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3章

【クエスト】武器のテストを手伝うのにどうして毒沼へ

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 「ユート様、このクエストを受けてくれる人がいませんのにゃ、良かったら依頼に協力してくれませんかにゃ?」

 ミルクのこの言葉から始まったクエストが、まさかこんな事になるとは、あの時は想像もしていなかった。

 【クエスト】武器の性能テストの護衛 依頼者 ティアナ ランク 銀以上 
 報酬 クロス金貨 20枚 属性結晶 火
 クエスト期間 1日 クエスト場所 【毒竜の沼地】
 護衛任務 護衛者2名 

 魔導剣 バーンレイ、バーンレックスの性能試験を行います
 魔導剣操者 ローラン、ジム両名の護衛をお願いします
 性能試験【毒竜の沼地】で行います。火属性装備のテストですので、巻き込まれて火傷を負うことがないように、周囲の状況に注意してください。

 日帰りの予定ですので、あまり深くまで潜る事がない様に注意して護衛してください。
 両名は中々クセのある人物ですので、難儀するかもしれませんが、よしなに。

 俺達は王都城門前で待ち合わせをする事になった。
 「おはようございます!ユートさんですね?今回護衛をお願いしたローランと言います。一日という短い時間ですが、どうかよろしくお願いします」
 「ジムだ。こちらはこちらでやる。邪魔だけはしてくれるなよ?」

 「ユートだ。二人とも腕は良さそうだから邪魔だけはしないように、雑魚を間引いて様子を見させてもらうよ。」
 
 挨拶もそこそこに、沼までの移動に雇った馬車に乗り込み、移動をする。
 「今回は武器の性能テストらしいけど、その剣はそんなに凄い性能なのか?」
 「今、王都でこの魔導剣を作れるのはティアナだけなんですよ?古代文明で使われていた武器が偶然発掘された時に回収されるんですが、復元出来る技術者は貴重なんです!この性能テストで良い結果が得られれば、きっとティアナは王都で認められるはずです」
 
 嬉しそうに語るローランに相槌を打ちながら話を聞くが、ジムが口を挟む。 
 「ティアナ、ティアナとやかましい奴だな。技術だけではないだろう、この古代文明の武器がすごいのだからな」
 
 「ジムさん、彼が誰かを好きになるのは良い事ではないですか?それに、仲間ではないのですか?これからテストとはいえ、毒沼で戦闘を行うのですよ?連携する為にも仲間割れのような事はやめませんか?」
 「貴殿の口上は了解したが、あいにくと小生は武人である。そのよう軟弱者が危険な目に会おうと、小生は感知しない、そんなに守りたければ貴殿が守りたまえ」

 思っていたよりも堅物だな。仲間なのに仲は良くないのだろうか?
 「はぁ~、ユートさんすみません。彼はいつもこんな感じなので気にしないでください」
 なんだかんだと会話をしていたら目的地に到着した。

 「ユートさん、ここからは僕とジムさんが先頭を務めさせて貰います」
 「この剣の性能、存分に試させて貰おう」 
 「それじゃ、とりあえずは後ろからついて行くので、邪魔な対象が居れば言ってください」
 
 魔導剣 バーンレイ、バーンレックスは炎属性の剣らしいのだが、剣自体が波のようなエネルギーを放っている。使用者が力を調節出来るみたいだが、どれ位の力があるのかは見ものだな

 パープルモス、ポイズンセンティピード、アシッドバイパー、アサシンスパイダー等の毒虫が大量に生息する毒沼の外縁部は、テストに最適の場所と言えるだろう。
 敵は大して強くもないし、炎は毒も関係無く燃やしつくし毒素を浄化していく。

 「はぁ!これならどうですか!たぁあああ!!!」
 「ほう、バーンレックスの語るマジカル的な火炎波の流れ、強力でいいじゃないか」
 二人の腕はどちらも文句無いレベルで、次々とモンスターを撃破していく。

 しかし、好調だった性能テストだったが、冒険者が走りこんできた事で事態は急展開する事になる。
 「おい!逃げろ!!ヤバイ奴が出た。冒険者ギルドで話題になってるアイツだ!【串刺し公】ツェペシュが出た!足が遅いから、今逃げれば十分に間に合う。仲間が切り付けちまったからヘイトが向いているんだ!こっちに来るぞ!」

 「ユートさん、これは好機じゃないですか?ここでこの剣の性能を開放して全力で戦えば、ネームドモンスターでも倒せるはずです。そうすればティアナは功績を認められて」
 「こんな時までティアナティアナと女々しい奴め!鬱陶しいんだよ!ティアナがそんなに好きかァ!命がかかっている状況で....下らん。俺一人で十分だ」

 ...引き止めるべきか、しかし二人ともLVだけなら俺よりも圧倒的に上だろう。しかし、不測の事態が発生して怪我をされても困るし、最低でも!【串刺し公】ツェペシュはLV200以上だという情報は俺も聞いた。
 
 「二人とも!ギルドで発表されている情報は知っているのか?」
 「把握している。触手の件もな、変異種のローパーか植物系のモンスターだろうと予想している」
 「炎なら有効でしょう。それに、この剣の性能は、さっき見せたようなレベルの物じゃありません!不足は無いはずです」

 なるほど、それでこの自信なら俺の出番すらないかもしれないな。
 「わかりました。治療薬や脱出用のアイテムはこちらで持っているので、無理だけはしないでください!」

 三人で森の奥へ向かって走り抜けると、地面から生えた触手がプレイヤーを貫き、データの塊へ戻した所だった。
 死ぬとポリゴンを残して消えていくんだな。ふむ、始めて見たが気持ちの良い物ではないな。

 【ローパー】
 空想上の生き物で、大概は円錐状の体で、上部に口が付いているデザインが有名である。
 今回の【串刺し公】ツェペシュもその例に漏れず同様の形状をしていたが、その体長が5メートル近い巨体だったのは、想定外だった。
 
 「ヤバイ感じがしますね。先手必勝が良いと思います。僕が牽制するので、ジムさんが全力開放で一気に決めてください」
 「ふん、まぁ貴様にしてはまともな判断だろう」

 「GYULOLOLOOOOOOOO!!!!!!!!」
 どうやら、あっちもこちらに気づいたようだ、数十とある触手がこちらに向かってくる。
 地面を潜って来る物、直接ヤリのような形状になり伸びて来る物と挙動は様々だが、確実にこちらを殺そうと、明確な殺意を放っている。

 「チャフを使います!!」
 剣から炎を凝縮した炎弾が放たれる。
 おい!チャフって目暗ましじゃないのかよ!魔力の波動が尋常じゃないぞ!ここら一帯吹き飛ぶじゃねぇか!!!
 踵を返すと全力で後退する。案の定、様子を伺いながらも二人とも後退している。

 カッ!!と光が漏れると爆発して周囲6メートル程を焼き尽くさんと炎が火柱を上げた。

 「GYUAAAAAAAAAAAAAAA!!!!!!!!」
 バチバチと何かが焼ける音と叫び声が響く。
 こちらに向かっていた触手を燃やしつくした炎は依然燃え続けて、周囲を蹂躙している。

 地面が破れて、次々と触手が突き出してくる。
 攻撃は読めているので、どんなに早くても回避は容易だ。三人とも気配を読んで右へ左へと飛び退いて攻撃をかわす。

 「さて、攻撃を始める。邪魔してくれるなよ?」
 そうすると、残像を残すような速度で飛び出したジムさんが、無数の斬撃を放つ。
 刃状に変化した1メートル程の炎刃が、伸びて来る触手を燃やし飛ばして、!【串刺し公】ツェペシュに迫る。

 炎でダメージを受けたようで、体中から紫色の粘液をドロドロと流しながら、触手を更に体から生み出すと次々伸ばしてくる。
 ウジュルウジュルと不快な音を出しながらこちらに向かってくる姿は醜悪だったが、5メートルもある巨体が迫ってくる威圧感はかなりのものだった。

 「フハハハハ!その程度の攻撃で...そんな触手なんかでなぁ、勝てるわきゃねえだろぉぉっ!!!そらそらそらそらぁああああ!!!!!」
 伸びて来る触手をバーンレックスで次々と切り裂いては炎刃を、!【串刺し公】ツェペシュに飛ばす姿は戦に狂った悪鬼のようだった。
  
 「おぬしの生体反応のデータを取りつつ、神の世界への引導を 渡してやる!、!【串刺し公】ツェペシュよ!覚悟するのだなぁ!」

 「僕だって負けませんよ!たあ!それ!」
 バーンレイを振るうローランの腕もかなりのもので、生み出された触手をなぎ払い、ローパー本体に無数の裂傷を刻んでいく。

 大木のような体が斬撃に晒されて揺らぐが、これほどまでに攻撃を浴びせられても、、!【串刺し公】ツェペシュの攻撃は止まる事を知らず、ドンドン触手を生み出しては伸ばしてくる。

 「このバーンレックス凄いよォ!!さすがバーンレイのお兄さぁん!!」
 勢いを増して迫る触手を切り裂きながら、更に攻撃の激しさを増すジムさんとバーンレックスのコンビネーションは圧巻だった。
 1メートル程だった炎刃は、輝きを増したバーンレックスに共鳴するかのように、1.5メートル.2メートルと馬鹿でかく強化されて勢いを増していく。

 「バーンレイ!行きますよ!たあああ!!!!」
 バーンレイの輝きが増し、レーザーのような炎が二条三条と生み出されて、、!【串刺し公】ツェペシュを貫く。

 「GYULOOOOOOAAAAAAAAAAA!!GYOOOOO!!!」
 圧倒的な物量の炎に焼かれて、徐々に体積を減らしていく、!【串刺し公】ツェペシュだったが、1時間という戦闘時間を炎に晒されているにもかかわらず、まだまだ弱っている様子を見せずに、傷口を再生させていく。

 「絶好調である!!!!!!!!!!!」
 ジムさんが叫ぶとバーンレックスが一際強い光を放ち、燃え上がって火柱を上げてジムさんを包み込む。炎が弾けると全身に炎を纏い、炎を翼を生やしたジムさんが凄まじい勢いで、!【串刺し公】ツェペシュに突撃していった。

 「GYULOLOLOLOLOLOOOOO!!!!」
 まるで、受けてたとうとでも言うかのように叫ぶと、触手を幾重にも束ねた特大のヤリを作り出し、粘液を纏わせてジムさんへ突き出してきた。

 「威勢のいい事だ! だが、そんなへっぴり腰で小生の相手が務まるかな!?だが、その覚悟は認めよう!いざ尋常に勝負!」
 触手のヤリとジムさんが振るったバーンレックスが激突して爆発する。

 触手は粉々に吹き飛ばされて、体も半分ほど炎に焼かれた【串刺し公】ツェペシュだったが体を再生させる勢いが急激に増し、今までの3倍近い速度でものすごい量の触手を作り始める。
 「しぶとい奴め、まだ生きているか。いい気迫だ!貴様の体力とバーンレックスの業火のどちらが上か、もう一度試してやろうじゃないか!ふははははぁ!いざ勝負!!」

 「ここまでの敵だとは思いませんでした、魔力の消耗が激しいですが、ここらで勝負を決めなければなりませんね。」
 「命のやり取りをする気がないのなら下がっていろ! 小生は腑抜けには用はないわ!」
 
 ローランさんを踏み台にしてジムさんが突撃する。味方が邪魔するとでも思ってるのか?過激な人だな。
 「貴様は実にいい!戦いに我を忘れた貴様こそ、小生の相手に相応しい!我が家、2500年の歴史小生の力を見せ付ける事で貴様に示し!小生に刃向かった自らの愚かさを後悔させてやる!」

 「GYULOOOOOOOO!!!!」
 「まだ勝てるとでも思ってんのか?んなわきゃねぇだろぉおおおお!!!!!!!!」

 数百という触手を燃やし、切り飛ばしてジムさんは斬撃を繰り出し【串刺し公】ツェペシュを真っ二つに切り飛ばした。

 「GYUOOO...OO...O」
 「炎は我が物!それをいただく者は小生以外にあってはならんな!全身を炎に燃やし尽くされて後悔しながら死ぬがよいわ!」

 圧倒的な戦闘能力でジムさんは戦闘に勝利したのだった。
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