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お互いの我儘
32話
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夕飯を食べ終え、皿洗いを終えた俺はリビングのソファーに腰を下ろす。
小春は今、俺の部屋の隣で父親とビデオ通話をしている。
「ん?」
俺の隣に置いてあるスマホに一件の通知が来た。
「篠原からだ」
スマホを手に取り、誰からの連絡なのか確認する。
篠原から連絡をしてくることは珍しい。
『なぁ、今度の日曜日遊ばね?』
「遊ぶのは良いけど何処でだ?」
肝心の遊ぶ場所が書いていない。万が一俺の家に遊びに来ることになってしまったら、小春と同棲していることがバレてしまう。
『どこでも良いぞ。一之瀬さんと奈那子ちゃんも誘ってショッピングモールに買い物に行っても良いし、俺の家で俺とお前の二人でゲームとかするのでも良いし』
「じゃあ小春に聞いてみるわ」
『おう、じゃあ分かったら言ってくれ。奈那子ちゃんは土日は空いてるって言ってたから大丈夫だと思うけど』
「ああ、分かったら知らせる」
俺はそう返信を終え、時計を見る。
「そろそろ良いかな」
小春が部屋に向って既に三十分以上が経っていた。
小春からは、三十分くらいで終わると思うよ。と言われていたので、そろそろ通話を終えている頃だろう。
俺は一応まだ通話が終わっていない事を想定して、ドアを軽くノックする。
「ゆ、悠斗くん?」
ドア越しにはいつもの元気な小春の声とは真逆に、凄く弱々しい声で返事が返って来た。
「ちょ、ちょっとだけ待ってね」
「う、うん。分かった」
小春の弱々しい声に、俺は動揺を隠せない。
何かあったのか?
「も、もういいよ」
「分かった、入るよ?」
俺はゆっくりとドアを開けた。
そこには椅子に座りながら下を向いている小春の姿があった。
机の上にはさっきまでしていた通話に使用したスマホ、そして箱ティッシュが置いてある。
「ゆ、悠斗くん。どうかしたの?」
小春は相変わらず下を向いたまま話す。
「今度の土曜日なんだけどさ、篠原が奈那子先輩と小春も誘ってショッピングモールに行かないかって誘われたんだけど、行く?」
「う、うん。行きたいな」
いつもなら楽しそうな弾んだ声で返事をするのに……
「小春? 行きたくないなら断っても良いんだよ?」
「え? 行きたくないわけじゃ、ないよ?」
俺の言葉は想定外だったのか、ようやく小春は俺の顔を見てくれた。
小春の顔はいつも通り可愛い。だけど、目が赤い。
泣いていた?
「小春? 大丈夫? 何かあったの?」
俺は小春に近づく。
もしかしたら、久しぶりに父親とお話しができた嬉しさで泣いてしまったのかもしれない。
「な、何も無いよ? 大丈夫だよ?」
そう言って小春は再び下を向いた。
明らかにおかしかった。
俺に泣いた事を知られたくなかったのか?
「お父さんとは話せた?」
小春はゆっくりと頷く。
「久しぶりに話せて楽しかったよ。お父さんね、悠斗くんにありがとうって言ってたよ」
「そっか」
俺は小春の顔を見るために小春の目の前でしゃがんだ。
「嬉しくて泣いちゃったの?」
小春は首を縦にも横にも振らない。ただ黙る。
「言いたくなければいいんだけど。小春、元気なかったから心配になっちゃって」
俺が言い終わっても小春は口を開かない。
変な事言ってしまったのではないかと、今まで俺が小春に言ったことを思い返す。
「お父さんと話せたのは嬉しかったけど、それで泣いちゃったわけじゃないの」
俺が思い返していると、小春が口を開いた。
「じゃあ、どうして?」
「…………昔の事を思い出しちゃったの」
昔の事。小春の言う昔の事は間違いなく家に一人だったころの事だろう。
俺は小春を優しく抱きしめた。
すると小春も俺の胸に頭をくっ付ける。
「悠斗くんは、何処にもいかないよね……」
「行かないよ。ずっと小春の近くに居るから」
「悠斗くんは、私を裏切らない……?」
「こんな可愛い彼女を裏切るわけないだろ?」
「悠斗くんは、悠斗くんは…………」
小春は震える声で話す。
「大丈夫だって。小春が悲しむようなことはしないから」
「悠斗くん」
小春は顔を上げて俺の顔を見る。
目に沢山の涙を溜めて。
「私、悠斗くんを幸せにするから。悠斗くんも、私を幸せにしてくれる……?」
「何当たり前の事言ってんだよ。幸せにしてあげるに決まってるだろ?」
俺は小春の頭を優しく撫でると、我慢ができなくなったのか、小春はぼろぼろと泣き出した。
「いっぱい泣いていいよ。涙と一緒にイヤな事も流しな」
俺は小春が泣き終わるまで頭を何度も優しく撫で続けた。
小春は今、俺の部屋の隣で父親とビデオ通話をしている。
「ん?」
俺の隣に置いてあるスマホに一件の通知が来た。
「篠原からだ」
スマホを手に取り、誰からの連絡なのか確認する。
篠原から連絡をしてくることは珍しい。
『なぁ、今度の日曜日遊ばね?』
「遊ぶのは良いけど何処でだ?」
肝心の遊ぶ場所が書いていない。万が一俺の家に遊びに来ることになってしまったら、小春と同棲していることがバレてしまう。
『どこでも良いぞ。一之瀬さんと奈那子ちゃんも誘ってショッピングモールに買い物に行っても良いし、俺の家で俺とお前の二人でゲームとかするのでも良いし』
「じゃあ小春に聞いてみるわ」
『おう、じゃあ分かったら言ってくれ。奈那子ちゃんは土日は空いてるって言ってたから大丈夫だと思うけど』
「ああ、分かったら知らせる」
俺はそう返信を終え、時計を見る。
「そろそろ良いかな」
小春が部屋に向って既に三十分以上が経っていた。
小春からは、三十分くらいで終わると思うよ。と言われていたので、そろそろ通話を終えている頃だろう。
俺は一応まだ通話が終わっていない事を想定して、ドアを軽くノックする。
「ゆ、悠斗くん?」
ドア越しにはいつもの元気な小春の声とは真逆に、凄く弱々しい声で返事が返って来た。
「ちょ、ちょっとだけ待ってね」
「う、うん。分かった」
小春の弱々しい声に、俺は動揺を隠せない。
何かあったのか?
「も、もういいよ」
「分かった、入るよ?」
俺はゆっくりとドアを開けた。
そこには椅子に座りながら下を向いている小春の姿があった。
机の上にはさっきまでしていた通話に使用したスマホ、そして箱ティッシュが置いてある。
「ゆ、悠斗くん。どうかしたの?」
小春は相変わらず下を向いたまま話す。
「今度の土曜日なんだけどさ、篠原が奈那子先輩と小春も誘ってショッピングモールに行かないかって誘われたんだけど、行く?」
「う、うん。行きたいな」
いつもなら楽しそうな弾んだ声で返事をするのに……
「小春? 行きたくないなら断っても良いんだよ?」
「え? 行きたくないわけじゃ、ないよ?」
俺の言葉は想定外だったのか、ようやく小春は俺の顔を見てくれた。
小春の顔はいつも通り可愛い。だけど、目が赤い。
泣いていた?
「小春? 大丈夫? 何かあったの?」
俺は小春に近づく。
もしかしたら、久しぶりに父親とお話しができた嬉しさで泣いてしまったのかもしれない。
「な、何も無いよ? 大丈夫だよ?」
そう言って小春は再び下を向いた。
明らかにおかしかった。
俺に泣いた事を知られたくなかったのか?
「お父さんとは話せた?」
小春はゆっくりと頷く。
「久しぶりに話せて楽しかったよ。お父さんね、悠斗くんにありがとうって言ってたよ」
「そっか」
俺は小春の顔を見るために小春の目の前でしゃがんだ。
「嬉しくて泣いちゃったの?」
小春は首を縦にも横にも振らない。ただ黙る。
「言いたくなければいいんだけど。小春、元気なかったから心配になっちゃって」
俺が言い終わっても小春は口を開かない。
変な事言ってしまったのではないかと、今まで俺が小春に言ったことを思い返す。
「お父さんと話せたのは嬉しかったけど、それで泣いちゃったわけじゃないの」
俺が思い返していると、小春が口を開いた。
「じゃあ、どうして?」
「…………昔の事を思い出しちゃったの」
昔の事。小春の言う昔の事は間違いなく家に一人だったころの事だろう。
俺は小春を優しく抱きしめた。
すると小春も俺の胸に頭をくっ付ける。
「悠斗くんは、何処にもいかないよね……」
「行かないよ。ずっと小春の近くに居るから」
「悠斗くんは、私を裏切らない……?」
「こんな可愛い彼女を裏切るわけないだろ?」
「悠斗くんは、悠斗くんは…………」
小春は震える声で話す。
「大丈夫だって。小春が悲しむようなことはしないから」
「悠斗くん」
小春は顔を上げて俺の顔を見る。
目に沢山の涙を溜めて。
「私、悠斗くんを幸せにするから。悠斗くんも、私を幸せにしてくれる……?」
「何当たり前の事言ってんだよ。幸せにしてあげるに決まってるだろ?」
俺は小春の頭を優しく撫でると、我慢ができなくなったのか、小春はぼろぼろと泣き出した。
「いっぱい泣いていいよ。涙と一緒にイヤな事も流しな」
俺は小春が泣き終わるまで頭を何度も優しく撫で続けた。
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