異世界転生する事になったけど、必死に努力する自前の精神力しか頼れるものはありませんでした。

SAKI

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在ったかもしれない別の可能性

今の俺とは別の俺

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 「よう、俺!」

 パックリと割れた次元の裂け目からイケメンが顔を覗かせた事に驚愕した。
 マジイケメンダワ~。ホントニイケメンダワ~コノイケメンダレダロウ?
 すいません。調子に乗りました。

 「どう見ても俺だよな~アンタ」

 自由の鎖の拠点である屋敷にて事務処理に勤しんでいた俺だったが、突然の訪問者に度肝を抜かれることになった。
 執務用の机で書類に目を通していた俺だが、面倒事が飛び込んできたであろう事を予感してウンザリする。

 「そんな嫌そうな顔をするなよ。ちゃんと土産も持参したんだぜぇ?それに、このまま俺が助太刀しないままだとお前さんは窮地に立たされるだろうしな」

 ヤレヤレといった感じに両手を左右に広げておどけてみせる俺は、話を続けながら右の空間にズボリと手を突っ込むと、見た事のあるおっさんを引きずり出す。

 「綺麗なダンケルク~♪......紹介しよう!別次元で確保したダンケルクを再構成して再更生した末に完成した!愛国心に溢れ、博愛精神に目覚めた騎士の中の騎士!紳士の中の紳士!完全体超公爵パーフェクトダンケルクだ!」

 夢見る少年のようにキラキラした目で取り出されたのは、あのダンケルクだった。
 ビコーンとでも音がしそうな感じにカッ!と開眼すると開口一番に奴は言った。

 「ええ、その節は大変ご迷惑をお掛け致しました。誠に申し訳無く思っている所存でありまして、こちらの私が行いました数々の所業に対しては、大変遺憾であると同時に、何とお詫びすれば良いかと日々うんたらかんたら」

 ......ナニコレ?ペコペコと頭を下げながら、やたらと腰の低い公爵様が両手をモミモミしながらご機嫌伺いをしてくるという謎シチュエーションに発展しているんだが。

 「どうだ!これで以前の悪いイメージを払拭して汚名挽回!じゃなかった......名誉返上だっけ?......まあいいか、アレして大活躍間違い無しだぜ!?」
 「うぉい、諦めんなよ!俺はそんな馬鹿じゃねぇし!?名誉挽回だろ!ってか、悪名鳴り響く天下の大公爵がこんなに腰低くなった上に善良な紳士になったらヤバいだろ。今度は何の企みだって思われるわい!」


 自身タップリといった感じで、フンスと鼻息一閃した俺はこう言い放った。

 「何故か都合良く自体が転ぶように、運命転換・事象変換機能を付けました!」
 「そんな下らない理由で世界に特異点発生させんなぁあああああああ!!」

 頭を抱えて絶叫する俺に対して、奴は更に言葉を続けた。
 自重という言葉を置き去りにしたのか、もう遠慮する気は無いとでもいうのだろうか。

 「安心したまえ。ちゃんと不都合が無いようにリミッター機能も搭載してあるし、優先順位もバッチリ設定してあるからな。お前の関係者にはひどい影響は及ぼさないさ!あと【不老不死】で【超速再生】と【ムスクの芳香】を付与しておいた......ZE☆」
 「もう人じゃねぇよな!?ってか紳士の嗜み?みたいなスキルを勝手に作成して付与すんなぁああ!」
 「ご安心くださいませ。このダンケルクめが、この国をより良く素晴らしい形へと発展するよう鋭意努力すると共に、民草達が幸福を実感出来るように......愛を!理想を!じっくりと語り聞かせてうんたらかんたら」

 ぜ......絶望的な未来しか重い浮かばねぇんだが?
 なんか淡い光に包まれながらキラキラと目を輝かせたダンケルクがにこやかに演説をする姿に頭が痛くなった。
 ゲッソリする俺に向かって、突然に表情を引き締めたもう一人の俺が真剣な声で語りかける。

 「冗談はこの辺にして、近い未来にこの世界に異世界から侵略者が来るぞ。全力で戦わないと、この世界が滅びるかもなって位のランクの奴だ。あの時は俺も苦戦したもんだ」
 「はぁ?何でだよって、語らないって事は自分で調べろってか?」
 「アイテムボックスに本当の土産をぶち込んでおいた、好きに使え。今となっちゃ過去も未来も好き放題できるんだが、どの次元の俺よりも理想に近い道を進んでる俺への手助けって所かな。もっとも、俺に至る道筋は既に閉ざされているんだがな」

 何やら懐かしい物でも見る様な視線を向ける俺だが、悪意は感じない。
 むしろ、本当に俺なのかって思う位に器の大きさを感じさせる。

 「大切な物は一つたりとも諦めるな。邪魔する奴は尽くを討ち滅ぼせ。運命だのなんだのって言い訳して逃げるな。お前はお前として全身全霊でもって戦い抜け。それがどんな存在であってもだ。諦めたり躊躇ったりすれば全てが崩壊すると思えよ?良いな?」

 それだけ言い放つと、もう会話は必要無いとでもいうのか、溶けるように消えてしまった......ダンケルクを残して。

 「え?ちょ!待てよ!コイツどうすんだよ!?持って帰れよ!返品だ!返品を要求するぞぉおおお!」
 「ふふ、返品などとご冗談を。それにステータス欄をご覧ください。そこに刻まれた永遠の忠誠!永劫の絆を!」

 【ステータス】

 ガーランド・ダンケルク (42) LV194194 ジョブ 魔槍紳士 
 
 スキル 【不老不死】EX【超速再生】EX【ムスクの芳香】EX 【武ゲイ百般】EX
 称号  【魔槍の主】 【悪逆無道】 【リリ狩ルマジ狩ル魔槍紳士】 【ケイ様の忠実なる僕】←コレか!?

 HP ∞/∞ MP ■■■■■■/■■■■■■

 魔改造し過ぎだろ!突っ込みどころ満載過ぎて怖いわ!ってか、この世界最強なんじゃねぇの!?押し倒されたら抵抗出来ない気がするんですけど!?

 「私と契約して魔槍紳士になって頂けませんかな?」
 「なるか!」

 この生き物を消滅させる事を諦めた俺は、大人しく関係者各位に当たり障りの無い感じの内容を説明して回る事になった。
 ちなみに予断だが、余計な脂肪をそぎ落とされ、ワセリンを塗ったかのようにギラつくハードマッスルへと進化を遂げたダンケルクは、ポージングをしながらケイの後ろを憑いて回った為、ケイの心にはかなりのストレスが襲い掛かったのは言うまでも無い。
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