異世界転生する事になったけど、必死に努力する自前の精神力しか頼れるものはありませんでした。

SAKI

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異界からの侵略者

オメガという存在

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 「はぁ、だっせえ。自分以外の転生者なり転移者が存在する可能性を失念するとは......我ながら間抜けとしか言い様が無いな」

 そこは国王や皇帝が暮らす城のように広大で豪華な建造物だった。
 煌びやかな装飾、飾り立てられた調度品の数々が配置されており、手入れが行き届いているのが一目で分かる。
 壁に掛けられている魔法の武具は濃密な魔力が込められており、確かな存在感を示しているが、一方でその美しさに目を奪われる者もいるだろう程には、美術品としての価値も高い物が選ばれて飾られている。

 「申し訳ありません主様。二人がかりで傷一つ負わす事も叶わず、助け出す為に御身を危険に晒すような醜態を」
 「ああ?あんな化け物相手に勝てるわきゃねぇだろ。この世界に来て真っ先に警戒するべきだったんだ。七星 海ななほし かいが転移者としてギフトを所持しているように、別の誰かが高位存在に目をかけられて転生したり、勇者召喚で呼び出された存在その物がチートなんて奴もいるだろう事を失念するなんて」

 キングサイズのベッドに気だるげな表情で身を預ける男は、枕代わりにしたラムダの膝に後頭部を乗せたまま言葉を発する。
 腰に達するほどの桃色の髪をベッドに垂らした少女は、小柄ながらも女性特有の柔らかさを備えた肢体を持つ。温もりを感じながら見上げれば、そこにはたわわな二つの果実が実っており、手慰みにムニュムニュとさせながら飽きもせず弄繰り回すカイの耳には、快楽に身を捩らせて悶える声が響いてくる。

 「......んっ、あ、くっ...んあ」
 「それに、お前の役割は確かに戦闘だが、本来の役割は別だろう?
 「ちゅむ、んあ、れる、んん」

 ラムダを嬲る内に興奮したカイの高ぶりを鎮める為に奉仕するシータは、いきり立つソレを愛おしげに見つめながら丹念に愛撫する。
 両脇に侍らせたオメガが媚びるような視線をカイに向けてしなだれかかり、順に口づけを交わす。

 「それに、今は及ばずともじきに届くだろうさ。そういう風にお前を創ったんだからなオメガ。そのうち世界へ散ったお前達も帰ってくるだろうさ。」
 「はい、その時こそ我が主の更なる飛躍が実現する雄飛の時でございます」

 絡み合う肌色、響く嬌声と擦れ合う肉と肉の交わりは延々と続いた。
 時を忘れて貪り合う雄と雌の時間は唐突に破られた。
 部屋の中央に置かれた巨大な水晶、天井を貫いて遥か天まで届くようなサイズのそれが輝きを宿す。

 「ふふ、ふははは。戻ってきたか。転移門が次々と開いていくぞ!」

 ベッドから立ち上がって水晶に歩み寄ったカイは、期待と興奮に染まった表情でその時をまった。
 部屋に次々と出現する転移門から現れたのは、様々な装備を身に纏ったオメガ達だった。
 各々が伝説に名を残すだろう希少な装備を持ち、アイテムボックスから取り出し置かれていく薬品や道具の数々からは溢れるほどの魔力を感じる。

 「「「「「只今戻りました。我が主の手に世界の全てを捧げましょう」」」」」

 そう言い残した彼女達が光の粒へと分解してカイへと吸い込まれていく。
 ドサリと身に纏った装備品が床へと落ち、数百人と転移して現れたオメガは、200mはあろう広大な部屋を財宝の山で埋め尽くしてカイの中へと消えていった。

 「滾る......ふふふははっ、ははは、はぁーっはっはっは。沢山のジョブやスキルが湧き出すようにこの身に宿る。膨大な経験が体中を巡り血肉と成るのが分かるぞ!!お前達が歩んだ道の記憶が流れ込んでくる。奪った命が!破壊した世界の魔素マナが!流れ込んできて俺を高みへと押し上げる。ふふふはは、今ならこの手で神を縊り殺すのだって造作も無いだろう。【神殺し】の称号が何百と重複して【神滅者】へと変貌したぞ?なんだこの現象は、体の中身がすべて置き換わっていくようだ!」

 内包する魔力の総量が何十倍にも膨れ上がり、それでもまだ足りぬと増幅されて上限値を破壊して伸びていく。
 ステータスの表記がバグったように上昇し続けており、桁が増えていく光景を見てカイは歓喜する。
 これこそがカイの手に入れたギフト【眷属創造】【眷属吸収】【成長限界超越】【時空跳躍】【眷属へのスキル付与】の合わせ技だった。

 「これだよ。全てを失う覚悟で神と勝負した対価はよぉ。チートを超越するチートってのはこういうもんだぜ?あの化け物を這いつくばらせて詫びさせた後に奴隷へ落としてやる」

 カイが神に挑んだギャンブルはコイントスだった。
 ギャンブルの世界の神とのイカサマ勝負に競り勝った彼は、ダブルアップを繰り返して連戦連勝を果たし、強引に加護とギフトをぶん盗ったのだった。
 指定されたルールの穴を限界まで利用したズルと、巧みな話術、最後には圧倒的な豪運で勝負を制した。

 「金も力も女も全部手に入れてやる。世界の全てを支配して俺の物にする!果てには次元を超越して真理すらも支配下に置く。足りない、俺の願いを叶えるにはまだまだ足りない。......待っていろケイ。まずは貴様からだ!」

 高らかに吼えるカイは、先刻とは別人のような強大さを感じさせる存在へと変貌していた。
 吹き出す黄金のオーラを身に纏い、青空のようだった髪には輝きが宿り宝石のようだ。
 鋼の様に絞られた肉体は厚みを増し、全身が二回りほど大きくなったカイが腕を振ると、衝撃波で水晶が吹き飛んでしまった。

 「ふむ、加減したのだがな。手間をかけて作った次元転移水晶を吹き飛ばしてしまったか、くくく。まあいいさ、そら」

 破損して形も残っていない水晶へと右手を伸ばし、ギュッっと握る。
 すると、まるで時間を逆再生するように吹き飛んだ水晶が再構成されていき、あっという間に元の姿へと戻る。

 「主の力は神を超えたのですね」
 「流石ですわカイ様」
 「「雄飛の時、しかと見届けました。我が主」」

 4人に称賛されたカイは機嫌良く言葉を発する。

 「全ては計算されたこの時の為よ。【世界の鍵】を手中に収めて砕き割り、世界そのものを飲み込んで己が糧とする。オメガとは俺が究極へ至る為のシステムであり、愛する女の姿を与えた仮初の器よ!見ていてくれ、月夜と朝陽が復活するその時までに、俺は全てを手に入れて与えられる男になってやる」

 掌に輝く二つの宝石、青と赤に輝くそれを大切そうに見つめるカイは、まだ見ぬ未来を夢想して微笑む。
 過去に奪われた己の全てを手に入れる為、男は世界から全てを奪う選択をした。
 運命すら叩き潰し、過去すらも塗り替える力を欲した男の狂気は留まる事を知らない。
 愛した者がその結果を望まぬ事など考えてもいない独りよがりの欲望、その魔手はクォーツへとその手を伸ばし始めるのだった。
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