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お嬢さまの彼氏役

4話

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「食べたね~。もうお腹いっぱいよ~」
「俺もだ。逆にこれ食べてお腹いっぱいにならない人は凄い」

 カップル限定ということもあって結構な量あるパフェを二人で平らげ、背もたれにもたれながらそう口にした。
 確かに美味しかったけど、流石に大きすぎた。
 
「それじゃあ、そろそろ帰りましょうか。店内も混んできてることだし」
「そうだな」

 周りを見渡すと席はいっぱいになっていた。
 俺が立ち上がると続いて愛菜も立ち上がり、俺とならんで会計へと向かう。

「ありがとうございます。お会計合計で三千円になります」

 パフェ一つで三千円は高いと思うかもしれないが、あの量のパフェであの美味しさなら安いと思ってしまう。
 俺は財布から三千円を取り出し、カルトンに乗せた。

「遥翔、私が払うから良いわよ」

 そう言って愛奈も財布を出そうとするが、一度出してしまったんだから戻すのもどうかと思い、愛奈の手を止めた。

「良いって。俺だって食べたんだし」
「食べたって言っても半分でしょ? ならせめて私にも半分は出させてよ」
「じゃあまた今度ジュースでも奢ってくれ。すいません、これでお願いします」

 俺がそう言うと店員さんはレジを打ち会計を済ませた。
 
「やっぱり悪いよ。私、お金の事はきっちりしたいの」

 愛奈はカフェから出ると直ぐにそう言って千円札と五百円玉を俺に差し出してきた。
 
「それに、私の恋人のふりをしてほしいって我儘も聞いてもらっちゃったし……なんなら私が全額出すわよ」
「いや、いいって。」

 俺は無理やりお金を押し付けてくる愛奈の腕を掴んだ。

「さっきも言ったけど、また今度ジュースでも奢ってくれ」
「ジュースはそんな値段しないわよ……するのもあるけど」

 後半はもうほとんど聞こえなかった。
 
「あー、もう! お前はありがとうの一言も言えないのかよ。こういう時はありがとうって一言いえば終わりなんだよ」
「………………ありがとう」
「ああ、それでいいんだよ。じゃあ帰るか。家まで送る」

 多分、愛奈の両親が愛奈を徒歩で登下校させない理由は愛奈のこの容貌にある。
 愛奈とすれ違う人のほとんどが愛奈を一度は見てしまう。それくらい可愛い愛奈を一人で歩かせるのは危険と判断したのだろう。
 
「別にいいわよ。私一人でも帰れるし。そこまでしてもらわなくても」
「いや、家まで送る。愛奈一人で歩かせるのは危険だし。何時誰が愛奈を襲うか分からないからな」
「……ありがとう」





「で……でか…………」

 カフェから結構歩いた場所にある大豪邸。そこで俺は直立不動状態になった。
 目の前にある鉄の門扉は俺の身長の二倍もある。
 白を基調とした綺麗な外装。周りには緑が沢山あり、綺麗な花も植えられている。
 門扉から家まで繋ぐ道の中心には噴水もあり、俺とは住んでいる世界が違うと改めて思わされる。
 
「ありがとう。送ってもらっちゃって。ちょっと待ってて」
「あ、ああ」

 愛奈はそう言ってどこかに電話を掛けた。
 それからすぐに鉄の門扉が開き、中からメイド服を着た綺麗な女の人が出てきた。

「おかえりなさいませ、お嬢様」

 そう言って頭を下げた。

「ごめんね、玲奈。今日急に送迎要らないなんて言っちゃって」
「いえ、なんてことないですよ。あの、お嬢様、こちらの方は?」

 愛奈の専属メイドである玲奈さんは俺の方を向いて愛奈にそう聞いた。

「同じクラスの遥翔よ。ここまで送ってくれたの。で、お願いがあるのだけれどいいかしら」
「はい、勿論。お嬢様の頼みでしたら」
「ありがとう、玲奈。遥翔を家まで送ってあげてほしいのだけれど」
「かしこまりました」
「今日はありがとう、遥翔。また明日ね」

 愛奈はそう言って右手を振ってきた。
 
「ああ、また明日な」

 そう言って俺は玲奈さんが持ってきた黒塗りの高級車の後部座席に座った。
 そして車は出発した。
 ここから俺の家まで歩いていけば結構な時間かかってしまうため、送迎してもらえるのは嬉しい。
 多分愛奈はまだ俺がパフェの代金を全て支払った事を気にしていたんだろう。それで俺を家まで送迎するように言ってくれたのだろう。

「遥翔様はお嬢様とはどのような関係なのでしょうか」
「単なる席が隣のクラスメイトですよ。それより、俺からも一つ聞いていいですか?」
「はい。なんなく聞いてください」
「玲奈さん。今日俺たちの後付けてましたよね?」
「ひ、人違いじゃないですか?」

 明らかに玲奈さんは動揺している。
 俺が玲奈さんに気付いたのはカフェに入ってからだ。
 
「別に玲奈さんが俺たちの後を付けていたからといって何か言うわけじゃないですよ。ただ気になったので。それに愛奈の身に何かあったらいけないと思っただけですよね? 愛奈は気づいていなかったようですけど」
「お、お嬢様には内緒でお願いしますね」
「勿論ですよ。家まで送ってもらっちゃってることですし」
「でも、どうして分かったんですか?」
「カフェで鏡をずっと立てておくのは流石に不自然ですよ」
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