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2章

生産開始 凄惨開始 プレイヤー達の触れ合い

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 あるプレイヤーの嘆き

 こちら薬草生産現場です、世界樹の苗が植樹されてから、周囲の土壌がどんどん浄化されていってます。
 大地のマナが溢れて、何処からとも無く精霊達が集まってきてます。
 植えてからまだ半日も経っていないのに、薬草達がニョキニョキと急成長してます。
 スラムから引っ張ってきた子供達だけじゃ足りないから、プレイヤーや町から雇った人まで使って畝を作って、肥料を撒き、薬草の種を植えて一段落....のはずだったのに、これじゃ数時間後には採取を始めなきゃならない。

 調合に回してる人を引っ張ってきて...え?搬入された資材が設置出来てから、調合し続けてるのに、提供された素材が捌けない?...嘘?
 上級錬金術師から上級調薬師まで大量に引っ張って捌けてないの?みんな、士じゃなくて師でしょ?最低でもLV200以上の面々が3桁いるのに終わらないだと!

 「数時間で追加が万本単位でくるよ?」「嘘?ORZ....\(^o^)/オワタ」


 あるプレイヤーの嘆き

 「おい!スラムから患者がドンドン来るぞ!薬はまだか!」
 「子供が先だ!おっさんなんか後回しだ!薬草でもしゃぶらせとけ!」
 「薬剤薄いよ!なにやってんの!」
 「怪我人まで運ばれてきたぞ!ヒーラーもスタンバっとけ!」

 バタバタしていたのがエスカレートして更に混乱が加速していく!
 
 「おい!そこの【転生者】今から私が言う事をよく聞け。この薬剤はお前が作るのだ。そして、お前がマリファスと戦うのだ」
 「さぁ、作れ!解毒ポーションを!」
 「そんな! 無理だよ、見た事も聞いた事もないのに!」
 「そうか、お前など必要ない。帰れ....王都の存亡を賭けた戦いに臆病者は不要だ」
 「おい!アイツを起こしてこい!」
 「しかし、使い物になるのですか!?」
 「死んでいるわけではない、ただ、4日ほど寝てないだけだ」「いや、死ぬって!無理無理」

 「あなただって、ただ経験値を稼ぐ為だけに、ここに来たわけじゃない事は、わかっているんでしょ?あなたは何の為にここまで来たの?あそこまで調薬師に言われて、黙って帰るつもり?」 
 「あなたが作らなければ、あの死に損ないの爺さんが作ることになるのよ!自分が情けないと思わないの!」
 「....やります!僕が作ります!」 「無茶苦茶だってわかってんだろ!?お前は力に極振りの戦士じゃんねえか!!」

 「調薬だけはやらんといてください!」「解毒剤を作れ!」「お前は何もしなくて良いんだって!」
 「うわあぁあああああ!!!」


 あるプレイヤーの輝き

 「おい、めっちゃ生えてる!めっちゃ伸びてる!ドンドン増えてる!」
 「これが世界樹の苗の性能とやらか!」
 「すごい...みんなが熱中するわけだ。」
 「チャンスは最大限に生かす、それが私の主義だ。諸君!鎌を構えたまえ!」
 「ぶはっ....洒落ですか?」
 「認めたくないものだな。自分自身の、若さゆえの過ちというものを」
 

 「よし!採取開始!目標を駆逐する」
 「見せて貰おうか!転生者の採取スキルの性能とやらを!」
 「こいつ、動くぞ!」
 「焦らなければどうという事はない」
 「採取とは、常に二手三手先を読んで行うものだ」
 「すごい...みんなが熱中するわけだ」
 「採取スキルの性能の違いが、戦力の決定的差ではないということを...教えてやる!」
 「僕が一番、採取スキルをうまく使えるんだ!.....【草薙の剣】!」
 「ええぃ!クリスタルの究極スキルは化け物か!」


 「よくやった。これでしばらくは休むことができ」「司令官!対象が成長を始めました!」
 「もうやらないからな!誰が二度と採取なんかやってやるものか!」
 「戦いは非情さ...」
 「戦いが終わったら...彼女とぐっすり眠れるって保証はあるんですか!」
 「君の生まれの不幸を呪うがいい。眠れないのは、貴様が最強の兵だからだ!!...ええい!リア充め!歯を食いしばれ!」
 「二度もぶった。彼女にもぶたれた事ないのに!う...うわぁあああああ!!!や...やってやる!やってやるぞ!僕が一番、採取スキルをうまく使えるんだぁあああ!!!」

 「あ...あの..追加の薬草を取りに来たのですが?」
 「もう取りに来ただと!?冗談ではない!よく見ておくのだな。実戦というのは、ドラマのように格好の良いものではない。追加の薬草が欲しければ、君も採取を手伝うのだ!」
 「何故、彼女を巻き込んだ!彼女は採取をする担当ではなかった!」
 「なら同志になれ!そうすれば彼女も喜ぶ!」


 「追加を取りに行かせた者が戻って来ないから来てみれば!おい!これはどうなっている!」
 「挽回するチャンスはまだある!それに我々指揮官は最前線で士気を鼓舞しなければな」
 「まだだ、たかが鎌を握りすぎて、メインアームが水脹れだらけになっただけだ。」
 「採取スキルよ!私を導いてくれ。見えるぞ!私にも弱点が見える!」
 
 「ヘトヘトになりながらやっていますが、彼らは回復ポーションの存在を忘れていませんか?」
 「坊やだからさ」




 あるプレイヤーの輝き

 ....ここは?知らない、天井だ。
 「おい!目を覚ましたみたいだぞ!」
 「体は大丈夫か?飯は食べられそうか?」
 
 「あなたは....誰?」
 「俺か?俺は...転生者ってやつだけど....分かるか?」
 「ん...聞いた事ある」
 「そっか、ジュースなら飲めるよな?ほら」
 渡されたコップには甘い香りのする水が入っていた....オイシイ

 「慌てなくてもいいぜ?お代わりも、スープもパンもあるんだ」
 この人...暖かい。優しい匂いがする人
 「ん?どうした、安心して気が抜けちまったか?」
 「誰かと話すって心地いいのね。知らなかった」
 ...安心...したら眠く..なっ...た。
 「おいおい!...ああ、寝ちまった。しゃーねー、ベットにご案内...だな」

 「お姫様をそのままお持ちかえりしちゃだめだぞ~?君」
 「心配御無用!幼女は愛でる物!いつも心に『 YES ロリータ NO タッチ 』!!ですからね。」
 「紳士は紳士でも、変態紳士だったか....惚れて損したわ」
 「ん?何か言いました?」

 「一つ言い忘れてたけど、あなたは人に褒められる立派な事をしたのよ。胸を張って良いわ。」


 あるプレイヤーの殺人現場

 「おい!スラムの親玉が始末されたはいいんだが、現場の片付けするのは俺達だぞ?」
 辺り一面血の海だ。臓物が飛び散り、壁は穴だらけ。
 どうやって破壊したのか分からないが、切断された跡に接着された後に、ズレてくっ付いた扉
 真っ黒焦げなのに、今も凍り付いて冷気を放つ壁。

 輪切りになって転がっている柱に、圧搾されたようにグチャグチャになって縮んだ本棚、床に半分沈んだまま固定されている机。
 極めつけは、3階から、地下7階まで吹き抜けのように開いている、巨大な大穴だ。
 何をどうやったらここまで原因の分からん破壊が出来るのか解説して欲しいぜ。

 「これ...おい!このカギが掛かった金庫は何だ?」
 剥がれた板の下から金庫らしき物が見える。
 「見落としか?いや、不要だったから残したのか?」
 「ああ、一回開けてるな...っていうか箱の側面が、引き抜かれたみたいに千切れてる」
 金庫をちぎった?化け物過ぎるだろ。

 「中は....見てらんねえ、自分が行った殺しの感想や、被害者の言動の記録?」
 ....胸糞悪い。あーだめだ、もう我慢できねぇ。
 「全員撤収だ。我慢ならん」「は?」
 「全部吹き飛ばしてやる」
 
 レイン、あれをやるぞ!
 【レーヴァテイン】起動

 「ここにあるのは」(炎の記憶)
 「思い出すのは」(灰燼の故郷)
 「あの時に戻れるなら」(行うは復讐の断罪)
 「見よ!我の前に広がるは」(全てを無に帰す、燎原の舞)
 「(全ては無に還り、塵と化す)」
 「(究極スキル【スルトの炎】)」

 アジトだったものが完全に吹き飛び、燃え盛る炎が上空に立ち上る
 まさに、地獄の釜と表現するのが相応しい光景である
 
 「あ~あ、これどうするんすか?もう、どうにもなんないっすけど」
 「知るか、取るもん取ったあとだろ、薬の残りも保管してあったんだ、消し飛ばして片付けたとでも言っておけ。俺は別の場所で救助に回る」

 「も~う、俺もいくっすよ~....俺がやろうと思ったのによ、まぁいいか」


 

 一月経つ頃には、最初の頃ほどは忙しくなくなったが、今度は生産やスラムの再建で別の場所が忙しくなり始めた。
 王国からも資金援助が出ているとはいえ、ある程度は自分達で行い、愛着を持たなければ、住民達が本当に大切にする、自分達の居場所にならないだろう。

 マルファスの効果で苦しんでいる人もすっかり居なくなり、住民達にも元気が戻り始めた。
 それでも、弱った身体が元に戻るまでには時間が掛かるだろう。
 しかし、これまでとは違い、住む所も、食事もあるのだ。頑張って働けば給料だって出る。

 マルファスによって壊された人生を癒すには、1年2年では無理だろうが、希望が見えた人生を生きる、新たな楽しみが生まれたはずだ。
 プレイヤーの協力もあって、事は順調に進んでいるが、少なく見積もっても1ヶ月は時間が必要だろう。

 グロウとプランの兄弟も孤児院に引き取られて、同世代の仲間達と笑顔で暮らしている。
 また、折を見て遊びに行こうと、エリーと話している。

 そんな中、沢山の部署でトラブルや出会いなんかが会ったようで、パーティーを組んでいるプレイヤーや、クランの結成準備に人員募集が始まっているらしい。
 それ以外にも、カップルが生まれたり。行き場の無い子供のNPCを引き取ったプレイヤーまでいるという、嬉しいニュースまで聞こえてきた。

 小さな事から始まって、なんだかとても大掛かりな事態に発展してしまった。
 でも、今回の件に関しては後悔してないし、満足している。

 「マスター、麗覇さんはもう王都を出たそうですよ?」
 「一箇所にじっとしている性質じゃないからな、私は弱者は救うが、群れるのは強者とだけで十分だとか言ってそうだ」

 そろそろ落ち着いてきたし、今度こそ俺も、生産の練習を始めたいからな。
 調薬師が多数参加してるって話しだし、錬金術師も居るそうじゃないか?これは勉強するのにはとても豪華な環境だと言えるだろう。

 ん?エリー、樽を指差して。
 「たる」

 ああ、樽だね...エリー繋がりですね?分かります。
 円筒形の容器であり、ヨーロッパで伝統的な樽は木の板とそれを縛る鉄の輪などの箍(たが)で作られており、胴の側面は中央部が膨らんだ円筒形である。
 この洋樽を生産する。作成したポーションを大量に貯蔵するには、これを使うしかないだろう。
 そもそも、ポーションは劣化や変化を起こしやすいので、普通は専用の容器に密閉する。

 これを、樽で保管可能にするには、樽自体に新たな加工を加えて、気密を保てるようにしなければならない。
 保管環境の調整もしなければいけない、生産職の腕の見せ所だろう。

 「さぁ、作れ!樽ポーションを!」
 「そんな! 無理だよ、見た事も聞いた事もないのに!」
 「そうか、お前など必要ない。帰れ....新たなスラムの存亡を賭けた戦いに臆病者は不要だ」
 「おい!アイツを起こしてこい!」
 「しかし、使い物になるのですか!?」
 「死んでいるわけではない、ただ、5日ほど寝てないだけだ」「いや、死ぬって増えてるし」
 「....やります!僕が作ります!」 「だーかーら!無理だって!?薬草握り潰して絞るの止めろ!!」
 「すごい・・・みんなが熱中するわけだ...」「お前はどっから生えてきた!」

 ううむ、みんな楽しそうでいいなぁ.....俺も仲間に入れて欲しい
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