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お嬢さまの彼氏役
2話
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カフェ店内にはこの時間帯だからか、あまり客はいなかった。
俺たちは店員さんに席へと案内され、向かい合うように腰を下ろした。
学校から徒歩十分、茶色を基調としたお洒落なカフェで、やはり俺一人で来るのにはハードルが高いな。
なんか少し緊張する。
「ご注文お決まりでしたらお呼び下さい」
「あ、えーっと、これ一つお願いします」
席に着くと直ぐに店員さんが注文を取りに来た。お洒落なカフェなだけあって、店員さんも凄くお洒落で可愛らしい。
愛奈はメニュー表を指さしてパフェを注文した。
メニュー表に載っているパフェの上には、デカデカとカップル限定メニューと記されていた。
どうやら愛奈の言っていた通り本当にカップル限定らしい。
なんで限定なんかにするのだろうか……誰でも食べれるように限定になんてしなければいいのに。
「ん? こっちじゃダメだったのか?」
俺はメニュー表に載っているカップル限定のパフェとは別のパフェを指さして愛奈に聞いた。
大きさはカップル限定パフェと比べれば小さいが、美味しそうだ。
それにこっちのパフェにすれば俺と来なくても一人で注文ができる。
「こっちのパフェはもう食べたことあるもの」
「そうか」
「あの、他にご注文はございませんか?」
「私はパフェだけ良いのだけれど、あなたは他に何か注文する?」
「いや、俺もパフェだけで良い」
この大きさのパフェを食べて、更に他にも料理を食べるのは俺には不可能だ。
無理をすれば食べれないことはないが、夕飯が食べれなくなってしまうのでそんなことはしない。
「かしこまりました、ではカップルであるための証明として恋人繋ぎをしていただけますか?」
「「…………は?」」
俺と愛奈は店員さんの言葉を聞いて口を開いた。
そんなの聞いていない。
愛奈も俺と同じ反応をしたという事は、この事を知らなかったのだろう。
メニュー表にもそんなことは書いていない。
「一応カップル限定パフェでございますので、ご協力お願いします」
予想外の事態にどうしたら良いのか俺には分からない。
やっぱり今からでも実はカップルじゃないって言った方が良いか?
愛奈は顔を赤くして俯いているし。
でもせっかく来たんだからって気持ちも少しある。
どうする……こういうのは男である俺から繋ぎに言った方が良いのか?
でも無理やり繋いだりなんてしたら何か言われるかもしれない。しかもただの手繋ぎじゃない。恋人繋ぎだ。
そう迷っていると、愛奈は右手を俺に差し出してきた。
「え?」
「な、なによ。私たち恋人なんだからこれくらいの事はできるでしょ?」
そんな顔を赤らめて言われたらこっちまで恥ずかしくなってくる。
「あ、ああ……」
俺は愛奈の小さな右手を優しく握った。
真っ白で綺麗な肌、握ったら折れてしまうのではないかと思わせるほどの小さな指。
「ありがとうございます! では直ぐにご用意させていただきますので少々お待ちください」
そう言って店員さんは軽く頭を下げた。そして――
「彼女さん、可愛いですね」
店員さんは愛奈には聞こえないように俺の耳元でそう言った。
「ッ! ……は、はい」
そして厨房へと向かって行った。
そうだよな。店員さんは俺と愛奈の事を本当の恋人同士だと思っているんだよな。
俺は愛奈の顔を見つめる。
「な、なによ」
「いや、なんでもない」
改めて見てもそこらのアイドルなんかよりも全然可愛い。
俺はそんな愛奈のフリとはいえ彼氏なんだよな。まぁ、今だけだけど。
「気になるじゃない」
「ただぼーっとしていただけだ」
「……まぁ、そう言うことにしておいてあげるわ。あなたには借りもあるし」
「借り? 俺何かしたか?」
俺は今まで愛奈に貸しを作るようなことをした覚えは無い。
「何言ってるの? たった今この状況がそうじゃない」
「カフェに来ていることか?」
「そうよ。私の彼氏のフリをしてくれていることよ」
「そんなことか」
でも俺からしたらさっき愛奈の手を握った時点でこんな貸しなんて無くなったも同然なんだけどな。
「そんなことって。フリとはいえ、私の彼氏になるの嫌じゃないの?」
「嫌なわけないだろ」
何を言っているんだこいつは。
こんな可愛い女の子の彼氏になるのが嫌な男子が居るわけがない。フリだけど……
そのうえ、放課後デートのような事までできるなんてな。
「そ、そう……なら良いのだけれど」
「ん? どうかしたのか?」
愛奈の顔は何故か少しだけ赤い。
「な、なんでもない!」
「いや、でも顔赤いし」
「あ、赤くないから!」
そう言って愛奈は下を向いてしまった。
俺たちは店員さんに席へと案内され、向かい合うように腰を下ろした。
学校から徒歩十分、茶色を基調としたお洒落なカフェで、やはり俺一人で来るのにはハードルが高いな。
なんか少し緊張する。
「ご注文お決まりでしたらお呼び下さい」
「あ、えーっと、これ一つお願いします」
席に着くと直ぐに店員さんが注文を取りに来た。お洒落なカフェなだけあって、店員さんも凄くお洒落で可愛らしい。
愛奈はメニュー表を指さしてパフェを注文した。
メニュー表に載っているパフェの上には、デカデカとカップル限定メニューと記されていた。
どうやら愛奈の言っていた通り本当にカップル限定らしい。
なんで限定なんかにするのだろうか……誰でも食べれるように限定になんてしなければいいのに。
「ん? こっちじゃダメだったのか?」
俺はメニュー表に載っているカップル限定のパフェとは別のパフェを指さして愛奈に聞いた。
大きさはカップル限定パフェと比べれば小さいが、美味しそうだ。
それにこっちのパフェにすれば俺と来なくても一人で注文ができる。
「こっちのパフェはもう食べたことあるもの」
「そうか」
「あの、他にご注文はございませんか?」
「私はパフェだけ良いのだけれど、あなたは他に何か注文する?」
「いや、俺もパフェだけで良い」
この大きさのパフェを食べて、更に他にも料理を食べるのは俺には不可能だ。
無理をすれば食べれないことはないが、夕飯が食べれなくなってしまうのでそんなことはしない。
「かしこまりました、ではカップルであるための証明として恋人繋ぎをしていただけますか?」
「「…………は?」」
俺と愛奈は店員さんの言葉を聞いて口を開いた。
そんなの聞いていない。
愛奈も俺と同じ反応をしたという事は、この事を知らなかったのだろう。
メニュー表にもそんなことは書いていない。
「一応カップル限定パフェでございますので、ご協力お願いします」
予想外の事態にどうしたら良いのか俺には分からない。
やっぱり今からでも実はカップルじゃないって言った方が良いか?
愛奈は顔を赤くして俯いているし。
でもせっかく来たんだからって気持ちも少しある。
どうする……こういうのは男である俺から繋ぎに言った方が良いのか?
でも無理やり繋いだりなんてしたら何か言われるかもしれない。しかもただの手繋ぎじゃない。恋人繋ぎだ。
そう迷っていると、愛奈は右手を俺に差し出してきた。
「え?」
「な、なによ。私たち恋人なんだからこれくらいの事はできるでしょ?」
そんな顔を赤らめて言われたらこっちまで恥ずかしくなってくる。
「あ、ああ……」
俺は愛奈の小さな右手を優しく握った。
真っ白で綺麗な肌、握ったら折れてしまうのではないかと思わせるほどの小さな指。
「ありがとうございます! では直ぐにご用意させていただきますので少々お待ちください」
そう言って店員さんは軽く頭を下げた。そして――
「彼女さん、可愛いですね」
店員さんは愛奈には聞こえないように俺の耳元でそう言った。
「ッ! ……は、はい」
そして厨房へと向かって行った。
そうだよな。店員さんは俺と愛奈の事を本当の恋人同士だと思っているんだよな。
俺は愛奈の顔を見つめる。
「な、なによ」
「いや、なんでもない」
改めて見てもそこらのアイドルなんかよりも全然可愛い。
俺はそんな愛奈のフリとはいえ彼氏なんだよな。まぁ、今だけだけど。
「気になるじゃない」
「ただぼーっとしていただけだ」
「……まぁ、そう言うことにしておいてあげるわ。あなたには借りもあるし」
「借り? 俺何かしたか?」
俺は今まで愛奈に貸しを作るようなことをした覚えは無い。
「何言ってるの? たった今この状況がそうじゃない」
「カフェに来ていることか?」
「そうよ。私の彼氏のフリをしてくれていることよ」
「そんなことか」
でも俺からしたらさっき愛奈の手を握った時点でこんな貸しなんて無くなったも同然なんだけどな。
「そんなことって。フリとはいえ、私の彼氏になるの嫌じゃないの?」
「嫌なわけないだろ」
何を言っているんだこいつは。
こんな可愛い女の子の彼氏になるのが嫌な男子が居るわけがない。フリだけど……
そのうえ、放課後デートのような事までできるなんてな。
「そ、そう……なら良いのだけれど」
「ん? どうかしたのか?」
愛奈の顔は何故か少しだけ赤い。
「な、なんでもない!」
「いや、でも顔赤いし」
「あ、赤くないから!」
そう言って愛奈は下を向いてしまった。
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