に出るが、似たように見えて全く異なる生態や人の価値観と文化の差に苦悩する。 力を持っていても順応できるかは話が別だった。 クラスメイトたちにはそれぞれ抱える内面や事情もあり…新たな世界で心身共に表面化していく。 ※ご注意※ 初投稿、試作、マイペース進行となります。 作品名は今後改題する可能性があります。 世界観だけプロットがあり、話の方向性はその場で決まります。 旅に出るまで(序章)がすごく長いです。 他サイトでも同作を投稿しています。 更新頻度は1〜3日程度を目標にしています。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる

三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。 こんなはずじゃなかった! 異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。 珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に! やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活! 右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり! アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

処理中です...